腕を再生させます
リップちゃんは現在魔王城の謁見の間で呆然としている。
それは何故か、視線の先、玉座の後ろの壁に巨大なアリエルの肖像画が飾られているからだ。
リップちゃんは謁見の間に入ってすぐこれを見た時、すぐに犯人を探そうと思った、しかしリップちゃんは賢かった為に気づいてしまった……こんな事をする奴は一人しか居ないと……。
「……アリエル……何を思ってこんな意味の無い事を……」
リップちゃんの残念な物を見るような目は満点スマイルのアリエルの肖像画に注がれていた……。
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うーん……あっ…私あれからどうなったんだろ?
そう思って目を開けると、私は今お風呂に入れられてるみたい、だけど誰もいない……あ! ま…まさか血塗れで汚いからお風呂に入れて放置された!?
嘘……私死んでもおかしくないような大怪我してたんだよ? それなのにこんな雑な扱いなの!?
……酷い……酷すぎるよ! 今すぐ文句を言いに言ってやる!
私は燃え上がる怒りの炎に身を任せ勢いよく立ち上がるが、服とバスタオルが無いことに気付いた。
うん、全裸で出るのは乙女として無いよね。
「ナナちゃーん! タオルと服持ってきてー!」
どうせカリーナとリップちゃんは私を放置して遊んでるんだろうと考えた私は、ナナちゃんを呼んだ。
するとドアがガチャっと開き、少しして小さな手にバスタオルと服を持ったナナちゃんがパタパタ飛びながら入ってきた。
「ナナちゃんありがと、いいこいいこ」
「キュキュ」
私は右腕が無い為、左手でナナちゃんを撫でた後に、バスタオルで体を拭くが……めっちゃやりにくいし拭けてない! 仕方ないから壁と体の間にタオルを挟んで無理矢理拭いた、その後服を手間取りながらも何とか着ることが出来た。
長袖の上着で良かったよ…ヒラヒラするけど傷は見えないもんね。
「右腕が無いのがここまで不便とはね……まぁ仕方ないか、凄い爆発だったもんね…生きてただけでもラッキーだと思わなくちゃ」
私はナナちゃんを右肩に乗せた。
今は肩のちょっと下から腕が無いからナナちゃん乗せても邪魔にならないんだよね。
とりあえず腹いせに机に置いてあった、多分カリーナの石ころ位の大きな宝石を、自分の胸の間に隠してやった。
そして私は部屋を出てカリーナとリップちゃんを探しに行くことにした。
「あら、居候の金髪チビ娘じゃない」
「なっ!?」
私が廊下を歩いてる時、突然後ろから聞こえた暴言に慌てて振り向いた。
すると、身長が170はあるであろうモデルみたいな赤髪ドリルの女性が私を鋭い目で見下ろしていたのでちょっと怖かった、そしてこの人に比べると私は明らかに小さいから何も言い返せなかった。
「全く…こんな何処の馬の骨かも分からないのを城に住まわせるなんて、魔王様も困ったものてすわね」
「え、えっとアリエルです」
目の前のお姉さんのやれやれという態度に、私はとりあえず名乗るかと名乗っておく事にした。
迫力に飲まれた訳じゃないよ? ほんとだよ?
「あら、アリエルというのね、それより貴女……右腕はどうしたのかしら? 痛くない? 無理なら仕方なくですが、医務室に連れて行きますわよ?」
「えっとこれは爆発魔法をぶつけられてしまって、それと痛みは無いので大丈夫です」
「そう、大変でしたのね……それはそうと…貴女はいつまで居候をするのですの? この国には無駄飯食らいは必要ないのよ、だから働くか出ていくかを決めておきなさい、まぁどうしようもない時はわたくしの所に来なさいな、左腕だけでも出来る簡単な仕事くらいはさせてあげる、あぁ住む所は大丈夫ですわよ、抱き枕としてわたくしと一緒の寝室に住まわせてあげるから」
あれ? 文句に聞こえるけど心配してくれてない?
