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033_服部党

 


 夜陰に紛れて蠢く影がある。

 それは規則正しく秩序的に闇の中を進む。

「見事なものだ」

「毎日、夜に訓練をしましたので、このくらいは当然でしょう」

「いや、清次の訓練のたまものだ。もっと誇っていいぞ」

「ありがとうございます」

 今、俺の前では二百人からなる強襲夜襲部隊が夜陰に紛れての戦闘訓練をしている。

 目が慣れても暗闇の中での戦闘は大変なのに、彼らは一糸乱れぬ動きを見せている。


 強襲夜襲部隊の責任者は清次で、補佐に伊右衛門がついている。

 最近は伊右衛門もかなり逞しくなっている。毎日、雲慶や利益に鍛えられていたからね。


 ちょっとだけ今年の信長様の話をしておこうか。

 まず、昨年犬山を手に入れた信長様は、木曽川を渡って美濃に入ったところにある伊木山(各務原市)に砦を築いている。

 ここの伊木山からすぐのところに宇留摩(うぬま)城と猿啄(さるばみじょう)城がある。両城とももちろん斎藤側の城だ。

 今年はこの二つの城とその先にある堂洞(どうほら)城を攻略する予定らしい。


 俺たちはというと、滝川様の策略によって服部友貞が荷ノ上城から出たところで、荷ノ上城を占拠することになっている。

 滝川様からの連絡では、服部友貞が城を留守にするのは三日後のことらしい。

 鯏党からの報告でも同じ情報が上がってきているので、間違いないと思う。

 その時、俺が指揮をするのはこの強襲夜襲部隊なのだ。

「利益」

「ここに」

「当日は荷ノ上城内をいち早く鎮圧しなければならない。お前が先頭だ。いいな?」

「腕が鳴りもうす!」

「ここで戦功をあげれば、酒を飲ませてやろう」

「本当か!? それはありがたい!」


 シイタケの菌床を原木に植えつける作業をサボった利益には酒を飲ませてやっていない。

 他の家臣には事あるごとに振舞っているが、こいつにはサボった罰で飲ませていないのだ。

 まぁ、俺が振舞っていないだけで、自分で買ってきて飲んだり、外で飲むことを禁止しているわけではない。

 だけど、俺の持っている清酒は飲めないので、ことあるごとにまとわりついてきて邪魔くさいのだ。

「やる気がでてきたぞ!」

 そんなことでやる気を出すなよな。


『ブー、ブー、ブー』


 ん? メールか? 久しぶりだな。


【ミッション】

『味方損害ゼロ! : 党首のいない城など無傷で手に入れるのだ!』

『報酬 : プレゼントをランダムで三個』


 おいおい、こりゃぁまたハードルが高くないか?

 無傷ってことは一人が軽傷を追ってもダメなんだろ?

 すっげーむずいんですが!?


 討ち入り当日。

 予定通り服部友貞は長島城へ赴いていると鯏党から報告があった。

「佐倉殿、参りますぞ」

「はい」

 滝川様が率いてきた兵は五百。俺の兵が二百。合わせて七百の兵数だ。

 殿は古木江城で大人しくしている。信辰が上手く抑えているようで、助かる。


 夜陰に紛れて荷ノ上城の門へ向かう。

 真っ暗なので足元が見えず、なかなか進みにくい。

 家臣に夜襲の訓練をさせているくせに、俺がこんなんではいけないな。反省しよ。


 見張りはいない。

 どうやら上手いことやってくれているようだ。

 滝川様が俺を見たので、うんと頷く。

 それを見た滝川様が家臣に門を開けるように指示をすると、四人が門を押した。

 門には閂がかかってなかったようでスムーズに開いた。


 滝川様が手で合図すると、兵士たちが門から雪崩こんでいく。

 こちらも利益と雲慶が先頭で城の中に入っていく。

 利益と雲慶が先を競うように走っていくが、肘で突き合うのをやめろよ!

 お前たちには緊張って言葉はないのか!?


 しばらくすると、城内が騒がしくなった。

 さすがに全員がこちらに寝返っているわけではないので、多少の抵抗はある。

 だけど、これだけ入り込んでしまえば、鎮圧も時間の問題だろう。

 こちらは完全武装して心の準備もできているけど、服部党は寝ていたのを叩き起こされてしまった状況だ。

 これで負けたらどんだけ弱いんだって話になる。


「………」

 所々、あきらかに雲慶の仕業だと分かる兵士の死体があった。

 可哀そうに、顔面が潰れていて顔では個人の判別ができそうにない。


 俺が本丸に入る頃には戦いによる喧騒は収まっていた。

 俺は何もせず、ただ歩いて本丸までやってきた。

 そこには数人の服部党の重臣と思われる人物たちが縄をうたれて座らされていた。

「殿、城内にいた偉そうな奴らだ」

「ご苦労だった。怪我人はいないか?」

「南無阿弥陀仏。そのような軟な鍛え方をした者はおりませぬぞ」

「そ、そうか……よかった」

 ん? 滝川様が微妙な顔をしているけど、どうしたんだ?


「佐倉家の家臣は皆あんな感じなのですかな?」

「………」

 お前たち何をしたんだ?

 滝川様が引くくらいのことって、結構なことだと思うぞ。

 滝川様だって歴戦の猛者だからな。

「なんか、すみません……」


 滝川様から離れて二人のところに行く。

「なぁ、お前たち……」

「なんだ?」

「南無阿弥陀仏?」

「いったい何をしたんだ? 滝川様が引いていたぞ?」

「俺は敵を蹴散らしただけだ」

「南無阿弥陀仏。然様である」

 まぁいいや。お前たちに常識を求める気はない。

 こうして荷ノ上城は陥落して、信長様は尾張を完全統一した。


 翌日には殿が荷ノ上城へやってきて、捕虜にした服部党の処遇について協議が行われた。

「勘次郎はあの者どもを解き放てというのか?」

 殿は、殿に仕えると言う者は許すが、そうでない者は首を切るという判断をしようとしていた。

「服部党はこの地に根差しています。あの者たちの首を切れば反感がこれ以上ないほど高まりましょう」

「彦七郎様、佐倉殿の申される通りと某も愚考いたします」

 滝川様も同じ考えのようだ。

「むぅ、お前たちがそう言うのであれば……」

 まぁ、それは表向きのことで、逃がした奴らの何人かは服部党の残党と必ず結びつきゲリラ活動をすると思う。

 だから、残党をまとめてもらったところで、一網打尽にするつもりだ。

 まぁ、殿には言わないけどね。

 そのことを教えてしまうと、殿が先頭に立って残党狩りをしそうだからな。


 そして、ミッション『服部党をぶっ潰せ!』のクリア報酬をもらえた。

 服部友貞を捕縛するか討ち取るかしなくても、クリアになるんだね。


【ランクB】

 ・筋肉増強剤(10人分)×10


【ランクC】

 ・鉄砲×10


【ランクD】

 ・火薬(1箱)×10

 ・鉛玉(100発)×10


【ランクE】

 ・焼酎(小樽)×10


 ふむ、今回は清酒ではなく焼酎だったか。

 焼酎も美味いから好きだけど。

 もう一つ。『味方損害ゼロ!』の報酬もある。


【ランクB】

 ・とてもよい薬×10


【ランクE】

 ・清酒(小樽)×10

 ・カレー粉(10人分)×10


 なんだと!? カレー粉!? きたーーーっ!?

 カレーなんて二度と食えないと思っていたよ! 嬉し―!


 

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