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12.校長先生からの呼び出し

合法ロリ先生に呼び出されて校長室に行きました。

なんでも私に、ギルドから依頼がきたみたいです。

通常、ギルドから依頼が来るのは学園の長期休暇期間中か休日のみです。

仕事の依頼よりも、勉学を優先させろということですね。

今回の依頼先への同行者として、合法ロリ先生がついてきます。

私は、不死鳥フェニックスと契約しているので同行者は必要ないのですが、時間がかかる依頼ということで私が学校を休む期間中の勉強を合法ロリ先生が見るために、同行します。

その間の学園内のレイチェル様のフォローは、「禿げ教頭がするのじゃ」と合法ロリ先生が言いました。

ギルドの依頼内容は、「最近、ファシナールという魅了の魔法を持つ魔物の魔石が何者かに奪取されている。魔石が奪取されている場所に行き、その痕跡を探せ」というものです。

魔石というのは、魔物の心臓で人が魔物を操るのに、魔物から奪います。

心臓を奪われた魔物は、自分の心臓を奪った人間に無条件で従います。それほど、魔物にとっては大切なものなのです。

魔物から心臓を奪う方法は明らかにされていません。

分かるのは、誰かと契約している魔物から心臓を取出すのが不可能というくらいです。

魔石が奪取された痕跡を探せというのは、依頼を完了するのが不可能な内容です。

魔石を取出す方法が分からないので、探しようがないのです。

不死鳥フェニックスによると、「人や魔物の手に渡った魔石は魔石が発動したときのみ魔石の場所は分かるが、痕跡自体は残らない。魔石は、奪った持ち主にとって違和感無い姿に変化するから見ただけでは分かりにくい」らしいです。

ギルドの方でも、魔石奪取の痕跡を探せることは期待しんないみたいです。今回は、探れるかどうかを確かめて欲しいということなのです。

これは、SSSランクを持つすべての者に依頼したようです。

私は、とりあえず依頼とその間に来た魔物退治の依頼をしました。

ギルドからの依頼を終えた後、合法ロリ先生からもなぜか「魔王様」と呼ばれるようになりました。



そして数年、とうとうこの日がやって来ました。

ワガママ王子ことスヴァリウス様が、マスケークリス学園に入学するのです。

その入学式数日前に、合法ロリ先生から学園に戻ってくるように言われました。

普通は、入学式当日までに休暇から学園に戻ります。

合法ロリ先生も、スヴァリウス様の貴族間での評判が、レイチェル様と比べてすこぶる悪いので気になったようです。

なので私は、スヴァリウス様の普段の様子や天使レイチェル様に対する仕打ち、ご両親の甘やかしなどなどを包み隠さずに誤魔化しなく伝えました。

これには、合法ロリ先生の顔が引き攣りました。

学園には、いろいろ問題のある生徒が...ここは、お貴族様学校で厳しく育てられれた子たちが来る学校なので、特別問題を起こす生徒はいませんでしたね。

私が入学してから、謹慎・退学をした生徒はいなかったですし。

あの馬鹿コンビの、ロベルト・ゴルゴンゾーラマスカルポーネ様とグッリェルモ・チェダーも不思議と大人しく『美形の王子様と見目麗しい騎士様』で通ってます。

やはり、乙女ゲームの舞台だからなのか、貴族の女の子たちでさえ顔で判断するようです。


今日からこの『きみラタ』は、ゲームスタートするのです。

ヒロイン登場から始まるのではなく、ロベルト・ゴルゴンゾーラマスカルポーネ様とグッリェルモ・チェダーの登場から始まり、スヴァリウス・ヴァルテッリーナ・カゼーラ様の学園入学式を終えた後に、OPが始まるのです。

ヒロインが転入?してくるのは、入学式から一週間後です。


入学式後に、予想済みのことが起こりました。

スヴァリウス様は自分が住む予定の寮とレイチェル様の住む寮を交換しろと言ってきたのです。

スヴァリウス様とレイチェル様の寮は同じくらいの広さです。

ですが、ワガママ王子は入学式までに寮に入って荷ほどきをし、自分の使いやすいように寮の内装をしないといけないのに、準備期間もあるのにもかかわらず放置し、入学式に間に合うギリギリまで屋敷にいました。

