第7脱 裸から生まれる世界平和
日本首相官邸にて、安倍総理と習首席はテーブルを挟み「話し合い」をしていた。
「日本が大変な事態に陥ってる事に深い悲しみを覚えています。自衛隊だけでは暴動を抑えきれていないと聞き、我が中国人民解放軍は駆けつけようとしています」
見え透いた、表面だけの丁寧な申し出に総理が返す。
「お気遣いありがとうございます。しかしですね、えー、国内にいきなり他国の軍隊を入れるというのはですね、えー。パニックを起こす原因になるのではないかと、ですね、思います。ですから、もうしばらく待ってほしいというのが、私の思うところであります」
「そうも悠長な事を言ってはいられないでしょう。ほら、すぐそこまで暴徒が迫ってきていますよ」
習近平の言う通り、官邸の外からは人の怒鳴り声や叫び声が聞こえてくる。
総理の頬を汗が伝う。
(確かに、このままではまずいですね。しかし彼らを招き入れてしまえば一巻の終わり。暴走した国民を止めるために爆撃も厭わない人達だ。守らねば……しかし……)
決めあぐねる首相に習近平が顔を近付ける。そして、悪魔のように囁いた。
「迷う時間は無いはずだアベシンゾー。日本は負けたのだ。大人しく言うことを聞いた方が身のためだぞ。大丈夫だ、日本国民を殺しはしない。だがあれを収める方法は我々しか知らない。アメリカもロシアも知らないのだ」
唾を飲み込む音が、首相の頭に反響する。そこにもう一声、習首席は揺さぶりをかける。
「私とて裸に剥かれ狂いたくはない。それはアベシンゾー、君も同じだろう。さあ早くするんだ」
「バカな! 捨て身で来たのですか!?」
「そうだ。私は本気だ」
(く……く、く……なんという覚悟……先手をかけられた時点で負けだったというのですか……もはやこれまで……)
このまま全国民が暴徒と化し崩壊するなら、実権を中国に委ねる方が良いと結論を出した安倍総理。
力無くうなだれ、習首席に許可を言い渡そうとしたその時だった。
「すっぽん!」
ドアが破壊、いや『脱がされ』彼女が二人の前に姿を現す。驚き立ち上がる二人。
「なんだね君は」
「どうしましたか? えー、ここは関係者以外立ち入り禁止のはずですが」
「お願いです! これは戦争です! 止めてください!」
「なっ……!」
目的を見抜かれ、狼狽える習首席。しかしすぐに反論する。
「これは、現に君のように菌に侵された日本国民を解放するため必要な措置を取っているに過ぎない。アベシンゾー、彼女は混乱しているようだ」
「え、ええ、そのようですね……」
「違います! おっぱいちんちんって人が戦争だと言ってました!」
パイチンチーの怒声が今にも聞こえてきそうだが、今となっては誰もそれを訂正する事はできない。
「おっぱ……えー、そのような卑猥な名前の人が中国にはいるのですか?」
「私は知らないな。……いや本当に」
これには流石に困惑を隠しきれない習首席。それをはぐらかされていると思った彼女はついに強硬手段に出る。
「んー! もうなんでもいいから! 戦争を止めなさーい! すっぽん! 愛の二人剥き!」
叫ぶ間もなくひん剥かれる二人。それだけに留まらず、彼女の手によって身体をくっつけ合わされる。
たるんだ二人のおっさんが熱い抱擁を交わしてしまい……。
彼女は二人を脱がせるとその場から逃げた。後に残されたのは裸の首相&首席。
二人は暫くプルプルと震えていたが、息を合わせたように立ち上がると今度は熱い抱擁ではなく握手を交わす。
「すまないアベシンゾー! 私が間違っていた! こんな不毛な戦いはもう止めよう!」
「いえ、良いのです。今後は敵としてではなく、共に高め合う仲間として歩みましょう!」
二人はくっついた時に新たな扉を開いてしまったのだ。安倍×習、いや習×安倍、否。どちらでもない。その関係は誰にも表せない。
あえて表すならば、安倍=習だ。
固い契りを交わした二人は和平合意を結び、日本のすっぽんぽん菌は空中からの薬剤散布によって活動を停止。
日中両国は米露も合わせ平和と発展の道を歩み始めるのだった。




