第百七十三話 ピチ男シバくべし
長い間休載していましたが、ヌルっと再開です。
仕事の合間にちょこちょこ書いていきます。
まずは目指せ二百話。
奴らの石弾対策に俺は自身に強化をかけた。
手下達だけで手一杯な騎士団には、あのピチ男の相手は無理だろう。
何よりあいつは許せん。この手でブッ飛ばしてやる。
俺はピチ男に向かって歩き出した。
「何だお前は? 見たところ冒険者のようだが、まさか騎士達ではなくお前が俺の相手をするつもりか?」
「そのまさかだピチ男。俺はあのちみっ子達の保護者なんだよピチ男。貴様があの子達を狙うなら俺がピチ男をピチピチしてやるよ」
「・・さっきから言ってるピチ男というのはまさか俺のことか?」
なんだコイツ? 自分を鏡で見たことがないのか?
そんな戸◯呂(弟)レベルのズボンになっているのに自覚はないのだろうか?
ピチピチなんてのが許されるのはギャルか魚だけだ。
そもそもそんなズボンじゃトイレの時が大変なのでは・・?
「お前以外にどこにピチ男が居るんだ。
頭の中までピチ男なのか? 救いようなないピチ男だピチ。どうやら精霊教ってのは皆ピチピチなようだピチね」
「・・まずはお前をぶっ殺してやるよ。この土の力で立派な墓石を建ててやろう」
ゴツい顔をしてるのでわからないが、おそらく額に青筋を立ててブチ切れているようだ。
とりあえずヘイトはこちらに向けれたようなのであとはこいつをボコすだけだ。
「死にやがれクサレ冒険者!」
ピチ男こと・・えっと名前なんだっけ? まあピチ男が石弾の弾幕を放ってきた。
しかしこの程度は強化してる体にはほとんどダメージはない。
カイザーナックルを顔の前にかざしながら、距離を詰めるべくそのまま突っ込んでいく。
「ちっ! だったらこれでどうだ」
石弾が効かないと見るや、今度はボーリング玉大の岩が飛んできた。
流石に弾幕ほどではないが、当たれば結構痛いだろう。
下半身に当たりそうなものは回避して、上半身分は殴って破壊しながらなおも接近する。
「ふん、高ランクの冒険者だったか。見た目によらんものだな」
「だったら見た目通りだよ。ランクは最低のEだからな」
こっちではほとんど仕事をしてないのだから、ランクなど上がるはずもない。この歳にして新人冒険者だ。
「こんなに戦える低ランクがいるか! さっきからおちょくりやがって!」
岩を破壊つつ接近し近接距離まであと少しのところで、数歩先の地面が怪しく動いた。
咄嗟に大きく横に跳ぶと、先程までいた地面から数メートルはある石筍が俺を串刺しにしようと生えていた。
ちょっとおケツがヒヤッとしたじゃねーか!
「色んな意味で危ない魔法を使いやがって!」
流石に今のは連発できないようで、次の魔法を使おうとした隙に懐に潜り込んだ。
「接近戦なら俺に勝てるとでも思ったのか!」
顔面狙いの俺のカイザーナックルを、ピチ男は素手で打ち返してきた。
まあどうやら土の精霊を取り込んでるようだし、体を硬化させることもできるだろう。そんなのは想定内だ。
「ぐうっ!?」
打ち合った拳は同時に弾かれたが、ダメージを受けているのは明らかにピチ男の方だ。
「残念ながら遠距離戦は苦手でな。だが殴り合いなら負ける気はしない!」
「俺の拳は巨岩さえ砕くのだぞ! そんなしょぼくれた篭手で何故打ち勝てる!?」
拳が石だろうが鉄だろうが関係ない。
俺には貫通ダメージのスキルが有るんだ。
ピチ男には俺の攻撃が百パーセント通る。大してピチ男の攻撃は強化のおかげでダメージが減る。
いつの間にか殴り合いに特化したスキル構成になったものだ。
奴の魔法も俺に対しては相性が悪い。
火や水や風と違い、土魔法は物理攻撃に近い。
石弾、岩弾、さっきの石筍だって結局ぶつけた際のダメージでしかない。
それらは身体を強化すれば軽減できる。とは言えさすがにケツに石筍は勘弁だが・・
「ちっ。考えてみれば王族の馬車に同乗していたんだ、ただの冒険者なわけなかったか」
当たらずとも遠からずな解釈だが、いちいち訂正してやる義理もないか。
さっさとこいつをボコボコにしてスッキリしたいんでな。
しかしそんな中、ピチ男は不敵な笑みを浮かべている。キモい。
「だが俺は別に精霊結晶と精霊が手に入ればいいのさ。あの騎士団共はあとどれくらい持つかな?」
ピチ男が向けた視線の先をたどると、馬車を中心に展開していた第二騎士団は半数位が倒れていた。
対する精霊教の方はまだ八割は残っているようだ。
もっとも騎士団はともかく、馬車にいるライオード王子やちみっ子達は防御に徹すれば早々突破される事はないだろう。
ああ見えてちみっ子達は強いしな。
なので騎士団にも無理はしてほしくないのだが、矜持としてそうはいかないのだろう。
カールトンや第二騎士団団長はそんな中で防御陣形を取りつつ、一人ずつ着実に敵を減らしている。
それでも長くは持たなそうだ。
さっさとこちらの勝負を決めて応援に向かう・・いや、ピチ男を倒せばそもそも撤退するか――そう思って視線を再びピチ男に向けた時だった。
ギャオオオォォォ!
突如上空から耳をつんざく爆音が響いた。
まるで衝撃波さえ伴ていそうなその音に、戦場にい者は全員耳を塞いでしゃがみ込んだ。
その音が咆哮だと気づいたのは、空に浮かぶ巨大な影を見たからだった。




