027_シイタケ栽培
俺たちは歴史通り、加納口に差し掛かった。
隊列は長くなり、イケイケの武将たちはドンドン進む。そして、それは起きた。
伏兵が配置されていて、隊列の長くなった織田軍は奇襲を受けても対処ができなかったのだ。
戦局はあっという間にひっくり返されて、織田軍は混乱した。
「殿! ここは私が引き受けます! 七郎左衛門殿! 殿を無事に古木江城へお連れしてくだされ!」
俺は殿の兵を預かり、味方軍の後退を支援することにした。
「勘次郎!?」
「勘次郎殿!?」
「七郎左衛門殿、早く!」
「すまぬ!」
信辰は殿を連れて一目散に馬を走らせた。
「さて、清次、雲慶、貞次、伊右衛門、利益、俺たちの強さを斎藤に見せつけるぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
利益がにやにやして俺を見てくる。
「利益、どうした?」
「殿はこういうことをされない方と思っていたが、なかなかに」
「南無阿弥陀仏。殿はやる時はやる男なのだ」
「お前たちはこんな時でも無駄口を叩く余裕があるのか。その余裕に期待しているぞ!」
「任せてくれ!」
利益が胸をドンっと叩く。
「南無阿弥陀仏。死なばもろともでござる」
「いや、俺、死なねぇし。お由を後家さんにする気ないからな!」
「殿、それは某も同じですぞ」
清次が会話に入ってきた。
俺の家臣の中で結婚しているのは、この清次だけだ。
「清次殿の奥方はそろそろ新しい旦那がほしいんじゃないか?」
「貞次!?」
貞次のブラックジョークに清次は憤慨する。
「ははは! お前たち、お客さんがきたぞ!」
立ち話をしているが、今現在、織田軍は敗退の真っただ中である。
「貞次、戦いが終わったら話をせねばなるまい!」
「へいへい。生き残ったら考えますよ」
俺たちは敵の伏兵を退けるために戦った。
清次は自慢の槍が折れて刀で戦った。
雲慶は近づく敵兵を自慢の金棒で薙ぎ払った。
貞次は息を切らせながらも、安全マージンをとりながら戦った。
伊右衛門は若くまだ先の三人ほどは戦えないが、それでも生き残ろうと必死で戦った。
利益は鼻歌を歌っているのではないかと思うほどの活躍ぶりだった。
「はぁはぁ……。殿、味方の後退も粗方完了です。我らも後退しましょう」
「頃合いか。全員、撤退だ!」
俺たちは必至で後退した。途中で藤吉郎の部隊と合流して一緒に逃げた。
こんなことはこれで最後にしたいものだ。本当に最悪の戦いだよ。
命からがら尾張に逃げ帰った俺は、息つく間もなく信長様に呼び出されたので清須に向かった。
「勘次郎のおかげで命が助かった。褒めてとらす! 此度の働き、あっぱれであった!」
信長様直々にお声をかけていただき、俺は褒美をもらった。なんと五百貫の加増と刀を一振りだ。
今回の褒美で都合九百貫の碌になった。
勝ってもいない戦で今まで以上の褒美がもらえたのにはびっくりだ。
それほど今回の負け戦はヤバかったのだろう。
藤吉郎も褒美がもらえたようで、ニコニコ顔で俺に礼を言ってきた。
「勘次郎のおかげだぎゃぁ」
藤吉郎はぱんぱんと俺の背中を叩きながら上機嫌で話す。
まぁ、藤吉郎にしたらまた出世できたわけで、笑いが止まらないのだろう。
また、『敗戦処理!』の報酬も受け取った。
【ランクC】
・丈夫な刀
・丈夫な槍
【ランクE】
・砂糖(1Kg)×10
毎回思うけど、俺自身も家臣に褒美をあげないといけないので、大変だ。
今回はランクCの丈夫な刀と丈夫な槍が出たので、丈夫な槍は清次に褒美としてやろうと思う。
清次の槍はぽっきり折れてしまったから丁度いいだろう。
丈夫な刀は伊右衛門にやろうと思う。伊右衛門の刀もかなりボロボロになっていたから、グットタイミングだ。
雲慶と利益は清酒を与えて、貞次は何にするかな……?