直前に無理やり、レイチェル様の寮と交換しようという思惑が見え見えです。

そこに、予想通り入学式後の保護者説明会を終えた旦那様と奥様が来て、レイチェル様に現在の寮を立ち退くように言いました。

私はレイチェル様を背中に庇い、以前旦那様にサインさせた『学園内でのレイチェル様とスヴァリウス様の寮を別にする同意書』を旦那様と奥様に見せました。

ワガママ王子は、私から書類をひったくって破き「これでこの話はないだろ」と自慢顔で行ってきました。馬鹿ですね。

私は、再び書類を目の前に出して見せました。

魔法でもないのに、なぜ出せる?と驚いていますね。

この紙は、『何度でも再生君』という書類用の用紙です。

ヒロイン補正ではありませんよ。

これは、この世界にあるれっきとした書類用の用紙なのです。

先々代の王が、ドジっ子ヒロイン属性の持主で何度も重要な書類を紛失したり、破いたり、時にはインクで汚したために当時の役人たちが死ぬ気の努力で開発したものなのです。

現在では、重要な書類に使われている役人たちの便利グッズの一つです。

旦那様が、知らなくても当然ですよね。

ジムディクト様は、この用紙の存在を旦那様に教えていないのです。必要がなかったからというのもあります。

この場にいる私以外が驚きに固まっている中、ジムディクト様の到着です。

この時のために、ジムディクト様に度々連絡を取っていたのですよ。

「何をしているのだ、スヴァリウス?」

「お祖父様」

「寮に住む準備が全くできている様子がないと、学園側から連絡が来た。どういうことだ?ヴァルテッリーナ・カゼーラ公爵家の者なら、すでに済ませているはずだろう」

「姉レイチェルが、寮を交換しれくれないのです。両親は、姉レイチェルが住む寮を私に引き渡すから、問題ないと言っていたはずなのですか」

「馬鹿者!お前たちがいながら、なぜこんなことになっている。『学園内でのレイチェル様とスヴァリウス様の寮を別にする同意書』にお前はサインしたはずだろう!」

「しかし、父上。レイチェルが、寮を交換すれば丸く収まります!」

「そうですわ、お義父様」

「あのー、よろしいですか?」

「なんだ、リズ」

「旦那様、レイチェル様は女の子ですよ。スヴァリウス様は、男性なのに女性用にしている寮にするのは屈辱ではないのですか?スヴァリウス様には、スヴァリウス様用の男性用の寮にすべきではないかと?」

言外に、馬鹿じゃねえのということを含ませて言いました。

「それもそうか。スヴァリウス、仕方がないから今から戻り、寮に住む準備を始めるぞ」

「はい、父上。申し訳ありません」

「ごめんなさいね、スヴァリウス。リズの言うとおり、あれはあなたが住むには屈辱的な寮ね」

「気になさらないでください、母上」

なんですか?この茶番劇。

そのことに呆れたジムディクト様は用が済んだとばかり、すぐに帰られました。

レイチェル様は、寮が変わらずに安心したようです。

「では、レイチェル様。私は、学園が始まるまでギルドの依頼を受けますので、昨日言った通りメリッサ様の寮でお過ごしください」

「わかったわ。リズ」

「待て、リズ」

「なんでしょう?旦那様」

「レイチェル付きのメイドたちはどうした?寮にいないのか?」

「今は、屋敷で仕事をしていて数日後に寮に来る手筈です」

「どういうことだ?なんでそうなっている?」

「おかしなことを言いますね、旦那様。スヴァリウス様のために、レイチェル様の学園での新学期初日までレイチェル様付きのメイドたちを屋敷にメイドたちを残して欲しいとおっしゃったのは旦那様ですよ」

「今すぐ呼び戻せないか?」

「無理です。屋敷のメイドたちのシフトを組んでいますので、急にここに戻せば、屋敷のメイドたちの仕事が滞りますよ。それでも、よろしいのですか?」

「それは無理なのか?...父上は?」

「仕事があるので、すでにお戻りになりました。数日後、屋敷を訪れるので覚悟して欲しいとの伝言です」

「最悪だ。屋敷にいるレイチェル付きのメイドをここに戻すことは無理だな」

「先ほどから、そう言っているのですが...」

気落ちして、旦那様と奥様とスヴァリウス様はこれからスヴァリウス様が住む寮に行きました。

レイチェル様付きのメイドが屋敷に残っているのは、旦那様と奥様を言いくるめて新学期初日まで屋敷に残らせたからです。

「スヴァリウス様が、学園に入学するまで屋敷で快適に過ごして欲しい」と言ったら、スヴァリウス様限定で親馬鹿な旦那様と奥様はすぐに納得されました。

どうせ、ワガママ王子が王子様扱いされたくて自分付きのメイドたちを学園に移動する直前まで自分の傍にいさせ、寮に住む準備を怠るだろうと予想したのです。

そんなことをしたら、レイチェル様付きのメイドたちにブラック企業並みの過酷労働をさせることになるじゃないですか?イヤですよ、そんなこと。



私までワガママ王子の寮の準備に引っ張り出されたくなくて、新学期が始まるまでの数日間ギルドの依頼を受けました。

これには、天使レイチェル様も納得していただきました。


ギルドからの依頼をこなしている時に、ファシナールの魔石が新たに奪取されたと聞きました。

奪ったのが、頭がよくない奴だといいのですが...

魔物の魔石を取出すには、主人公と不死鳥フェニックスとの契約とは違う意味のでの魔物と契約が必要になります。

その魔物は、腐った魂の持主としか契約しません。(腐的な意味ではない)

契約内容は、死後その契約者の腐った魂を魔物に渡すというものです。

今回は、魅了の魔法の影響を受けた魂もその魔物の物のなります。

その魔物の好物は、腐った魂です。

魔物にとっては、その契約者を観察できるという点も含めてよい取引となりました。

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