「ご忠告ありがとうございます、困った時は相談させて頂きます」
「そうしなさい、わたくしはエテルノ・ゾディアックですわ、第一文官室の室長をやっていますから何かあればすぐ来るように、その時は仕方ないから相談に乗ってあげますわ、それじゃまた」
そう言ってエテルノさんは歩いて行った。
んートゲがあるけどいい人だったなぁ、ありがたく何かあったら相談に乗って貰おう。
その後私はとりあえず謁見の間に行くことにして、歩き慣れたルートを進んで、謁見の間にたどり着き、左肩を扉に押し付けて開けた。
「あ! リップちゃんとカリーナがいた! もー、二人とも私が血塗れで汚いからってお風呂に放置するなんて酷いよー、起きた時びっくりしたんだからね!」
私は玉座に向かって歩きながらこっちを見て驚いた顔をしている二人を見つつ、怒りのままに文句を言った。
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リップちゃんとカリーナは驚いていた、まさかこんなに早く意識が回復するとは思わず、しかもまだ右腕が再生していないのに、アリエルがエリクシル原液から出てきてしまったからだ。
「アリエル! 今すぐさっきまで居た浴槽にもどるのじゃ!」
「やだよーだ、お風呂入るなら大浴場行くもんね」
リップちゃんの心配をよそに、アリエルはふてぶてしい態度で拒否しながらべーっと舌を出している。
その子供のような態度にリップちゃんはこめかみにピキっと青筋を立て、カリーナはため息をつき、アリエルに向かって諭すように話しかけ始めた。
「そういう事じゃないのよアリエル、あの浴槽にはエリクシル原液が入っていてね、貴女の腕を再生しようとしていたのよ」
「そうなの? 私の腕治るんだぁ、よかったよかった、すっごい不便で困ってたんだよね、でもなぁ……放置されたからあそこに戻ると寂しくて泣いちゃいそうだなぁ」
アリエルは二人をチラチラ見ながら、思っても無いことをほざきはじめる、無論カリーナ達も、このメンタルが鋼鉄のようなバカ娘がそれ位でトラウマになるわけ無いと思っている。
「なに? 治るまで側に居れば満足なの?」
「まぁ……それだけじゃ私の傷付いたガラスの心が治るとは思えないなぁ……まぁ例えばだけど…私に頑張ったご褒美くれるとかね? たまにはそういうのがあってもいいと思うんだよなぁ……まぁ例えばなんだけどね?」
リップちゃんとカリーナは内心かなりイラついていた、アリエルが例えばの所で何かを期待するようにチラチラ見てくるからだ、そして自分でガラスの心とか言ってしまえる図太さも二人のイライラ度を加速させる。
「なら妾がご褒美に宝物庫にある物を何かをやろう、どうじゃ?」
「わーい! 嬉しいなぁ、ありがとうリップちゃん! じゃあ私は大人しく腕を治しに戻るね、ほらカリーナ行くよ」
「はぁ……分かったわよ、じゃあリップちゃんまた後でね」
アリエルが満面の笑顔でぴょんぴょん跳ねながら喜ぶのを見て、二人は呆れたようにため息をつき、カリーナはアリエルに引っ張られて部屋に戻った。
「ほら、服脱ぎなさい」
「うん」
アリエルが服を脱ぎ始め、シャツを脱いだ時カリーナが目を剥いてアリエルを叱り始めた。
「アリエル…貴女ノーブラで城を徘徊したのね!」
「え? うんだって付けられないし」
「だったらもう一枚シャツを着るとかしなさい! 全く…貴女には羞恥心が酷く足りないと思うのよ、だからこれから少し……話をしましょ………アリエル! 貴女胸の谷間に物を挟むなんて何を考えてるの!? しかもこれ私の宝石じゃないの!」
カリーナはアリエルの無頓着さに腹を立て、怒りのオーラを放ちながら肩をつかみ揺さぶると、ポロっとアリエルの胸から宝石が落ち、それを見たカリーナがさらに怒りを加速させ烈火のように怒り始める。
「ご、ごめんねカリーナ……隠してびっくりさせようと思っただけなんだよ」
「そうじゃないでしょう! 胸に物を挟むというのが問題なのよ!」
「それくらい別にいいじゃん、セクシーでさ」
烈火の如く怒るカリーナにアリエルは無意味なセクシーポーズを決めながら言うと、カリーナは急に無表情になり、アリエルに語りかけるように喋り始めた。
「例えばね、さっき入れてた宝石が男の前で落ちて、貴女が気付かなかったとするわよ? そうすると拾った男は貴女の胸の温もりを手で感じ、持って帰って興奮して貴女の妄想をしながら変なことをするかもしれない……どう思う?」
「やだ……凄く不愉快で気分が悪くなる……」