貞次は仲間を呼びたいと言っていたし、碌を少し多めに増やしてやるか。
【ミッション】
『部下たちの家臣を増やそう! : 長谷川清次、山内伊右衛門に家臣を登用させよう!』
『期間 : 永禄六年年末まで』
『報酬 : プレゼントをランダムで五個』
俺のことだけでも人材登用は難しいのに、家臣の家臣かよ。なかなかに難しいことを言ってくる。
【ミッション】
『忍者部隊を登用しよう! : 忍者部隊を家臣に加えよう!』
『報酬 : プレゼントをランダムで三個』
これは考えていたことだから、いい。貞次に仲間を登用できるように働きかけてもらおう。
【ミッション】
『家臣を増やそう! : 貫高も増えたので新しい家臣を登用しよう!』
『報酬 : プレゼントをランダムで三個』
これって忍者部隊とは別なんだよな?
人数制限も期間もないからいいけど、人材関係のミッションが三連続かよ。
人脈を作らないといけないよな……そうか、人脈と言えば人たらしの藤吉郎だ!
藤吉郎に頼めば……いやいや、藤吉郎も新参者だから家臣を得るために苦労しているはず。
それなのに、俺がそんなことを頼んだら無理にでも人を紹介しそうだから、ダメだ。
自分でなんとかしないと。
時が進むのは早いもので、信長様がお命じになっていた小牧山城が完成した。
信長様は来年には居城をその小牧山城に移すと明言している。
これで犬山の信清様もかなり窮地に立たされたことになる。
俺の方はシイタケ栽培が佳境に入った。
最初に菌床を植えつけた原木にシイタケが生えてきているのだ!
このままいけば、結構な数のシイタケを収穫できそうだ。
長かった。三年がかりのシイタケ栽培がもうすぐ実を結ぶのだ。
早く収穫をしたい気持ちを抑え込んで、収穫の日を待つことにする。
「殿! シイタケがこんなに!」
家臣総出で収穫をしている。
うん、いい感じのできだ。スマホでもちゃんとシイタケって出ている。
「これを乾燥させたら売り出すぞ!」
「「「「「おーっ!」」」」」
「うっっっみゃーーーっ!」
利益が生シイタケの塩焼きを食ってのひと言だ。
普段はあまり方言が出ない利益だが、今回は無意識に出たようだ。
「南無阿弥陀仏。これは美味い。酒が進むのぅ」
「雲慶はシイタケがなくても酒が進むんじゃないのか?」
俺は皮肉たっぷりに言ってやった。
「酒は百薬の長といいますからな。南無阿弥陀仏」
雲慶はまったく気にしていない。太々しい奴だ。
「しかし、こんなに食べていいのですか? 売り物では?」
「清次、そんなに心配するな。売る分はちゃんとある」
シイタケなんて高価なものを食べるのは初めての清次がシイタケとにらめっこしてから美味しそうに食べた。頬が緩んでいるぞ。
「殿、美味いですな」
貞次は忍者だけあって、クールだ。時々ボケるけど。
「ああ、美味い。思いっきり食えよ」
「殿、某はこんな美味い物を食ったことはござらん!」
伊右衛門は涙を流しながら食っている。
「涙を拭け。これから毎年、収穫後に食わせてやるから!」
「ありがとうございます!」
俺はお由に視線を向けた。
ああ、なんて可愛いんだ。あのシイタケを食べる唇のほうが美味しそうだけど。
「旦那様、私の顔に何かついていますか?」
「いや、お由が可愛くて見入っていたんだ」
「まぁ……旦那さまったら」
【ランクC】
・手鏡
・丈夫な刀
・鉄砲×10
ミッション『城下に産業を作ろう!』の報酬だ。
そう言えば、手鏡は二個目だったな。お由にプレゼントしようかな。喜んでくれると嬉しいな。




