第ハ十六話 エルフの村
いつも誤字報告に協力してくださいましてありがとうございます。
一話につき最低一つは誤字が出るとは、どれだけ集中力がないんだろう・・
「エろフぅ⁉」
気が動転して思わず噛んでしまった。
「エロフじゃねえ! エルフだ!」
門を開けてくれたおっさんがそう叫んだ。
いや、噛んでしまったのは申し訳ない。
だがエルフってあのエルフか⁉
まだツチノコやビッグフットが存在すると言われた方が信用できるぞ。
「・・ゆーちゃん、そろそろ教えてあげるわ。ここは地球のある世界とは別の世界。いわゆる異世界よ」
「ようこそ、いせかいへなの!」
そんな歓迎されても・・
そもそも異世界って、いつの間に俺召喚されたんだよ?
「・・おそらくあの地下三階の入口と出口がこの世界に繋げられてるのね」
「そんなあっさりと言われても・・そもそもそんなこと簡単に出来るのか?」
「・・簡単かどうかは大精霊様次第でしょうけど、可能だとは思うわ。そもそも私たちがいる精霊界は様々な世界に繋がってるの。だからこそこの世界や地球のある世界も含めて水や大地などの恩恵を与えることが出来るの」
だから後は地球とこっちとを繋げたってか?
大精霊様、無茶苦茶じゃね?
「・・もちろんダンジョン内だから繋げる事が出来たのだと思うわ。大精霊様達が作ったダンジョンというものは、精霊界に近い場所になるの。ダンジョンというトンネルを介することで行き来できる・・のかしら」
さすがにちーちゃんでも自信がないようだ。
とはいえ繋がってるのが事実なわけだし、きっとそういう事なのだろう。
「とりあえずそれに関しては納得しておこう。ところでおっさん、聞きたいんだが・・」
「ん、何だ?」
さっきこのおっさんはエルフの村だと言った。
だがしかし・・まさかと思うがそんな事はないだろう。
「・・おっさんもエルフなのか?」
「ははは、何かと思えば。当然エルフに決まっているだろう」
そんなバカな⁉ どう見ても人間だぞ!
茶色の髪と髭、人と同じ丸耳、持ってる武器は弓じゃなくて剣。
おまけに見た目はただのおっさん。イケメンでも何でもない。
「ゆーちゃん、なんかかんちがいしてるの」
「・・どうせゆーちゃんの事だから、金髪碧眼で耳が尖ってて、弓を扱う美男美女とでも思ってるんじゃないの?」
いや、だって思うも何もそれがエルフじゃない。
断じてこんなヒゲオヤジではないはずだ!
「・・そもそも地球人の誰もがエルフなんて見たことないのに、その姿が分かるはずがないじゃない? あくまでゆーちゃんのイメージは地球人が勝手に思い描いただけのイメージよ」
「じゃあ男の夢である、美少女エルフとキャッキャウフフする事が出来ないって事じゃないか・・」
なんてこった・・
せっかくの異世界、さらにエルフの村だというのにこんな仕打ちを受けるとは・・
これはもはやエルフ詐欺だ。
「兄ちゃん、何言ってんのかよくわかんないけど、可愛い子や美人な子もいるぞ?」
「そういう事じゃないんだ! エルフであることに意味があるんだ!」
「だから俺たちはエルフだって」
だめだ。このおっさんには一生かかってもわかってもらえないと思う。
この事実を他の連中に知らせたら、みんな血の涙を流すだろう。
まあ教えることは無いんだが。
「とりあえず門を閉めたいから中に入ってくれ」
おっさんの言葉に俺は二人を連れて、とぼとぼと中に入っていく。
まあ落ち込んでいても仕方ないか。気を取り直していこう。
村の中は全て木造建築の建物しかなかった。
そして村人はすべて人間にしか見えないエルフ達。
おそらく人間が混じっていても見分けがつかないだろう。
「そもそもエルフって何なんだ? 人と何が違うんだ?」
「・・この世界においてのエルフは種族ではなく人種よ。自然と共に生きていくことを選び精霊崇拝をする人達で、つまり人間なのよ」
がっかりだよ!
つまりここはエルフの村という名のただの村だ。
異世界という心躍る場所に来ているのに、俺のテンションはダダ下がりだ。
魔王を倒してくださいと言われず、特殊な能力を手に入れず、理想のエルフはおらず、ただの人間の村に来ただけ。
異世界の醍醐味はどこに行った?
「とにかくぎるどにいくの。ゆーちゃんにはみーちゃんがいるから、きんぱつえるふなんていらないの!」
「必要だよぉ・・」
みーちゃんに頭をぺちぺち叩かれながら、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
おっさん曰く、このまままっすぐ道を進めば看板が出てるそうだ。
「そういえば、あのおっさんはよく二人が精霊だって気づいたな?」
見た目はただのちみっこ達なのに。
「・・エルフ達は精霊信仰をしているから、私達の魔力で気づいたのよ」
「なるほど。それで道行く人たちが、たまにこっち見てるのか」
妙に視線を感じると思ったら、みんな二人の魔力に反応してるようだ。
向こうではみんなちみっこだから反応していたのにな。特に危ない目をした奴らが。
「しかし本当にただの村って感じだな。建物は木で出来てるけど、ツリーハウスとかがあるわけでもないし」
「・・結局は森の中に住むだけの人間だもの」
「きのうえはすみにくいの」
どこまでも名前だけのエルフだな。
門から数分も歩くと、ちょっとだけ大きめの建物が目に入った。
交差した剣のシンボルが描かれた看板が出ている。
「ここが冒険者ギルドか。思ったよりちっちゃいな」
「・・村にあるギルドなんてこんなものよ。大きいギルドは街にでも行かなきゃね」
そんなものなのか。
まあなにはともあれ俺達三人はギルドの入り口をくぐった。