アリエルは顔を真っ青にし、涙目になり小声で呟くと、カリーナは優しい顔をして、「ならこんなことは駄目よね?」とアリエルの頭を撫でながら言った。
「うん……ごめんなさい…」
「解ってくれたならいいのよ、ほら入りなさい」
そう言われてアリエルは浴槽に入り、そのまま寝てしまい、カリーナは寝室でお茶を飲むことにした。
そして暫く経ち、アリエルが目を覚ました。
「あっ! 右腕が治ってる!」
アリエルが右腕をぶんぶん振り回しながら大声で喜ぶと、カリーナが浴室に入ってきてアリエルの右手を持ち、まじまじと見ていた。
「あら、綺麗に治ったわね……でも爪がマニキュアを塗ったかのようなピンク色の気がするのだけど」
「そう? まぁちょっと色が濃いだけだし問題ないよ」
アリエルはそう言ってカリーナからバスタオルを貰い体を拭いて、両手がある素晴らしさを噛み締めながら服を着た。
「よーし! 私復活!」
「はいはい、じゃあ今度はちゃんとしたお風呂に行きましょうか」
「行く行くー ちゃんと温かいお風呂に入りたいしね!」
そして二人は寝室を出て大浴場へと移動し、アリエルは浴場への扉を開けて、いつものメイドを探したが、いつもと時間帯が違うため居なかった。
「残念、今日はメイドさん居なかったかぁ」
アリエルはそう呟くと、とぼとぼ洗い場に歩いていき、仕方なく自分で頭と体を洗い、湯船に入った。
そして少しするとリップちゃんが合流し、今は三人で湯船に入っている。
「そうじゃ、これからの妾達の活動方針を話しておくのじゃ、まず最優先は全ての敵からアリエルを守りきること、次に異世界人の完全排除、それと混沌大陸への対処じゃな」
「そうね、厄介なのは異世界人ね、奴等が相手だとアリエルの魔法絶対防御が意味を成さないもの」
カリーナは心底めんどくさいと言わんばかりに湯船の壁にもたれかかり、上を向いた。
「相手が同時に何人出て来るかにもよるよね、サーチアンドデストロイでいいなら五人くらいは呪いか左目を使えば確実になんとか出来るよ」
「左目を使えるの?」
「うん、光を高密度にして上からぶつければ熱で灰に出来るし、闇で視界を潰しちゃえば一方的に倒せるでしょ?」
「なるほど、それは確かに効果的かもしれんの、妾ならいきなりそれをやられたら対処なんか出来ないのじゃ」
リップちゃんは頷きながらいい考えだと感心したようにしていた。
アリエルがそんな事を出来ると知らない者は光や闇でいきなり攻撃してくるとは考えないだろうからだ。
「ねぇリップちゃん、明日アクエス行こうよ、カティアさんが心配してると思うから……」
「そうじゃの……わかったそうしよう」
アリエルが言いにくそうにしながらもリップちゃんにそう言うと、リップちゃんは少し考えた後、それを了承した。
そしてその後、三人は寝室に戻り、アリエルにエリクシル原液を作らせた後眠りについた。
そして次の日、三人は朝早くからアクエスに来ていた。
その街中は前の時と少し違っていた。
「ねぇカリーナ、前来たときより人多くない?」
「ええ、見た感じだと貴族がちらほら居るわね…何かあるのかしら?」
アリエルとカリーナはこの街に貴族が居ることに疑問を持ちながら何かあるのかと周りをキョロキョロしながら歩いている。
そうしながらも少し早めのスピードで歩いて居たため、すぐにギルドに着き、すぐにカティアの居るカウンターに向かっていった。
「カティアさん、戻ってきました!」
「あら遅かったわね、まぁ大丈夫そうだから安心したわ」
「カティアさん、街中に貴族が居るようだけれど何かあるの?」
カリーナが街中で覚えた疑問をカティアに聞くと、彼女は眉を寄せ声のトーンを落として言った。
「今日は奴隷のオークションがあるの……それも物凄い特殊なやつをね」
「特殊?」
「そう、奴隷自身が買う相手と自分の値段を選ぶのよ、今回は二人だったかしら……内容は確か、普通では絶対に買えないような奴隷が買えるかもしれないとか貴族が騒いでたわね」
「見に行ってみる?」
この話に、珍しくカリーナが食いついて、二人に行くかを聞いた。
「私はどっちでもいいよ」
「妾もじゃ」
「なら行ってみていいかしら、普通では買えない奴隷っていうのが気になってしょうがないのよ」
リップちゃんはさっきまで、カリーナは何か深い考えがあって提案したのだと思っていたが、ただの珍しいもの見たさだったことに一気に気が抜けてしまった。
