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変な精霊が来ちゃいました

 人間の大陸の某所、現在各国の最高権力者達が集まり、ここ数日に起きている異常についての緊急会議を開いていた。


「では現在大きな異常が出ているのはどこだ?」

 

「我が国のアムリス湖だ、世界で最も美しい湖だったのに今では濁ったドブのようになってしまった……」


 初老の男、水の国アムリスを治める王が気落ちした様子で力なく報告をした。


「原因は解っているのか?」


「学者の話では高位精霊が居なくなったからだと」


「精霊? 奉納はしていたのか?」


「しているに決まっているだろう! アムリス湖は聖地であり、我が国の産業の半分を担っていたんだぞ!」


 アムリス王は目を血走らせながら叫び、その後崩れるように椅子に座り、顔を俯かせてしまった。


「結局の所原因不明か…他にはあるか?」


「ああ、フロージア火山とミスト大森林、後はグラル大渓谷で突風が吹かなくなったため、魔物が増えている」


「全て聖地と言われている地だが、それらも精霊が居なくなったのか?」


「らしいな、これは不味い事だぞ、聖地は原初の精霊が居ると言われていた場所だ、これが一斉に異常を起こしたとなると……」


「終焉か……だが伝承では精霊の愛し子が終焉を回避させたと記載されていた筈だ」


「あぁ、しかしその精霊の愛し子は何処にいるのだ? 私は出現したという話は聞いたこと無いのだが」


「いや、私に心当たりがある」


 そう言ったのはまだ20代の若さでアスール帝国の皇帝となったロクサス・アスールだった。


「それは誰だ?」


「その前に皆はワール王国…いや、元ワール王国と言った方がいいか、かの国が滅んだ理由をご存知か?」


「ああ、確か突然環境が劣悪になって人が住めない地になったとかだったな」


「そうだ、だが正確には突然全ての精霊が居なくなったそうなのだ。」


「精霊だと!? それではまさか……」


「ああ、愛し子は元ワール王国に居たのだろうな、そして、愛し子に何かをして怒りを買った、私はそう考えた、だから元ワール王国の国王がいる鉱山監獄へ心当たりが無いか聞き取りに行った」


「して、なにか解ったのか?」


「ああ、確定では無いが、今のところアリエル・イージス元侯爵令嬢が一番の有力候補だ」


「ふむ、記憶に無いな……」


「アリエル・イージス、現在17歳、身長は148cm 、利き腕は左、金の髪に桃色の瞳、まさか彼女とはね……」


 そう答えたのはロクサスよりさらに若い10代で王になったドクーズ王国のキーチク・ドクーズだった。


「はぁ、本当に勿体無い事をしたよ、あれほどの美形は滅多にお目にかかれないから調べたんだけどね、やっぱり無理にでも貰っとくべきだったよ」


 彼がそう言うと、他の国の者たちはゴミを見るような目で彼を見る。

 それは一重にドクーズ王国は通称奴隷王国と呼ばれており、奴隷を作るために他の国から人を拐うなどの評判があり、他の国全てに嫌われているからだ。


「解っていると思うが、愛し子を奴隷などにしたらドクーズ王国は終わると思えよ、愛し子はこの異常をどうにか出来る唯一の存在なのだからな」


「ふふ、わかってるよ」


 キーチクが笑いながら言うと、ロクサスは小さく舌打ちをする、この男は信用できない、ドクーズ王国には監視を入れないといけないと、余計な手間を増やされた事による苛立ちからだ。


 だが愛し子を取り込もうとしているのはキーチクだけでは無かった、そしてその者達は考える、ある者は手に入れられれば世界を手に入れられると。

 またある者は、自分と関係を持たせその力を自分の家に取り込もうと。

 だがそれは叶わないだろう。

 何故なら愛し子はもうこの大陸に居ないのだから。


「それでは終焉を想定して愛し子確保を最優先に行動するとしよう」


 彼がそう言うと、皆は頷き国に帰っていく。


「ふぅ、何事も無く見つかるといいがな…」



……………………………………………………………………………………………………


「あ、これおいしい」


 私はリップちゃんがくれたクッキーをパクパク食べていた。

 うめー、何これどうやって作ってるの?


「これは砂糖が特別なのじゃ、水晶砂糖をつかっておるのじゃ」


「水晶砂糖って何?」


「街に光る水晶があったじゃろう、あれは砂糖で出来てるのじゃ」


「え!? あのクリスタルって砂糖なの!?」


 驚きの事実だった。

 街中に水晶型の砂糖が大量にあるっていうね。

 そしてその砂糖から出来たクッキーが今まで食べたこと無いくらい美味いという事実。


「そうじゃ、それとそのお茶はここの木の葉で作ったのじゃ」


「へぇー、道理で飲んだこと無い味だと思った」


「それより、大精霊は集まってきたのかしら」


 カリーナがそう言うので窓から精霊眼で見回すと、何か大精霊より、遥かに大きい力を持ったのが四体いた。

 んーなんだろあの精霊は……わからん。


「えっとね、何か大精霊より物凄い力があるのが四体来てるみたいなんだけど、なんだろ?」


「!? 四体!? それって始祖精霊じゃないの!?」


「な!? 始祖精霊じゃと!?」


 ん? 始祖精霊って何さ。

 この精霊に愛された私が知らないのに、何で皆が知ってるのさ。


「始祖精霊って何なのさ」


「アリエル……」


 止めて、そんな残念な子を見るような目を今すぐ止めなさい!

 なんだよ、知らなくったって別にいいじゃん、ちゃんと解んないことは解んないって聞いたんだからさ。


「妾が教えるのじゃ、始祖精霊は光の神、闇の神の次に生まれたと言われる火、水、風、地をそれぞれ司る最古の精霊であり、原初の精霊とも呼ばれておるのじゃ、そして、一個体の力だけで世界を変えられるとされている精霊じゃ」


「ほー、じゃあ私はそんな凄いのを呼んだんだね! 凄くない?」


「確かに凄いわ、だけど、人間の大陸に居た筈の始祖精霊を四体全部呼んだとなれば、今頃あちらは終焉が迫って来たとかで混乱しているでしょうね」


「そうじゃな、恐らく終焉関連で精霊の愛し子が出た事も気付かれたじゃろう……カリーナ、向こうでアリエルが愛し子である事を知っておる者はいるのかの?」


 リップちゃんがそう聞くと、カリーナは顎に手を当て少し考えた後、こう言った。


「そうね……もし感付いて居るとしたらワール王国の国王かしらね」


「なら、もうアリエルの捜索は始まってるか、これから始まると見るべきか」


「そう考えていいでしょうね」


「なになに? 私何か不味い事しちゃった?」


  私は深刻そうにしている二人を見て、何かやらかしたか?と心配になり聞いた。


「いえ、この大陸に居れば安全だろうから心配する事はないと思うわ」


「うむ、だが変な能力持つ奴等は警戒してし過ぎるという事はないじゃろうから、心に留めておいて欲しいのじゃ」


「それはもうね! 今まで散々な目に合ってきてるからわかってるよ」


 まぁ取り敢えず、差し迫ったものは無いみたいだから今は安心だね。

 だからそろそろ街に行っていいか聞いてみようかな。



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