第六十三話 VSメイジ・ウィーズル
さて軽めの昼食も食べ終わったので、そろそろボス戦と行こう。
俺は戦う前のストレッチを始める。
「撮影準備はできてるんで、いつでも始めてもらってオッケーです」
「わかりました」
甲斐さんからのゴーサインに応え、俺はボス部屋の直前まで進む。
カイザーナックルを両手に装備し、万全の状態となる。
「豊、無理はするなよ。撮影なんかいくらでもやり直せるんだからな」
「みーちゃんとちーちゃんを悲しませちゃ駄目ですよ?」
「わかってますよ。伊達に長いことを冒険者やってませんから」
シロタイツ・マッチョとの戦いの時に何度も経験した。
引き際については一流のつもりだ。
「ゆーちゃんがんばるの!」
「・・負けちゃダメよ」
「まかせとけ。二人は応援をお願いな」
みーちゃん、ちーちゃんからも激励をもらった。
気合は十分だ。
後はイメージ通りの戦いができるかどうか。
「魔法剣」
両拳に炎の魔法纏わせる。
魔法剣というか魔法拳だな。
俺はその状態でボス部屋に入室する。
すると前回同様、部屋の中央に三体の影が浮かび上がる。
こちらは先手必勝で、神速を使って一気に間合いを詰める。
しかし向こうも同時に、二体のウィーズルナイトがこちらに向かって接近してきた。
さらにはメイジ・ウィーズルが炎の魔法をいくつも放ってくる。
前に出て俺に向かって剣を振り上げたウィーズルナイトに対し、その胴体に飛び蹴りを放つ。
もう一体のウィーズルナイトの剣はカイザーナックルで弾き、ボディブローを喰らわす。
再度メイジ・ウィーズルに向かって走りつつ、飛んでくる魔法を拳で迎撃していく。
魔法剣をかけたのは攻撃よりも迎撃のためだ。
実際魔法を撃ち落とせるのかわからなかったので、前回実験してみた。
なおも飛んでくる魔法を迎撃しつつ、相殺され弱まった魔法剣は適宜かけ直す。
とにかく最短距離でメイジ・ウィーズルまで辿り着くのが重要だ。
当然後ろからはウィーズルナイトが追ってきている。
だが追いつかれない限りはとにかく無視だ。
何度も復活する奴を一人で相手になんかしていられない。
狙うはメイジ・ウィーズルのみ。
魔法戦主体の相手には、とにかく懐に潜り込んだ者の勝ちだ。
メイジ・ウィーズルもそれを理解しているのか、後退しつつ魔法をバカスカ撃ってくる。
ちなみに全ての魔法を打ち落としているわけではない。
避けれるものは避けているので、当然それは俺の後ろに流れていく。
たまに後ろで流れ弾が何かに当たってる音は聞こえるが、気にしちゃいけない。
無限リポップ故の戦い方なのだろう。
少しでも追撃が遅れてくれるのなら、こちらとしては大助かりだ。
「到着ッ!」
ついに後退を続けていたメイジ・ウィーズルに追いついた。
だがすぐに総攻撃を仕掛けるわけではない。
ここからは立ち回りが要求される。
メイジ・ウィーズルの体を軸に、常にウィーズルナイトが反対の位置になるように動きつつ打撃を加えて行く。
ウィーズルナイトは二体いるのでずっと反対側にはできないが、可能な限り自分から離れる位置に置くように動き続ける。
もちろんそれは理想論であるので、たまには接近を許してしまったりもするが、俺がメイジ・ウィーズルに近接しているのでウィーズルナイトは思い切った攻撃ができない。
無限リポップのナイトと違い、ボスは倒れたらおしまいだ。
俺はそんなへちょい攻撃を避けつつカウンターを決めて、再びナイトとの距離をあける。
メイジ・ウィーズルは俺の事を鬱陶しがり俺から距離を取ろうとするが、当然俺は逃すつもりはない。
何度も密着しては拳戟を浴びせていく。
この状態を維持していけば・・
どおぉぉぉん!
「ぐうっ!」
密着を嫌ったメイジ・ウィーズルが、自身も巻き込んで爆発魔法を放った。
獣のくせに味な真似をしてくれる。
おかげでメイジ・ウィーズルとの距離が開いて、ナイト二体と相対する事になった。
これではポーションを飲んでる暇もない。
この二体を何とかして再び接近しなければならない。
倒すか避けていくか迷った隙に、ナイトの一体が持っていた剣を放り投げ俺に向かって来た。
俺はお構いなしに殴り続けるが、怯まずに俺に掴みかかり、そのまま俺を地面に押し倒した。
何のつもりかと掴みかかってるナイトの後ろを見ると、もう一体が剣を振り上げる様子が見えた。
仲間ごと俺を串刺しにするつもりか!?
「なめんな!」
俺は覆い被さってるナイトの口に手を突っ込み、火の魔法を放った。
さすがに堪えたのか絶叫を上げそのまま消滅した。
同時に俺は横に転がる。
ザシュッ!
今まで俺がいた場所に突き刺さるナイトの剣。
俺は素早く立ち上がり剣を抜こうとしているナイトを全力で殴りつけた。
こちらも耐えられなかったのか、その瞬間消滅した。
しかし二体とも即座に初期位置でリポップしてくる。
多少の距離はあるので、この隙にアイテムボックスからポーションを取り出して飲んでおく。
飲み終わると同時に今度はメイジ・ウィーズルの魔法が飛んできた。
もちろん二体のナイトもこちらに接近してくる。
・・ソロには辛い状況だ。




