146.明日の予定
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます!
今年も楽しく読んでいただけるよう頑張ります!
服屋を出てアリーシアに案内された先は、予想通り軽食屋だった。
サンドイッチなどもあるようだったがメインはケーキ系らしく、おしゃれなカフェという感じの場所だった。
そういう場所だったため護衛として一緒に来ているグラニトは、服屋のときと同様に馬車付近で待機していたが、リデーナは母さんたちに勧められて一緒に席に座っていた。
個室というほどではないが、他の席からの視線を仕切りで隔てているスペースもあり、貴族などはそういう席を使うと言っていたので、今回の俺たちのように貴族が来店することもあるらしい。
そのおかげかもあってか、メイド服のリデーナが入店しても騒ぎになることはなかったが、注文を取りに来た店員さんは、メイドが座っていたからか少し驚いた表情をしていた。
お昼ご飯は食べてきていたので母さんと伯母さんは紅茶だけにしていたのだが、子供たちはフルーツの載ったケーキやパンケーキを注文した。
アリーシアが姉さんにどんなケーキなのかと説明していたので、それを隣で聞いていた俺が食べたくなっても仕方ないと思う。
そうして買い物とオヤツを楽しんで家に帰ると、玄関の近くに馬車が止めてあったので誰か来ているようだった。
「あら、お父さまが来ているのかしら?」
「"稽古は午前中しかしない"って言ってあるから、その様子を見に来たわけではないでしょうから、明日のことかしらね?」
母さんと伯母さんはそう言いつつ、子供たちのあとにつづいて馬車を降りる。
2人の言っていたことはどっちも当たったようで、リビングには父さんと兄さんに加えてじいちゃんとばあちゃんが座っており、「明日の相談に来た」と理由を言っていた。
――そう言えば明日はお披露目パーティーだから、両親と姉さんはそれに参加するし、兄さんと俺はじいちゃんのところにお世話になるってざっくりとした話しか聞いてなかったな。
「ふふふ、3人とも可愛いわよ」
母さんたちがじいちゃんたちの向かいに座るように移動したので、自然とそのあとについて行って座った結果、リボンに付け替えた俺たち3人が並んで座ることになり、正面から同じ髪型になった俺たちを見たばあちゃんが、微笑んでそう言ってくる。
「それぞれ自分の目の色か。いいじゃないか。似合っているぞ」
姉さんたちは嬉しそうにしており、俺は少し微妙な気持ちではあるが、一応姉さんたちと一緒にお礼は言っておく。
「それで、明日の予定はどうなったのかしら?」
「あぁ、私たちもさっき来たばかりでな、ちょうど今からその話をするところだ」
「そうなのね。ライとカーリーンはよく聞いておきなさいね?」
母さんにそう言われて、兄さんと一緒に了承の返事をする。
「予定ではまぁ、うちでのんびりとするつもりだったのだが……急遽、私は魔馬の飼育場に行かなくてはならなくなってな……」
「あら、本当に急ね?」
「あぁ……兄上がな……」
「あぁ、伯父さまも明日は時間があるのね」
――じいちゃんにも兄弟がいたんだ。俺から見ると大伯父になる人か。
「それで明日は、アリーシアもお披露目パーティーに参加するから、ジルやイリスもいない。まぁヘリシアがいるからうちでゆっくりしててもいいのだが……ライ、カーリーン、どうする?」
「え、どうするって、その飼育場に行ってもいいの?」
「あぁ、訓練というほどの教育はしてないただの飼育場だから、とくに危なくもないしな。2人とも聞き分けがいいから問題はない」
「見てみたいです!」
俺が行きたいというより早く、目を輝かせた兄さんがそう言う。
――あのデカイ馬の飼育場かぁ。あの巨体が複数いるとか圧が凄そうだな……まぁ飼育場だからまだ小さい個体の方が多いかもしれないけど。
俺も兄さんのあとにつづいて「行きたい」と答えると、じいちゃんは「分かった」と頷く。
「伯父さまに失礼のないようにね」
――そうか、そうなると大伯父さんに会うことになるのか。どんな人なんだろう、母さんが珍しくこうやって念押ししてくる人って……。
そんなことを考えながら「もちろん、分かってるよ」と返事をする。
「それじゃあ、明日はそこそこ移動することになるし、動きやすい服装で来るのだぞ?」
「遠いの?」
「王都の近くではあるが、壁の外だな」
――おぉ! まさかの王都外に出ることになるとは! それに母さんがああやって言うような大伯父さんに会うから、それなりにキッチリした服装が必要かと思ったけど、動きやすい服装でいいみたいだしありがたい!
