第十七話 けいやくするの
二本目。もう一本いけるといいな。
マジか! 念願のヒーラーが来た! ポーション代がかからなくなる。
ちなみに回復魔法のスキルはなかなかレアで、50人に1人くらいの割合でしか覚えないそうだ。
どのパーティーもヒーラーは喉から手が出るほど欲しがる。
倉庫の棚に置いてきたポーション達には悪いが、出番が減ってしまうだろう。
「だいぶ戦闘が楽になりそうだ。それにしても、これでソロはおしまいか。まあ、マッチョの奴は倒せたしもういいか」
「ん~、みーちゃんがいっしょでも、ぱーてぃーにはならないの」
ん!? 通常の魔物と戦うときはともかく、ボスで一緒に戦うとソロにはならないんじゃ?
「みーちゃんはぼうけんしゃじゃないの。せいれいだから、かずにははいらないの」
なるほど。ダンジョンにいる精霊がそういうのなら、間違いはないのだろう。
それに、さっきみーちゃんは召喚されて戦うといった。『召喚魔法』であれば魔法だし、呼び出したものはパーティーとは認識されなくても納得がいく。
まさにソロのための仲間だ。
「で、契約はどうすればいいの?」
「うん、ちょっとまっててね」
そう言うとみーちゃんはベッドから降りてしゃがんで、魔法で水を出した。
これが契約に必要な事なのかなと思ったが、ただ手を洗っているだけだったらしい。豆大福は粉で汚れるもんね。
洗い終わった手をぴっぴっと振るって水を飛ばし始めたので、ハンカチを貸してあげた。
「これで拭いていいよ」
「ありがとうなの。このあとおにいさんにさわるから、てがぬれてたら、おにいさんのふくもぬれちゃうの」
そっか、契約のために手を洗ったのね。なんて偉い子なんでしょう。
みーちゃんはそのまま俺の前に立つ。
そして背伸びして右手を掲げて、掲げて・・
「おにいさん、しゃがんでほしいの」
「ああ、ごめんね」
どうやら届かなかったらしい。
みーちゃんと同じ目線になり、こんどこそみーちゃんは右手を俺の胸にあてた。
「みーちゃんはこのものとけいやくします。きかんはこのものがしぬまでです」
死ぬまでって・・一瞬ブルーになったが考え方だ。
つまりは俺が死ぬまで仲間でいてくれるってことだ。嫁には出さん。
みーちゃんが契約をした直後、触れている右手から俺の中に何かが入り込んだ感じがした。
何かが変わった。そう思った俺はステータスウインドウを開いてみる。
ステータスの状態欄に『契約・みーちゃん』とある。契約・水の精霊じゃないんだ。個人を尊重してるようで何よりだ。
さらに魔法欄に『????』が追加された。召喚魔法じゃないの?
「これでけいやくはおわったの。おにいさんのれべるがあがったときに、しょうかんまほうがつかえるようになるの」
「そういうことか。しかし、レベルアップまではしばらくかかりそうだな」
はぐれマッチョが出なくなってしまった以上、『ファースト』で地道に稼ぐ必要がある。
現状の俺のレベルは、パーティーを組めば地下10階のボスを倒せるほどだ。
つまり地下6~10階の魔物は格下になってしまう。
「ここでれべるあげればすぐだよ?」
「いや、上の階のはぐれマッチョがいなくなっちゃったんだよ」
「それはおにいさんが、ぼすをたおしたからだよ」
そういうことなの? ここと『ファースト』は本当に連動してるのか。
「このしたのかいにいけば、こんどははぐれうぃーずるがでてくるの」
はぐれウィーズル。地下10階のボスであるメイジ・ウィーズルに似たレアモンスターで、猫くらいの大きさのイタチだ。
見た目が可愛らしく、その上足が超速い。仮に追いついても倒すのに違った意味で勇気のいる魔物だ。
今の俺なら追いつくのは問題ない。『神速』があるからだ。
後は殴れるかどうかだ・・
動物愛護団体の皆さん、抗議に来ないでください。
「そうか。じゃあせっかくだから一つレベルを上げてから帰ろう」
「そうするのー。いつでもみーちゃんをよべるようにするの」
そうと決まれば向こうにある階段に・・
いや重要なことを一つ聞き忘れてた。
「そうだみーちゃん。みーちゃんは誰に俺の手伝いをするように言われたの?」
「だいせいれいさまなの」
またすごいワードが出てきた。
大精霊。おそらくはみーちゃんたち精霊の上位存在なのだろうが・・
「大精霊様は何をする人なの?」
「だんじょんをつくって、みーちゃんたちにかんりさせるかたなの」
さらっと世界を揺るがすとんでもない事実が・・
ダンジョンを生み出したのが大精霊様?
そりゃ人工物でもない不思議な存在であるダンジョンだ。超常的な力で出来ていたとは思っていたが・・
「だいせいれいさまたちは、ひとりひとつずつだんじょんをつくられたの。いまはここをのぞいて77のだんじょんがあるそうなの」
つまり27の未発見ダンジョンが世界にはあるわけか。
やはり見つけにくいところに出来た可能性が大きいな。
「ここを除いてって言ったけど、どうして除いたの?」
「ここはとくべつなだんじょんなの。ちかくにあるだんじょんをつくっただいせいれいさまが、ここをつくったの」
「一人一つだったのに、その大精霊様は二つ造ったんだ」
「そうなの。だいせいれいさまが、ぼうけんしゃたちのねがいをかなえたの」
「願いをかなえた? 願ったらダンジョンを造ってくれるの?」
そう聞くとみーちゃんは腕を組んで難しい顔をしだした。
どう説明するか考えているようだった。
そして考えた末に出てきた話は、人類が考えても出なかった答えだった。
「だいせいれいさまはね、にんげんのねがいからうまれて、だんじょんをつくるの」




