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我が家の地下にレアダンジョンができたんですが・・  作者: エクスボーン


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第百五十五話 ヒゲの軍務卿

「む、私の自慢のヒゲに注目するとはお目が高い。こちらのお嬢さん方が件の精霊様かな?」

「ええそうよ。それとこちらが契約者のユタカさん」


 どうやらドラウザー軍務卿はヒゲを褒められたと思ったらしい。

 ご自慢なものらしいので、やはり笑ったらアウトだな。


「冒険者のユタカと申します」

「シルバームーン王国軍務卿のドラウザー侯爵である。本日は精霊様共々ようこそお越しになられた」

「あ、私ははただの冒険者なので、堅苦しい言葉遣いは不要でございます」


 逆に俺の方はうまく話せてるか怪しいがな・・


「ハハハ。ではユタカ殿ももっと砕けた口調で良いぞ。私もそういったものは苦手でな」


 堅苦しいヒゲの軍人かと思ったが、楽しそうに笑いながらそう言ってきたのを見ると、意外と話せる人らしい。

 軍務卿なんて肩書で偏見を持ってしまったようだ。


「精霊様方も好きなようにお話ください」


 ドラウザー軍務卿は大きな体を出来るだけちみっ子達の目線に合わせるように屈めて、優しそうな笑顔でそう言った。


「みーちゃんなの。おひげさわっていいですか?」

「・・ちーちゃんよ。おヒゲさわってもいいかしら?」

「ふーちゃんだよ。おヒゲさわってもいい?」


 ・・おいコラ。どんな自己紹介だ。

 しかも目を見て挨拶するんじゃなく、ヒゲを見て挨拶してるし・・


「ええ、我が自慢のカイゼル髭。好きなだけ触ってくだされ」


 ちみっ子達の失礼な自己紹介も気にすること無く、むしろ喜んでヒゲを触らせる軍務卿。

 ちみっ子達は興味津々にヒゲを触り始めた。


「えっと、いいんですか? 大事なヒゲなのでは?」

「私にもこの子達くらいの孫娘がいてな。いつもこのヒゲを触ってくるんだ。だから精霊様にこのヒゲに興味を持ってもらえるのは誇らしいのだよ」


 孫娘のお気に入りのヒゲだから自慢なわけか。

 そしてちみっ子達は数分間たっぷりヒゲをイジって満足したようだ。


「おじさんありがとうなの。ゆーちゃんにもこのおひげをつけようなの!」


 勘弁してください。

 こっちは出来るだけおっさんに見られないように、毎日ヒゲを剃ってるんだ。

 そもそも無精髭ならともかく、ヒゲを整えるなんてめんどくさい作業は無理だ。


「駄目だよみーちゃん。ゆーちゃんにはこのおヒゲは似合わないもん」

「・・そうねゆーちゃんならもっとワイルドなヒゲがいいわ」


 そうじゃないんだちーちゃん。ヒゲを伸ばす気はないんだよ。

 まったく、軍務卿のせいでこっちにヒゲが飛んできたじゃないか。


「さて、それでは中に案内しよう。付いてきてくれ」


 しゃがんでいた軍務卿も立ち上がり、踵を返して場内へと歩き始めた。

 俺達もそれに続いて中に入っていく。


「きらきらなの!」


 みーちゃんの言う通りさすが王城らしく、白を基調とした美しい造りのエントランスとなっている。

 魔導具であろうシャンデリアやガラス製のインテリアなどが光を反射して、目に痛いほどにキラキラしている。


「客を招き入れる場所は豪華に造られるものだ。逆に客が立ち入らない場所は機能性が重視されている。例えば王族の部屋やキッチン等だな」


 威厳を示すためにもそうする必要があるのだろう。

 パンピーな俺には不釣り合いな世界だな。


「落ち着かないか? 実は私もだ。我が家は質実剛健な造りなのでな、こうキラキラした場所は居心地が悪い」


 それはそれで貴族としてどうなのかとは思うが、俺もきっと軍務卿の家のほうが落ち着くと思う。

 俺達は話しながらもエントランスを抜けて通路を進んでいく。

 一階だけでも相当な広さがあるようだ。案内がなければ確実に迷子になる。


「ここが控室となっている」


 しばらく歩いた後、軍務卿は足を止めてそこにあったドアを開いた。

 中に入ると控室と言うだけあってソファーとテーブル、他には生けられた花や簡単な調度品があるだけの部屋だった。

 質素というわけではないが、とても落ち着ける部屋だ。


「王の準備が出来次第、隣の会議室で会談を始めるので、それまではここでゆっくりしていてくれ。すぐにメイドにお茶も用意させる」


 案内役の軍務卿はそう言って部屋を後にした。

 俺とソフィアさんとタクマ司祭はとりあえずソファーに腰掛ける。

 ちなみにちみっ子達は部屋の物色を始めたようだ。飾ってあるものを壊さないようにね。


「そういえば謁見・・いや会談には来たがいったい何をするんだ? 王墓に入って精霊結晶をもらう許可をとるだけだろ?」


 なんとなく流れで会談に来たが、別に来る必要はなかったような気がしたので尋ねてみた。

 許可だけだったら、昨日二人がここに来た時にもらえばいいだけだろうし。


「一応、王もご自分の目で精霊様を確認したいのでしょう。それに王墓へ行くのであれば同行者も必要になるでしょう」


 俺の疑問に答えてくれたのはタクマ司祭だった。

 同行者か・・俺達だけなら車で行けるんだがな。他の人がいては馬車で行くことになるか。


「まあ自分の目で確認とはいっても王が見分けられるわけではないので、単純に精霊様に会いたいだけなのでしょうけど」

「ミーハーかよ・・」


 ソフィアさんの身も蓋もない説明に肩を落とした。

 まあ普通に生きていては精霊を目にすることは出来ないのだから、それも仕方ないのかもしれないが。

 それからしばらくの間お茶を飲みながら雑談をしていると、再びドラウザー軍務卿が部屋に入ってきた。


「待たせたな。王の準備が出来たのでこれより応接室に移動する」


 王様か・・

 無礼者だと手討ちにされないように気を付けよう。

 市中引き回しの上獄門に処すなどと言われたら、ちみっ子達を抱えて全力で逃げなくては。

 城の外にさえ出られれば車を出して逃げ切れるだろう。

 と、小市民な俺はアホな事ばかり考えていた。

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