第百七十話 目的のブツ
「お待たせしました。では精霊結晶を取りに行きましょう」
お祈りを済ませた王子がみんなに向かってそう言った。
これでようやく目的を果たせそうだ。
こっちに来て何日経ったか。帰りの日数も含めて間に合うよな?
俺達は来た道を引き返し、最初のホールへと戻ってきた。
「この建物は特別な仕掛けはなく、この鍵で開きます」
「後から建てた物だもんな」
枢機卿が取り出したシンプルな鍵。よく鍵のマークに使われるタイプのやつだ。
さすがにこの世界にはMI◯Aロックは無いよな。
みんなで建物の扉に近寄り、枢機卿が鍵を差し込んだ。
ガチャン
現代の鍵とは違う重い音を立てて、扉は解錠された。
そのまま枢機卿が扉を開けて中へと入っていく。
俺とちみっ子達もそれに続いて中に入ると、すぐに宙に浮く深い緑色に光る石が目に入った。
たしか前にヨセ山で見たのはエメラルドグリーンだったが、あれは進化の最中で石の力を使っていた為にあの色だったな。
深い緑色は未使用の証拠というわけだ。
「さあ精霊様お取りください。これでようやく精霊結晶を守ってきた事が報われます」
いつからここに精霊結晶があったのかは知らないが、長い年月教会と王家は今日のために守ってきてくれたのだ。
おかげで水神社の消滅を回避し、宮城の人達を悲しませずに済みそうだ。
「じゃあみーちゃんがとるの」
「・・待ちなさい。ここは私が行くわ」
「僕も持ちたい!」
そして多分こうなると思った。
ちみっ子達は誰が精霊結晶を持つかで揉め始めたのだ。
誰でもいいからさっさと回収してくれないかな・・
喧々諤々と揉め続けるちみっ子達に、周りの人間は苦笑いをしている。
「ジャンケンでもするか、交代で持てばいいだろ」
「ゆーちゃんがそういうならしかたないの」
さすがにずっと見ているわけにはいかないので、程々で介入して話を進ませる。
どうやらジャンケンで勝った順に交代で持つことにしたらしい。
そして最初に持つことになったのは・・
「・・じゃあ回収するわね」
「むー、くやしいの!」
「最初が良かったなぁ・・」
勝者ちーちゃん。
てか、ただ持って運ぶだけなのに何でそんなに拘るんだ?
何なら面倒くさいまであるぞ。
「最初に取るのは何だか特別だもん」
「それにもってるとみーちゃんにもちからが・・ゆーちゃんのおてつだいをしたいの!」
をひ。みーちゃん、本音が出てたぞ。
当然だが勝手に使っちゃダメだよ!?
「・・大丈夫よ。一度使い始めたら進化が終わるまで続いちゃうから、勝手に使えないわ。持ってるだけでおこぼれで力を得ることも無いし」
「そうなのね。安心しました・・」
万が一でも水神社の精霊が進化しきれなかった・・なんて冗談にもならない。
みーちゃんに持たせるのはよそうかな・・
「だ、だいじょうぶなの! みーちゃんはちゃんともてるの!」
「何故どもるんだよ・・」
不安しか無い。
とりあえずちーちゃんにさっさと回収してもらおう。
「じゃあちーちゃん取っちゃって」
「・・わかったわ」
宙に浮いている精霊結晶をちーちゃんも宙に浮いて回収する。
特に何が起こるでもなく、ちーちゃんの手に収まった。
そういえば聞いただけでまだ試してなかったな。
本当に精霊しか触れることが出来ないのかどうかだ。
「ちーちゃん、ちょっと触らせてもらっていい?」
「・・えっち」
顔を赤らめてそんな事を言うちーちゃん。確かに何をとは言わなかったが。
周りの人間が汚物を見る目で俺を見てるじゃないか。
そしてみーちゃんとふーちゃんは羨ましそうにするんじゃありません。
ますます変態の烙印を押されてしまう!
「精霊結晶にだぞ!? 本当に触れ無いのか試してみたいんだ」
「・・意気地なし。夜だったらOKしたのに」
昼でも夜でもダメに決まってるだろ。
俺を犯罪者にするつもりか?
「あの、僕も『精霊結晶』に触ってみてもいいですか? 試してみたいです」
王子も俺と同じ気持ちなのか、お触り会に参加表明をしてきた。
何故か精霊結晶の部分を強調していたが。
まあ結局、実際に試したことのある枢機卿以外が試してみることになった。
もちろん誰も触れなかったが。
「不思議ですね。そこにあって精霊様が持っているのに触れないなんて」
王子の言うとおりだ。
まるで立体映像のように手が精霊結晶を通過してしまった。
ちなみにちーちゃんはちみっ子達三人でキャッチボールをしてみせる。精霊結晶が可哀想だからやめなさい。
「何にせよこれで目的は達成出来たな。後は帰るだけだ」
「ここから直接精霊様の元に届けに行くのですか?」
「いや一度王都を経由するから、そこまでは一緒に行こう」
「それは嬉しいです! また色々お話を聞かせてください」
今後の動きにを王子に尋ねられたので王都まで行く事を伝えると、王子は満面の笑顔で嬉しそうにそう言った。
精霊結晶を手に入れるために一緒に来てもらったのに、手に入れたらハイさよならなんて大人のすることではない。
ちゃんと王都まで送り届けるさ。王都入り口で別れてそこから車で帰ればいい。
しかしその為にまた聞かせてあげる冒険譚を考えなければならないらしい・・
ガンバレ俺のプリンの如き脳細胞よ!




