第百七十五話 精霊教滅ぶべし
「しかし精霊は解放できたのかな?」
ピチ男を倒したはいいが、精霊がピチ男から抜け出したのかどうかがわからない。
普通の精霊は姿が見えない。見えるのはみーちゃん達のようなエリート(笑)だけらしい。
「だいじょうぶなの。ちゃんとゆーちゃんのそばにいるの」
「うん。ゆーちゃんに『ありがとう』ってお礼を言ってるよ」
あの後こちらに来た面々は精霊教を倒したことを喜び合い、今は怪我人の治療や炊き出しを行っている。
スーさんも今は人化してここに来ている。
「・・でもあなた、ゆーちゃんに抱きつくのは禁止よ。解放されたのだから、さっさとどこかに行きなさい」
ちーちゃんが俺の胸のあたりを指さしてそんな文句を言う。
どうやら精霊に抱きつかれているようだが、姿も見えないので全く実感がない。
まあちーちゃんではないが、解放されたのだし自由にしてほしい。
「しかしスーさんはいいタイミングで来てくれたものだな。もっと時間がかかるのかと思ったが」
「うむ。昔なじみの霊獣たちに聞いて回ったが、唯一聞けたのがマーズ神国特区の精霊結晶の話だけじゃった」
長い事生きてそうな霊獣でさえわからないのでは、本当に貴重なものなんだな。
あるいは探せば意外とあるけど、見つかってないだけなのか。
何にせよ期限内に俺達が手に入れられるものはこれだけだったのは間違いないだろう。
「とりあえずお主と合流してこの情報だけは渡そうと思ってここまで来たんじゃよ」
「そしたら俺達が精霊教と戦っていたという事か」
「わしが眠りにつく前から精霊教の話は聞いておったが、いまだに暗躍しておるとはな」
確か二十年くらい寝てたんだったか。
それほど前から精霊を狩り続けていたってことか。
「ふざけた連中だ。誰がトップだか知らんが、ぶっ飛ばしてやりたい」
「もちろん私達もそのつもりですよユタカ殿」
俺の苛立ちに賛同したのはカールトンとライオード王子だった。
先程まで騎士達にねぎらいの言葉をかけていた王子だったが、俺の言葉を聞いてか端正な顔の眉間にシワを寄せている。
「この件は城に戻り次第、陛下に話して対策を取ってもらいます。マーズ神国とも連携を取って精霊教の討伐に動くことになるでしょう」
王子は拳を握り、鼻息を荒くしてそう宣言した。
まあやる気は買うが、実際に壊滅に動いても、君はお留守番だと思うよ。
マーズ神国に関してはあのミゲル枢機卿の事だ。今回の襲撃のことを聞けばノリノリで教皇に話を通して参戦するに違いない。
「ユタカ殿。先ほど倒した精霊教の・・えっと何て名前だったか・・とにかくすごいですよ」
「確かにあいつの衣服はすごいな。なんで破れないんだろう?」
「いや確かに衣服もすごいですが、ホントにすごいですが」
どうやらカールトンも同じ気持ちらしい。
なんか不思議な力が働いて、ポロリを防いでいるのだろうか?
「それはそれとしてあの男、生きてますよ」
「マジで!? すげーな。精霊の力があったのを差し引いてもタフすぎる」
コロコロするつもりでやったのに、よく生き延びたものだ。精霊に感謝するんだな。
「奴から他の精霊教のメンバーやアジトを聞き出せれば事態も進展するでしょう」
「なるほど。そういった点では生きててくれて良かったな」
「まあ、最終的には死刑になるでしょうけどね」
ピチ男にとっては生き延びたことが幸運なのか不幸なのか。
まあ自業自得としか言いようがないわな。
「あと私としては実際に精霊教討伐に動く際には、精霊様方に旗頭になってもらいたいと思うのですが・・」
申し訳なさそうにそう切り出すライオード王子。
まあ確かにその方が士気は上がるだろう。俺としても参戦したい気持ちはある。
しかしまずは水神社に精霊結晶を届けなきゃならない。
それにこちらの世界の事は出来るだけこちらで解決すべきだろう。
もちろんどうしても手を借りたいと言われたら協力はするだろうが。
「ライオード王子よ。この者たちは大精霊を救うために旅をしているのだ。無理に引き止めてはならぬ」
「霊獣様・・」
王子への言葉にはスーさんが返してくれた。
あまりこちらの詳しいことを話すわけにはいかないが、簡潔で反論の余地もない理由を王子に聞かせた。
「その代わりに我ら霊獣も精霊教討伐には協力しよう。今回の件を話せば他の霊獣たちも力を貸してくれるだろう」
「本当ですか!? それが可能なら何と心強い事か」
スーさんの言葉を聞いた俺は一瞬、ドラゴンの群れがブレスを吐きまくって国を滅ぼす場面が頭に浮かんだ。
いや霊獣がみんなドラゴンというわけではないだろうし、別に国を滅ぼすわけでもないだろうけど・・
怪獣・・いや、霊獣大進撃という特撮も真っ青な画が見れそうだな。
「そういうことなのでお主達の旅に付いていくのは次の機会になりそうじゃな」
俺たちの旅に・・ああ、日本に行きたいってやつか。
実際にスーさんが俺達が来た遺跡に入れるかが問題だが、約束はしたものな。
「こっちが落ち着いてしばらくしたらまた顔を出すよ」
「うむ。その鱗はそのまま持っていると良い。お主が来たら感じ取ることができるからな」
スーさんは鱗の入っている俺のポケットを見てそう言う。
次来るときまでに精霊教が壊滅してるといいな。そうすればスーさんも問題なく俺達と行くことができるし。
「では今日はこのままここで野営をして、明日国に着くようにしましょう」
「では私は騎士団長にその旨を伝えてまいります」
王子の話を聞き、すぐさま動き出すカールトン。
騎士達を動かしテントの準備などをするのだろう。
俺もさすがに腹が減った。ちみっ子達を連れて炊き出しに行くとするか。




