第七十七話 トロッコ
昼食の後はキャンプ用品を見に行ったり、アイテムボックスに入れる分のお菓子やスイーツを買ったりした。
またダイフクの改造用のパーツも色々買ってみた。
「ゆーちゃん、おかしたべてもいい?」
「帰ってからにしようぜ。ていうかお昼結構食べたのにまだ食えるのか」
「・・私たちはまだ食べれるわよ」
健啖家なちみっこ達だ。
買い物が終わって今は十五時。どっかでおやつでも食べて帰るか。
そう思い近くのドーナツ屋に車を向けた。
次の日。
今日から講演を行う日まで『ガーデン』に潜る予定だ。
『ガーデン』には各階にワープポータルがあるので長期戦は考えていないが、フロア内でキャンプをする可能性はある。
アイテムボックスには充分な食料があるので問題はないだろう。
「あたらしいふろあ、たのしみなの」
「そうだな。ただこの前見たときは・・トロッコがあったよな」
朝食を食べてると二階の話が出る。
前回潜った時、帰りが二階のポータルからだったので少し見てしまったのだが、たたみ一畳ほどのトロッコとそれが走るレール、向かう先は洞窟の入口のようになっていて奥は見えなかった。
つまりあれに乗らなきゃいけないのだろう。
「・・また楽しそうなフロアね」
「トロッコに乗るダンジョンなんて初めて聞いたよ」
実際、そんなフロアが途中にあっては困る人が多いと思う。
冒険者パーティはその多くがリヤカーなどを引いている。
なんとかトロッコに載せれたとしても、人が乗るスペースがない。
アイテムボックスがあるうちらならその心配はないが、そこまで考えて造ったのだろうか?
「・・大精霊様の事だから、面白そうってだけで造った可能性があるわ」
「きっとそうなの」
面白いだけならいいんだよ。問題なのは危険性だ。
トロッコの操作とか、乗ってる最中の襲撃とかさ。
「とりあえす朝食が終わったら、お供えのご飯をもって下に降りよう」
兎にも角にも我が家のダンジョンの新しいフロアに挑戦だ。
地下二階。
ポータルを抜けた先には、やはり前回見たときと同じようにトロッコがあった。
そして前は気付かなかったが、その側には石碑があった。
とりあえず俺はトレーに載せて持ってきた朝食のキツネうどんと、昨日買ったスイーツをいくつか見繕って地面に置いた。
「大精霊様、よかったらどうぞ」
「おうどんおいしいの!」
みーちゃんがそう言うと、ふっ、と置いた食べ物が消えた。
こっちはこれでいいだろう。次に石碑だ。
三人でトロッコ横の石碑を覗き込む。
『ようこそ、トロッコアドベンチャーへ! みなさんはこのトロッコに乗って荒廃した街を駆け巡り、魔物達を倒して平和を取り戻そう!』
・・ここはどこのランドだ?
ダンジョンではなくテーマパークに迷い込んだようだ。
「たのしそうなの!」
「・・荒廃した街っていう事は、ゾンビなんかを撃つのかしら?」
ハザード的な奴かい? 銃やロケランが必要になりそうだな。
俺はナイフだけでクリアは出来ない。そんなに上級者ではない。
『ルール説明
・遠距離攻撃のみ使用可。
・トロッコに積まれている武器も使用可です。
・トロッコが一定のダメージを受けたらゲームオーバー。スタート位置に強制転移します。トロッコの体力ゲージは空中に表示されます。
・トロッコ内部はバリアによって守られています。怪我の心配はありません。
・ゲームオーバーした場合は、料理をお供えすれば再挑戦可能です。それ以外のデメリットはありません。
・クリア後も再挑戦する場合は料理をお供えしてください。
・トロッコは自動運転です。
・ドロップアイテムはありません。ただし倒した敵の数、強さによってクリア後に景品をプレゼントします。
・もちろんクリアすれば地下三階にすすめます。
・みんなで力を合わせてがんばろう!』
「アトラクションじゃん!」
いや、面白そうよ?
けど命の危険のないダンジョンは世界初だろ。まあトロッコも他には無いかもしれないが・・
「みーちゃんのこるとぱいそんがひをふくの!」
「・・今宵の虎徹は血に飢えてるわ」
みーちゃん、花火大会の時もそんな事言ってなかったか?
あとちーちゃん、近接攻撃は禁止だぞ。
二人は基本的に魔法攻撃になるだろう。
「俺も魔法・・いや、スラッシュショットでもいいのか」
あとは積まれている武器次第だな。本当にロケランなんかが積まれていたらどうしよう・・
とりあえずトロッコの中を覗いてみる。
手裏剣、スリングショット、ブーメラン、あとはチャクラム?みたいな物。全部ネタ武器じゃん!
せめてボウガンみたいなまともな武器がほしかった・・
しかし使い捨てと考えればスキルに疲れた時に使ってもいいのかも。
「ゆーちゃん、はやくのるの!」
「・・ほぼデメリットは無いのだし、一度やってみましょう」
「そうな。ワンプレイ料理一つなら安いものだしな」
まずはみーちゃんとちーちゃんを抱き上げて、トロッコに乗せてあげる。
俺もカイザーナックルを装備してトロッコに乗り込んだ。
すると洞窟の入口、その天井から縦型の信号が降りてくる。F1なんかのアレだ。
同時に空中に緑のバーが現れた。これがトロッコの体力ゲージか?
ピッ・ピッ・ポーン
それっぽい電子音と共に、トロッコはゆっくりと洞窟の暗闇に向かって走り出した。
トロッコアドベンチャーのスタートだ。




