45話 待ち受けるチャラ男
翌日、放課後。
「よいしょー」
最後に来た天女目さんが椅子に座ると、俺はボランティア部全員が来たことを確認する。
そして挨拶もそこそこに、昨日から今日にかけて皆が頑張ってくれた成果を報告した。
「皆、本当にありがとう。逐一貰った情報を春葉がまとめてくれた。皆の前に置いてあるから、それを見ながら報告させてくれ。えっと、まずは下塚さんの情報だ」
下塚さんの情報の多くは、九条さんの性格に関するものだった。大体は田辺からも聞いてはいたが、1年の笹竹と菖蒲を経由したものは、より鮮明に九条さんの人柄が分かる。
スポーツ万能。
どちらかというと大人しい感じだが、友人は多い。
クラスのいわゆる陽キャと呼ばれる人達とも仲が良い。
優しい。
(なるほど、前に出るタイプではないがクラスの誰とでも仲が良いか。大人しいっていうのは、田辺も言ってたな)
「ごめん! 大したこと分からなくて」
「全然。生徒会との掛け持ちなんだし、第三者目線の性格が分かっただけで十分だ。えっと、じゃあ次はクルミだな」
クルミの情報は、どちらかというと九条さんの趣味趣向に関するものだ。
好きな食べ物は苺。
球技全般が得意らしいが、特に野球とソフトボールが好き。
家で花を育てている為か、花自体は勿論のこと匂いも好き。
テレビ等は良く見るが、最近のアイドル関係には少し興味がない。
友人から田辺の話を振られると、顔を真っ赤にしていたらしく、もれなくラブラブ。
「同じクラスだったらもっと分かったんですけど……すいません」
「何がだよ。こんだけ九条さんのこと分かるだけでありがたいもんだ。そんで次は……天女目さんだな?」
天女目さんの情報は……身長、体重、スリーサイズ……以上。
「ちょっとー! 端折りすぎじゃないー? てか、結構詳細に報告したんですけどー」
(いやいや身長はまだしも、スリーサイズと体重はどこ情報よ。しかも妙に合ってそうな数字だけに恐ろしいよ)
「うん。それについては感謝してる」
「すごいよね~? これ見た瞬間、本当にあり得そうな数字だからびっくりしちゃったよぉ」
「だからーマジもんだってのー」
「いやいや、だからこそ今回の報告には載せられないって! 女の子にとっては知られたくない部分だろ? 特に異性には」
「異性ー? チャラ男と女の子しかいなくないー?」
「えっ、僕は……」
(……天女目さん基準だと、クルミも女の子だってか? 確かに男の娘っぽいが男だぞ?)
「はいはい。ちゃんと記録には残すから。ありがとう」
「えー? なんか軽い―」
「まぁまぁ。夏季にしかあんな情報ゲットできないよぉ~」
「でもまぁ、その情報源の方が気になるのだけど?」
とりあえず天女目さんを嗜めつつ、各々の報告はこれで終了。
そして次に取り掛かるのは、プレゼントの候補の選抜だった。
(……結果として、現在九条さんが欲しい物の情報はなかったか)
「えっと、結果として現在九条さんが欲しいと思われる情報はなかった訳だけど……皆が集めてくれた情報を参考に、プレゼントの候補決めていきたいと思う。何か思いつく物あるかな?」
「あぁ〜! お花が好きなら、花束とかどうかな~?」
「やっぱり部活関係の物はどう?」
「花でしたら、枯れないプリザーブドフラワーなんかもありますよ?」
「んーやっぱ指輪かネックレスとかー、アクセ関係じゃないー? 嫌いな子居ないと思うけどー」
流石というべきか、4人共ものの見事に別な候補を挙げてくれた。まぁ天女目さんの件に関しては情報を全く無視したものだが、ある意味女の子全般に当てはまるとも言える。
(候補はそんなところか……正直、どれも九条さんの好みっぽい物だな)
「了解! 皆ありがとう。じゃあ、後は田辺に報告して決めてもらおう」
+++++++++++++++
翌日、土曜日の夕方。
多くの人が行き交う中、俺は田辺と一緒に駅前のショッピングモールへ足を運んでいた。
「いや、悪いな井上」
「まぁ、頼まれたことをしただけだ」
ちなみに当初はクルミも来る予定だったのだが、女の子に見間違われる可能性があった為に、急遽俺1人での付き添いとなった。
クルミの外見について、性別を知っている俺達ならまだしも、何も分からない第三者からは見間違えられる可能性は十分にある。
昨日の何気ない天女目さんの言葉がなければ見逃すところだった。散々リスク云々をうたっていたのにも関わらず、完全に忘れていたことが恥ずかしい。
「とはいえ、考えてくれたプレゼント候補、どれも弥生が好きそうなものばかりだ。しかもちゃんとした理由付きとは、すげぇなボランティア部」
「その点については、俺よりも他の部員にお礼を言ってくれ」
今回の件に関していえば、俺は皆からの情報をまとめただけだ。真の功労者は、動き回ってくれた下塚さんとクルミに天女目さんだろう。それに見事にまとめ上げてくれた春葉、あと知らずとは言え笹竹と菖蒲もだろうか。
「了解。下塚さんと天女目さんは同じクラスだし、桐生院さんもお礼は言いやすいな。あと1年の胡桃沢は……月曜日ちゃんと言いに行くわ」
「頼んだ」
なんて話をしながら、ショッピングモール内を歩き続ける俺達。
買うプレゼントを迷わない様に、田辺には昨日の内に候補の物を教えている。ちなみにその中には、自分でも考えた候補を付け加えておいた。
流石に部長が何もしないと言うのはマズいだろうし、九条さんの好みに合った物を選んだつもりだ。
(……んで? 何を買うつもりだ?)
「田辺? 買うものは決まってるのか?」
「あぁ。滅茶苦茶悩んだけど、決めたよ」
「へぇ? ちなみに何にするんだ?」
「俺が選んだのは……」
+++++++++++++++
窓から差し込む光が心地良い。
そんな温もりを感じながら、俺は机に置かれたパソコンに向かい今回の報告書を作成している。依頼を受けた時から、俺達ボランティア部が取り組んできたこと。それらを時系列順に記録し終え、あとはその結果を打ち込むのみという状態だ。
(……喜んでもらえたかな?)
♪♪~♪♪♪
そんなことを考えていると、スマホから聞こえる通知音。視線を向けると、画面には田辺の名前が表示されている。
俺はすかさず手に取ると、画面をタップした。
(えっと、何なに? 井上ありがとう! 候補の中にあったアロマセットプレゼントしたら、滅茶苦茶喜んでくれたよ?)
そんなメッセージと共に送られてきたのは、満面の笑みを浮かべる2人が仲良くプレゼントを持っている画像だった。
それを目にした瞬間、思わず嬉しさが口から零れてしまう。
「…………よっしゃ」
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