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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第十九章 誰もが笑って、幸せになれる世界を
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"光と風の世界"

 優しく、温かく、幸せで満ち溢れた世界にイリスはひとり佇んでいた。

 どこか花の香りを感じさせる穏やかな春の風が、彼女の頬を優しく撫でる。

 その感覚に嘗ての草原を連想する彼女だったが、どうやら同じ場所ではないようだ。


 ぼんやりとする意識の中、曖昧な記憶を手繰り寄せる。

 自身が何をしたのかを少しずつ理解できた彼女は、正面に立つ大切な人達の存在に視線を向けながら、呟くような小さな声で話した。


「……夢でも、幻でも……皆さんともう一度逢えたことを、心から嬉しく思います」


 大切な仲間達、祖母、師、母、父、友人、国元で出会った者達、旅先で出会った者達に話しかけるように言葉にする。

 本当に多くの者達がイリスを見つめ、笑顔を浮かべていた。


「……でもそれは、一時のことに過ぎないんですね……」


 そんな彼らに美しく微笑みながら、彼女はとても静かに、そして悲しげに話した。


「時間はかかると思いますが、必ず皆さんとまた逢えるから……。

 だから少しだけ、皆さんとはお別れしなければならないのですね……。

 それまでは、もう少しだけ……皆さんの傍に、いさせてくださいね……」


 大切な人達の下へゆっくりと歩み進めるイリスは想う。

 今、私がこうしているのは、ここにいる皆さんのお蔭だと。


 そして心からの感謝を捧げる。

 この世界へと導いてくれた、この世界そのものたるコアに。


 白銀の眩い光に包まれていく世界。

 空へ溶け込みながら、イリスは想う。

 あぁ、本当にこの世界は美しいと。


「……この美しく、優しい世界に居られたことに、心からの……感謝を……」


 徐々に遠ざかる声は、美しい空に吸い込まれるように聞こえなくなった。

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