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043_美濃併呑と伊勢侵攻

 


 羽津城(四日市市)は滝川様が治めている茂福城からは半里ほどしか離れていない場所にある城だ。

 その羽津城の城主である赤堀右京亮近宗という人物がいる。

 この赤堀右京亮近宗に偽の手紙を送って城から出てきたところを、滝川様の手勢が囲み討ち取ると同時に俺が羽津城を攻めた。

 城の中にはそれほど兵はいないようで、抵抗は激しくない。

 城門を破城槌で破って城内に雪崩込む。

「突撃!」


 今回の策は半兵衛の発案で、滝川様の顔を立てる形になっている。

 羽津城は俺が落として、赤堀右京亮近宗は滝川様が討ち取る。

 思惑通りにことは進んで、俺は二百人の強襲夜襲部隊を率いて羽津城になだれ込んだ。

 この強襲夜襲部隊は清次が育てた精鋭で、今は俺の直営部隊だ。

 本当は利益に部隊を率いさせたかったけど、利益は一匹狼のような奴なので部下を率いて戦うのは向かないと半兵衛に言われて俺の直営部隊にした。

 しかし、清次はいい部隊を作り上げてくれた。

 清次は統率力や兵の鍛錬に才能がある。だからこそ、俺の代わりに領地を任せることができる。


「降伏しろ! さすれば生かしてやる!」

 口々にそう叫びながら向かってくる敵は切り捨てる。

「利益、抵抗する奴は切り捨てろ!」

「おう!」

 羽津城の中で縦横無尽に槍を振る利益が楽しそうだ。

 鼻歌でも歌って踊っているかのように見える。


 ほどなくして羽津城は俺たちが制圧した。

 滝川様の方も上手くいき、赤堀右京亮近宗を討ち取ったようだ。

「殿、今日の酒は美味いと思うぞ」

 利益は俺に酒を振舞えと言っているのだ。

「お前が俺に酒を御馳走してくれるのか?」

 意地悪を言ってみた。

「何を言っているのだ。殿が酒を振舞うのだ」

 完全に開き直って、たかってきた。

「分かった。分かった」

 利益とらちもないことを話しながら、滝川様を待つ。


 しばらくすると、滝川様が現れた。

「滝川様、ご苦労様です」

「佐倉殿、その様というのは止めていただきたい。ご貴殿の方が立場は上なのですぞ」

 現在の序列は俺、滝川様、信辰の順だ。

 俺が殿の筆頭家老になっている。

 美濃四人衆の内応を取りつけたのが信長様的に非常に評価が高かったようで、そうなってしまった。

 信長様は槍働きだけではなく、そういった地味な働きをしっかりと評価する。

 そういった意味では、信長様は公明正大なのだ。


「分かりました。では、滝川殿と呼ばせていただきます」

 滝川殿は頷いた。

 俺は滝川殿が討ち取った赤堀右京亮近宗の首を確認する。

 生首は何度見ても気分のいいものではない。

 俺は赤堀右京亮近宗の顔を知らないので、降伏した羽津城の兵士に生首を見せて赤堀右京亮近宗だと確認がとれた。


「滝川殿、殿のご裁可が下るまで、この羽津城をお願いします」

「承知しました」

 夜明けを待って俺は自分の兵を率いて桑名に帰る。

 利益が松風に乗って先頭を進む。

 俺も風丸に乗っているが、利益の方が立派な体をしているので、とても目立っている。

 まぁ、利益のいで立ちはめちゃくちゃ派手なので、余計に目立つんだけど。

 松風の馬具も黒い毛に映える赤色だし、利益自身も赤色や金色をふんだんに使った具足を身につけている。

 俺の方が家臣に見えるんじゃね?


「半兵衛、次は浜田城だな」

「いえ、浜田城は後回しにしようと思っております」

 俺は意外だと思い、半兵衛を見た。

「先に釆女城(うねめじょう)を落とそうかと考えております」

 立地的に羽津城の先には浜田城がある。それなのに、さらに先にある采女城を攻めると半兵衛は言う。


「浜田城を治めています田原元綱はなかなかに頭が切れる人物のようです」

「半兵衛にも策はないか?」

「申し訳ございまやせん」

「いや、いい。采女城と楠城を手に入れてから、囲んでしまえばいいのだ」

「はい、そう考えております」

 半兵衛にも無理なことはあるようだ。

 まぁ、俺が思っていた順番と違うだけで、結果として変わらないのであれば構わない。


「采女城はどうやって攻略するんだ?」

「内応者を作り、攻めた時に城門を解放させます」

 ここまで言うってことは、すでに内応者がいるってことだよな?

「時期は?」

「今年中には」

 つまり、永禄十年中に采女城は手に入れられるわけだ。

 さすがは半兵衛だ。今孔明の評判に嘘はないぜ!


 桑名城に帰ると、俺は殿に羽津城攻めの報告をした。

「ご苦労であった」

 最近、殿が少し落ち着いてきたように見える。

 桑名を任せられて自覚が出てきたのかな?

「ありがとうございます」

「勘次郎、羽津城には誰を入れるのがいいか?」

「滝川殿に与えられませ。滝川殿であれば上手くやってくださりましょう」

「分かった。そのように取り計ろう」

 ちょっとだけ貫禄も出てきたかな?

 今年で二十二歳だけど、経験を積んで落ち着きも出てきて、いい傾向にある。


 殿への報告が終わった俺は、自室に戻ってスマホを取り出した。

 いの一番に見たのはミッション『羽津城攻略!』のクリア報酬だ。


【ランクB】

 ・鉄甲船の設計図


【ランクD】

 ・火薬(1箱)×10

 ・鉛玉(100発)×10


 鉄甲船の設計図かよ!?

 これは今は無理だ。伊勢も抑えていないのに、鉄甲船なんて造れねぇよ。

 それに検索では鉄甲船が登場するのは天正四年(1576)以降だ。

 まだ十年近く先の話だから、保留!

 それに鉄甲船を造る必要があったら、ミッションがあるんじゃないかな?

 それまで保留で大丈夫だろう?



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