第百七十九話 爺さんと孫
俺達はスーさんを連れて階段のある扉の前まで移動する。
前回は右のドアを開けたらふーちゃんが中で泣いてたんだよな・・
下りの階段もあったけど、その状態のふーちゃんを連れて地下四階に降りるのも何だし、結局家に帰ってしまった。
「この二つのドアが向こうとつながってるんだ」
「ゆーちゃんのおうちにいけるの」
ドアの前でスーさんにそう説明するが、肝心のスーさんはピンときてないようだ。
「儂には壁にしか見えんな。きっとお主らにしか見えぬのだろう」
「お決まりのアレか」
選ばれた者にしか見えない的なやつ。
これはスーさんが地球に行くのは無理そうか?
「一度その扉を開けてみてくれるか?」
「わかった」
確かに扉を開けた場合、スーさんにどう見えるのか気になる。
開けても壁のままなのか、開いた扉も見えないのか。さらには開いた状態の扉にはさわれるのか?
とりあえず地下三階に通じる左の扉を開けた。
俺には普通に地下三階のフロアとワープポータルが見えている。
「うむ、何も見えんな。開かれてる扉も内部も見えん。先程と同じくただの壁だ」
「こりゃ無理か?」
スーさんは俺が開けた扉の辺りをペタペタ触ってみる。
その手は開け放たれている空間を通ることなく、俺から見るとパントマイムをやってるようにしか見えない。
見えない通れないではお手上げな気がする。
「・・こういう時のお約束は手を繋いでみることよ」
「なるほど。一緒に通ればってやつか」
スーさんの手を俺が取って一緒に中に入ればあるいはと。
爺さんの手をおっさんが・・なんか嫌だな。
「よし、まずはちみっ子達と手を繋いで通れるか試そう」
「ゆーちゃん逃げたね」
お黙りふーちゃん。
おっさんと爺さんよりもちみっ子と爺さんの方が絵面的にはアリだ。
誰得なシチュなどいらぬのだよ。
「じゃあみーちゃんとちーちゃんで左右の手を握ってもらって、ふーちゃんは折角だから肩車をしてもらおう」
という事でスーさんの右手をみーちゃんが、左手をちーちゃんが、さらには肩車でふーちゃんを乗せたフルアーマースーさんの完成である。
「孫とお出かけをする爺さんにしか見えんな」
「儂、こんな気持ち初めてじゃ」
予想外にデレデレするスーさん。
スーさんなのに釣りバカではなく孫バカだな。
ちみっ子達におねだりされたら何でも買ってあげてしまいそうだ。
「じゃあそのまま中に入れるか実験だ」
「おじいちゃん、こっちなの」
扉の正確な位置がわからないスーさんの代わりに、みーちゃんとちーちゃんが手を引いて誘導してあげる。
ちみっ子達に手を引かれているスーさんの顔はゆるゆるで、もう地球の事なんかどうでもいいんじゃないかと思える。
それでもゆっくりと入口に近づいていき、まずは手を引いているみーちゃんとちーちゃんが中に。続いてスーさんも中に・・
「・・入れたな」
肩にふーちゃんを乗せたまま、スーさんの体は地下三階のフロアに入っていた。
これにはデレデレしていたスーさんも驚き、辺りをキョロキョロ見回している。
「ここが異世界なのか!? 儂も来れたのじゃな!」
「・・正確にはここはダンジョンの中よ。ここから外に出ればゆーちゃんの家に着くわ」
確かにちーちゃんの言うとおりだが、この入口を越えたのならば外にも出られるだろう。
それでも一応念の為に家まで連れていくか。
「じゃあこっちのワープポータルに乗ってくれ。ちゃんと家に行けるかも試しておこう」
ちみっ子達がわらわらとポータルに乗り込む。
更にフルアーマー化が解除されてちょっとしょんぼりなスーさんと俺もポータルに入った。
「あれ? 動かないな」
いつもなら全員が入ったらすぐ起動するのに、ワープポータルは何の反応もしない。
「あ、多分スーさんが一階のポータルに登録してないからじゃないかな?」
「そう言えばそうか」
ワープポータルは一度ポータルに入って登録することで使えるようになる。
スーさんはここしか登録されてない状態だから反応がなかったのか。
「まあ階段で登ってもすぐに着くし、のんびり行こう」
俺達はポータルを降りて階段へと向かう。
階段を登ればすぐに地下二階のフロアに出る。せっかくなのでここのポータルもスーさんに登録してもらった。
更に階段を登ると地下一階の草原フロアだ。
ここは登りの階段までが離れているのでしばらく歩いていく。
「ここもダンジョンの中なのか。実に興味深いな」
あちらの世界にはダンジョンが無いようなので、先程からスーさんはお上りさんのようにキョロキョロと周りを見回して楽しんでいる。
「あの階段を登ればもうすぐだ」
十分ほど歩き、地下一階への階段が見えてきた。
・・ん? そういえばここも地下一階のエリアだよな。階段を登っても地下一階なのか?
うちの地下室から降りた先がこの階段を上がった先で、そもそも地下室から降りた先の地下一階なのが・・
・・やめだ。
ここも上のフロアも合わせて地下一階でいい。
余計なことを考えると頭がバグる。さっさと外に出よう。
草原の魔物には目もくれず、皆で階段を登っていく。
ここに地下一階のポータルがあるのでもちろんスーさんを登録して、いよいよ俺の家に到着だ。
「ひさしぶりのおうちなの」
「ああ、何だかホッとするよ」
ダンジョンから地下室へと上がり、見慣れた景色に気が緩む。
一度靴を脱いで、そのまま玄関まで移動する。
「さあスーさん、ここが俺達の世界だ」