「ん゛ん! ま、まぁ、そのあたりはまた明日馬車の中で話してやろう」
ウキウキとした気持ちで話をきいていると、じいちゃんが急に咳ばらいをし、少し焦ったように視線を逸らしながらそう言ってくる。
「むぅー……いいなぁ……」
「ね~……」
どうしたのかと思っていると、俺の両隣に座っている姉さんとアリーシアから不満げな声が聞こえてきた。
――あぁ……2人の表情が見えたからか……。
「ねぇお母さん、明日パーティーに行かなきゃダメ? 私もカーリーンたちと行きたい」
「何言ってるのエル……なんのために王都に来てると思ってるの。ダメに決まってるでしょ」
「そ、そうよね……」
アリーシアも同じようなことを考えていたのか、母さんの言葉を聞いて諦めたようにつぶやく。
「アリーシアは行ったことあるけれど……まぁそうよねぇ……」
伯母さんはアリーシアの気持ちを察したらしく、苦笑しながらそう言っている。
「ま、まぁ明日は行かなくてはいけないから仕方ないのだが、別にそうじゃない日でも見学はできるから、また後日一緒に案内しよう」
ばあちゃんに「どうにかしなさい」と言わんばかりの視線で見られたじいちゃんがそう提案すると、姉さんとアリーシアはすごく喜んでいた。
――俺からは見えないけど、多分母さんと伯母さんからも同じような視線で見られてたんだろうな……。
じいちゃんは何かを確認するように母さんたちを見たあと、2人は軽く頷いているのでそう思う。
「そ、そういえば義父上、夕飯はどうする? うちで食べるようにするか?」
ホッとしているじいちゃんに、さらに助け舟を出すかのように父さんが話題を変えるためにそう聞く。
そこまで長時間出かけていたというわけでもなく、オヤツを食べてからまっすぐ帰っているので、夕飯の準備をするには時間がたっぷりある。
「あ、あぁ、そうだな。私たちはそうさせてもらおう。イリスはどうする?」
「アリーシアはどう?」
「ご、ご迷惑でなければ、私もこちらで食べたいです……」
「それじゃあ、お兄さまにも仕事が終わったら来るように伝えておかなくちゃね」
母さんが微笑んでそう言うと、アリーシアは嬉しそうに笑顔になる。
「それじゃあ、人数が増えることを伝えておいてくれ」
馬車の片づけをするために玄関で別れていたリデーナがいつの間にかリビングに来ており、返事をしてリビングを出ていく。
「さて、3人とも、どんなリボンを買ったのか、近くでよく見せて?」
ばあちゃんにそう言われて、姉さんたちと一緒にばあちゃんたちの元に行き、再び「可愛いわねぇ」と褒められることになった。
そのあと、伯父さんが来るまではのんびりと談笑し、夕食を食べた。
伯母さんはお昼にうちの料理を食べているが、初めて食べる伯父さんも「美味いな」と満足そうに食べていた。
夕食も終わって帰るようになったときに、アリーシアは泊まりたそうにしていたが、明日は午前中から色々と準備もあるため、今日は諦めたようだ。
午前中からといっても朝早いわけではないが、母さんからしっかりと休むように言われていた姉さんは、いつものように俺の部屋にきたので、一緒に寝ることになった。
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