そうしてオークションが行われる劇場に来ていた、アリエルもここに来たのは初めてだったので、受付で指定された番号、64番の椅子に座ってキョロキョロ周りを見て、全部の席からステージが良く見えるように出来てて凄いなぁとか思っていた。
カリーナはそわそわしながらも大人しく椅子に座っていて、リップちゃんはくーくー可愛い寝息を立てて寝ていた。
そして、黒い執事服を着た男が壇上に上り、大声で開会を宣言した。
「では、まず一人目の奴隷の登場です! アルゴス神聖皇国の現聖女、ローズマリア!」
執事がそう言うと、白い貫頭衣を着た、後ろで一つに結った金髪金目の20代前半のスレンダーな女性がステージに出てきた。
「あれは…確かに聖女だわ……何で皇国のシンボルである聖女が奴隷なんかになったのかしら?」
「さぁ? お金に困ったとかじゃないの?」
カリーナが顎に手を当て考察しながら呟くと、持ってきたクッキーを食べているアリエルが適当に答えた。
「ではローズマリアに聞きましょう! 貴女は誰に幾らで自分を売りますか?」
「私は64番の方に無料で自分を売ります」
「おっとー! まさかの無料! では64番のお客様はオークション終了後ステージまでお越しください!」
この結果に、会場はざわめきに支配される、64番って誰だ? とか、どうせ顔の良い男を選んだのだろう、とか 舌打ちをした後俺が狙ってたのに、という負け惜しみだったのだが。
「次は、おっと、これまた珍しい! 自称選ばれし者で異世界人の、神崎勇気!」
受付の言葉と同時に出てきたのが、ガリガリで髪がモサッとした十代後半のカマキリみたいな顔をした男だった。
「うわぁ……カマキリみたい、私カマキリ嫌いなんだよね」
「くっ…アリエル、貴女の例えは無駄に正確で笑えるから止めてちょうだい」
アリエルはクッキーを手に持ったまま嫌な物を見たようにそう言うと、カリーナがアリエルにクレームを入れた。
「では神崎勇気に聞きましょう、貴方は誰に幾らで自分を売りますか?」
「俺も64番に無料で売る」
「うわぁ……64番の人運悪いねぇ」
「アリエル、貴女64番よ」
「え!? 要らない! 聖女はいいけどカマキリは要らないよ!」
アリエルは衝撃の事実にわたわたしながら要らない要らない騒いでいた。
そして終了後、アリエル達はステージに来ていた。
「この度はおめでとうございます、すぐに奴隷が来ますので少々お待ちください」
「あの……男の奴隷は返品とか出来ませんか?」
「申し訳ございません、選ばれてしまった以上引き取って頂くしかないのです……本当に申し訳ございません」
アリエルの言葉に執事はそれはもう本当に申し訳なさそうに謝ってくるので、もう何も言えなくなった。
そして奴隷の二人がアリエル達のもとに来て仕方なく引き取り、会場の外に出た。
「おい、自己紹介とかしてくれよ、名前もわからないんじゃ不便なんだが」
勇気がそう言うと、リップちゃんがいきなり腹を殴り、うずくまった勇気をゴミを見る目で見ていて、ローズマリアはそれを見て怯えていた。
「奴隷の分際でなんじゃその態度は、貴様と妾達は対等では無いのじゃ、言葉には気を付けろ」
「うっ…ぐっ…いってぇ、ハーレムルートには突入したがまだ好感度が低いか……」
勇気がぶつぶつ何かを言っていたが、誰も興味が無かったので無視された。
「ほらローズちゃん、大丈夫だから行こう?」
「は…はい」
「私アリエルって言うの、隣のがカリーナでさっきカマキリを殴ったのがリップちゃんだよ」
「あ…よろしくお願いしますアリエル様、カリーナ様、リップ様」
「様はいいよぉ、気楽にしてて大丈夫だよ、リップちゃんは優しいからね」
「うむ、妾は異世界人が嫌いでの、どうせ殺すのだから適当に扱えばいいのじゃ」
リップちゃんの物騒な言葉にローズは目を剥く。
「殺すのですか?」
「うん、異世界人は悪影響しかないからね、いずれ全員死んでもらう事になるよ」
ローズがびくびくしながらそう聞くも、アリエルはからから笑いながらそう言った。
そしてギルドでカティアさんに常闇大陸に戻ることを告げ、平原から魔王城に戻ってきた。
「なぁあんたら何者だよ、こんな城に住むなんてさ」
勇気の言葉に誰も反応しない。
「おい、無視すんなよ! これからは一緒に住むんだろ!」
「……あのさ…誰も君と一緒に住むなんて言ってないよ」
「はぁ? 俺はあんたの奴隷だぞ、色々手伝いとかあるだろうが」
「ローズちゃんが居るから君に手伝って貰うことなんて何も無いし、嫌らしい事されそうだから私達に近づかないで、これは命令だよ」
