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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第五章 天を衝く咆哮
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"なんて浅はかなんだろう"

 

 どれくらいの時間が経ったのだろうか。


 辺りはもう真っ暗で、降り注ぎ続ける雨の中、立ち尽くす少女は月明かりも見えない場所で、それでもずっと考えて続けていた。




 どうしてこんなことに……。


 なんでこんなことに……。



 どうすればよかったの。


 どうしたらよかったの。


 なにをすればよかったの?


 なにをしたらよかったの?


 なにが正解だったの?




 わからない……。


 なにもわからない……。




 けんぞくってなに?


 どうしてそんなものがいるの?




 どうしてわたしは助けてあげられなかったの?


 わたしには何もできなかったの?



 ……わたしには何ができたの?


 ……わたしには何かができたの?





 どうして……。




 どうしてお姉ちゃんが、亡くならなければ……いけなかったの?






 *  *   






 尚も雨は降りしきり、ただひたすらに、まるで少女を傷付ける様に打ち続ける。

 時折強まる雨脚の中、それでも少女は考え続けていく。


 何度も、何度も。




 こんな苦しみ感じたことがない。


 こんな痛みを感じたことがない。


 まるで心を切り刻まれてるみたいだ。



 からだに感覚がない。


 からだが動かせない。


 からだに力が入らない。


 涙が止まらない。



 重い。


 痛い。


 辛い。


 苦しい。


 悲しい。



 まるで心が悲鳴をあげているみたいだ。





 それでもイリスは何度も、何度も考える。



 ひたすら考えて、考えて考えて。


 それでもどうすればいいか、わらかなくて。



 どんなに考えても、どうすればいいか分からなくて……。


 どんなに考えても、答えなんて全く出てこなくて……。







『この世界は辛く、厳しく、残酷で、無慈悲です』







 エリー様が仰っていた言葉の意味を、私は心底思い知らされる。



 その通りだった。


 あの時の私は、なんにもわかっていなかったんだ。


 エリー様の仰った意味を。


 その言葉の意味も、


 その重さも。


 なんにも理解していなかった。




 おばあちゃんや、ブリジットさんの話もそうだ。


 私は頑張ればきっと何とかなるかもって、


 頑張ればそんな悲しいことにはならないかもって、


 どこか他人事みたいに聞いていたのかもしれない。



 なんにも理解できていなかった。


 分かろうとすらしていなかったのかもしれない。




 あぁ……わたしはなんて……。



 なんて浅はかなんだろう……。



 わたしは努力すればきっと大丈夫なんだって、


 なんの確証もなく思ってて。


 こんなことになるだなんて、


 夢にも思ってなくて。


 ただ日々を過ごしていた。




 わたしなんてただの……。





 無力で、ちっぽけで、なんにも知らない……。






 なんにもできない、ただの子供だ……。











「…………青い空なんて見えないよ…………おかあさん…………」




 空を見上げ、言葉に出した少女の消え入りそうな声は、激しい雨に掻き消されていった。



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