第百六十九話 お墓参り
王墓の内部は静寂な上にひんやりとしていた。
特に窓はないのに明るい建物。大きな広間の中央に駅のホームの待合室くらいの大きさの建物がある。
またホール周囲には奥へと続く通路が何本かあった。
「あの中央の建物に精霊結晶があります」
枢機卿の言葉に、全員の目が建物に向いた。
天井がドーム状になっているその建物はそれと真っ白な事以外特に特徴はなかった。
「精霊様しか持てない精霊結晶をどうやってあそこに運んだんですか?」
ふと王子がそんな疑問を口にした。
確かに精霊が手伝いでもしないとあの中に持っていくのは出来ないはずだ。
それとも以前に手を貸してくれた精霊でもいたのだろうか?
「ああそれはあの場所に精霊結晶が発生したので、後から建物を建てたのですよ」
「なるほど、そういう事ですか」
精霊結晶のためにわざわざ後から建てるとは・・
神聖な場所に現れたので大切に扱ったのだろうか。精霊やそれに関するものに対する気持ちが伝わってくる。
「みなさん。精霊結晶を回収したいでしょうが、まずはご先祖様にご挨拶をさせてください」
「そ、そうだな。ここはお墓なわけだし当然のことだな」
多分王子以外は精霊結晶の事しか頭になかっただろう。
王族とはいえ子供である王子にそれを言われ、一同は慌てて同意をした。
精霊結晶を目の前に、人としての常識を忘れれしまうところだった。
「・・だめなおとなたちなの」
「みーちゃん、それは言ってあげないのが優しさだよ」
ちみっ子達の言葉が胸に刺さる大人たち。
両団長は明後日の方を向いてるし、枢機卿は気まずげに頭をかいている。
「では先代のお墓へとご案内いたしましょう」
気を取り直した枢機卿は俺達を奥の通路へと案内する。
いくつかある通路は他の代のお墓に通じているのだろう。
俺達は足音が響く建物を歩いていく。
さすがに静か過ぎて気味が悪くもある。なんとなく生物災害なゲームを思い出す。
ちょっと怖くなったので枢機卿に確認をしてみる。
「この建物には誰も居ないんですよね?」
「ええ。居ないと言うか、指輪を使わないと誰も入れないので」
それもそうか。
王族が居ないと入れないのだから、他の誰も入れるわけがないな。
ゾンビとか出てくるわけ無いよな。
「ああ、でも実体のない精霊様なら入れるかもしれないですな」
「通り抜けられるってことか・・」
まあ精霊なら別に・・いやいや、それだと精霊結晶が使われてる可能性があるじゃないか!
「・・大丈夫よ。指輪の封印は結界になっていて、普通の精霊じゃ入れないわ」
「普通のってことはちーちゃん達は入れそうなのか?」
「・・そうね。建物を壊してもいいなら入れるかしら」
ビバ脳筋。力こそパゥワー。
ちゃんとは見ていないが、壊されていた様子もなかったので侵入者はいないだろう。
そもそもこの建物を壊すなら教会の人間も神殿騎士団も気付くはずだ。
となれば内部は俺達しかいない。オバケなんてないさ。
「さて、こちらが先々代方が眠られている祭壇です」
通路の先にあった礼拝堂くらいのホール。
たどり着いた場所には立派な祭壇が鎮座していた。
「先々代方?」
「ええ。この王墓にある祭壇には十名ずつ眠られています。現王ヨウ様は十九代目、ライオード王子様は二十代目なので没後はこの祭壇でお眠りになられます」
「僕の子供が王座についたら次の祭壇に入るのですね。父上やお祖父様と同じなのは嬉しいですが、子供と別なのは寂しいですね」
子供らしい素直でやさしい感想だ。
大人になればきっとそんな事思わなくなるぞ。
あくまで俺個人の考えだが、死んだ後に墓に入るよりも、散骨してもらって地球に還りたい。
死んだことがないので死後の世界とかわからないが、暗い墓の中に魂を囚われたくはない。
地球の重力に魂を捕われなくなれば、俺もきっとニュータ◯プになれる!
「ゆーちゃんはわかがえりのくすりをのんで、みーちゃんたちといっしょにいるの」
「・・そうね。見つけたら寝てる間に飲ませましょう」
「そこの二人、恐ろしい相談をサラッとするんじゃありません」
俺の考えを読んだ二人が危険な話をしていたので急いで止めた。
朝起きたら子供に戻ってましたとか、世界が大騒ぎになってしまう。
もし薬を見つけてもアイテムボックスに封印だな。
「ご先祖さま、どうかこの国を見守っていてください・・」
そのつぶやきに王子の方を見ると、手を組んで祭壇に向かってお祈りをしていた。
さらにはそれに倣って、他の面々も目を閉じて手を組み祈りを捧げている。
これは俺もやらないとダメなやつだ。
いそいそと手を組んで目を閉じる。
『ヨウが異世界知識で暴走しないように見守っていてください』
アイツの事だからこれからもいろいろ改革を進めるだろう。しかし地球では普通でもこちらでは受け入れられないものだってあるはずだ。
急激に変えるのではなく、時期を見ながらうまい事やってほしい。
国民からの反感を買って革命を起こされた国を見たくはないのでな。
元漁師のヨウにはハードルが高いかな?
まあしっかりした宰相や立派な王子がいるのだからきっと大丈夫だろう。