アリエルが命令すると、近づいて来ていた勇気の首輪が締まり苦しみだした。
「ぐっ……なら俺は何をすればいいんだよ」
「死んでくれるのが一番じゃよ、どのみち異世界人は全員殺すのでな、無理なら今は生かしておいてはやるが、幽閉し、扉を封印させて貰うのじゃ、あぁ食事を通す穴はあるし、トイレと浴槽はちゃんとついておるよ」
「ふざけるな! 俺のハーレムはどうなる!?」
リップちゃんが無表情で冷たくそう言うと、勇気は激怒し、怒鳴るように文句を言ってきた。
「そんなものは存在しないよ、世界を移れば上手くいくなんてただの夢物語…そもそも他所の世界に変な力を勝手に持ってきて好き勝手しようなんて迷惑以外の何物でもないんだよ」
「そ……そんな…お、俺は力には自信があるんだ! 何とかならないのか!?」
「ならない、君が自信を持ってるその力がこの世界にとっての害なんだから、取り敢えず寝てると良いよ、君は最後にしてあげるから、それまで穏やかに過ごすと良いよ」
アリエルはそう言って催眠魔法を使い、勇気を眠らせて、城の兵に幽閉用に作られた、城の西にある小さな森に建てられた塔の最上階に移動させてもらい、部屋全体を完全封印し、私達は部屋に戻り各自がソファーや椅子に座りぐうたらモードに入ると、カリーナがローズに質問を始めた。
「ローズ、貴女が奴隷になった理由を聞いても良いかしら」
「…はい、私が奴隷になった理由は、光の加護が無くなり光の魔法が使えなくなった事と、カレンという異世界人が原因です……カレンは多種多様や回復の力が使えるようでもう私は必要無いと、今回のオークションの為の奴隷として捨てられました」
ローズは酷く落ち込んだように奴隷になった理由をぽつぽつと話していった。
それを聞いたアリエルはうーんと少し考えこう言った。
「じゃあ私が掛けたディスペアーカースも解除されちゃったかな?」
「いやそれは無理じゃろ、あれはエリクシル原液レベルの性能の薬か光の魔術で無いと解除できんからの、この世界の属性を使えない異世界人である地点で無理じゃよ、薬ももう失われているしの」
「ふーんなら異世界人にディスペアーカースは有効って事だね……これからはガンガン使っていこう……あと…ママ、ローズちゃん加護を戻して欲しいな……なるべく強く」
「あの……急に何をしているのですか?」
アリエルの急な奇行にローズは思わず疑問の声をあげる。
「おまじないみたいなものよ、それより加護が戻った筈だから使ってみなさい」
カリーナにそう言われ、ローズはどうせ使えないのにと渋々魔法を使うと……問題なく発動した。
その事にローズは目を剥き、三人を何度も交互にを見てこう言った。
「使えるようになってます! 何で!? 皇国に居たときは全く使えなかった筈なのに!」
「ふむ……まぁローズはアリエルの奴隷じゃし教えておくが、光の女神の名前はシャインでは無くエンジェライトと言うのじゃよ」
「………………え?」
「事実よ、皇国が信仰していた女神は存在しないの」
ローズはもう理解が追い付いておらず、先程からえ? え? と言っている。
「なら……今まで皇国がしていた事は全て無駄……」
「そうなるの……光の女神は随分前から人間を見限っていたようじゃし」
「そうですか……ふ…ふふ…………あははははは!! あの老害は本当にただの無能だったのね! あーおかしい! 何が神聖皇国よ、何も神聖な事が無いじゃない! あははははは! 私は運が良かったわ、だって奴隷になったお蔭でアリエルさん達に会えて本当の女神様の名前を知れた! 私の信仰はもう売り物でも老害の資金源でも無いの! 私はただ本当に女神様を信仰したかった……そして今、それが叶って本当に……本当に嬉しい!」
ローズはしばらく泣きながら笑い、最後にはとてもスッキリした幸せそうな笑顔をしていた。
「ふーん、皇国は勿体ないことをしたようね、こんな人材を手放して近いうちに死ぬゴミを重用するなんて」
「そうじゃの、人間でこのように敬虔な者は珍しい、正しく聖女であると言えるじゃろう」
リップちゃんとカリーナはローズの神に対する敬愛に感心する。
「くーくー」
「カリーナ、アリエルがナナちゃんとソファーで寝ておるぞ」
「あ、私がやります、アリエルさんの奴隷ですし、加護を戻して頂いた恩人でもありますから」
そう言ってローズはアリエルをベッドに寝かし、その後カリーナとリップちゃんに一緒に寝ろと言われ、ローズも布団に入り、四人と一匹で大きなベッドで眠りについた。




