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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第五章 天を衝く咆哮
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"ひとつの答え"

 

 やがて雨は次第に緩やかとなりつつあるも、未だに止む事はなく振り続け、少女に浴びせ続けていた。


 もうじき夜が明ける。

 そんな時に少女はひとつの答えに、ゆっくりと近付きつつあった。







 ……。



 そうだ。



 わたしが……。




 わたしが"弱い"からだ……。



 わたしが"弱い"からいけないんだ……。




 力も、魔法も、知識も、技術も、



 わたしにはなんにもない。


 なんにも持っていない。



 なんにもないから答えが出ないんだ。




 "弱い"からいけないんだ。




 わたしはなんにもできない子供で、


 なんにも知らない子供なんだ……。






 それなら―――




 それなら、わたしは。





 身体を鍛えればいい。


 魔法を修めればいい。


 知識を深めればいい。


 技術を高めればいい。




 そうだ。


 もしかしたら、何か方法があったのかもしれない。


 例えなったとしても、やっていない今よりはずっといい。


 なんにもしていない今よりも、ずっとずっといい。




 進もう。前へ――――。







 イリスはミレイの遺した最期の言葉を思い出していた。

 いや、今初めて、イリスに届いたのかもしれない。





『 ……だいじょうぶ。……もう、だいじょうぶだよ。


 ……ありがとう。……イリスは前に進んでね 』







 明け方まで振り続けていた雨は、いつの間にか止んでいて、既に日が昇っていたようだ。


 空から降り注ぐ一条の光がイリスを優しく、とても美しく照らしていく。

 それはまるで、イリスの心を表しているかのようだった。


 その光を浴びたイリスの瞳はとても美しく、澄んだ色で空を見上げていた。




 *  *   




 レスティの一言から誰も喋ることが出来ず、誰一人として立ち去ろうとはしないギルドの扉が静かに開いた。

 そこにいたのは、昨日までいた少女ではなく、とても美しく澄んだ瞳をした女性が立っているように見えた。


 レスティの元へ来た女性は、おばあちゃん帰ろう? と言いながら、冒険者達に向けてゆっくりと静かに深々と一礼をしたあと、二人はギルドを去っていった。

 それを見ていた者たちは、呆気に取られたように固まって動けずにいて、誰からともなく小さな笑い声を出した。


 そして一人の男が勢い良く立ち上がり、よーしお前ら! 今日は飲むぞ! と大声をあげ、それに応えて、おお!! と、大きな声がギルド中に響いていった。


 それからはもう、いつもの賑やかなギルドの空気で溢れていて、冒険者達は飲んで、騒いで、食べて、また飲んだ。



 立ち上がったレナードは乱暴に席へと座り、豪快に酒を飲んだ。

 その瞳に溜めた涙をこぼさず、彼はひたすら飲み続けた。



 *  *   



 家に着いたイリスは、お風呂に入りベッドへ横になっていく。

 今日はお仕事はお休みにするとの事なので、ゆっくり眠らせて貰う事にした。

 余程疲れていたのだろう。ベッドに入るとイリスはすぐ眠りに就いてしまう。


 その寝顔をレスティは優しい顔で見つめながら、自分の部屋に戻っていった。




ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。


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