第百四十九話 ミーちゃん
ホットドッグを食べた後、もうちょい食べたかったので野菜スープと肉串を買って腹を満たした。
もちろんちみっ子達も三人で分けて食べた。
・・食べすぎだと思うよ?
「そろそろ工房街に着くかな?」
買い食いをしつつ歩いていたが、時間的にそろそろ到着するはずだ。
心なしか食べ物屋や日用系の商店が減ってきた気がする。
「・・ゆーちゃんは何か欲しい魔導具があるの?」
「そもそもどんな魔導具があるかわからないから、見て気に入ったものがあれば買う感じだな」
まあ大前提としてダンジョン内で役に立つものが欲しい。
地球じゃダンジョン以外では魔導具は使えないだろうしな。
レン達の攻略の役に立つものがあれば言う事なしだ。
俺は最前線まで行くことが出来ないので、代わりに魔導具でフォローしてやりたい。
まあアイテム袋以上に役に立つものがあるかは疑問だが。
「このあたりがこうぼうがいみたいなの。まどうぐのおみせがおおいの」
店名が読めない俺に代わり、みーちゃんが周囲の店を見て教えてくれた。
確かに活気のある場所ではなくなり、かと言って住宅街ほど人が出歩いているわけでもない。
歩いている一般人もいるが冒険者が多いように感じる。あとは仕入れに来た商人ぽい人も見受けられる。
「あとはリドリー工房がどこにあるかだな」
「一軒一軒見ていくのは大変だよね」
「・・八百屋の近くって聞いたけど」
「やおやがどこかわからないの・・」
誰かに聞いた方がいいだろうか? 別にそんなに急いでるわけではないのでブラブラ探してもいいのだが。
そう考えながら歩いていると、不意に俺達の前に小さなものが躍り出てきた。
「あ、にゃんこなの!」
そう、黒猫亭の黒子猫に続き今度は三毛猫が俺達の前に現れた。
この街には猫が多いのだろうか?
「・・おいでおいで」
「一緒に遊ぼう」
ちーちゃんとふーちゃんが猫を手招きするが、さすがに警戒してるのかこちらを見てるだけで近寄ってはこない。
この猫は成猫のようで、宿の子猫と違い相手をちゃんと見極めてるのかもしれない。
「ミーちゃん!」
「ん、だれかよんだの?」
確かに女性の声でみーちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
周りを見渡すと、右の路地からエプロンを着けた女性が小走りで出てきた。
ただエプロンは料理用には見えないもので、膝くらいまで丈のある白く、しかし結構汚れているものだった。
「ミーちゃん! 勝手に走って行っちゃダメじゃない!」
「みーちゃんはしってないの」
女性は確かにみーちゃんの名前を呼びながらこちらへ・・いや、猫の方へと寄って行った。
ああ、あの猫がミーちゃんなのか。
ミーちゃんと呼ばれた猫は一声『ニャー』と鳴くと、女性の差し出した両手に中に飛び込んでいった。
「もう。馬車に引かれるかもしれないから勝手に行っちゃダメよミーちゃん」
「だからみーちゃんはなにもしてないの!」
「え? えっとあなたは?」
女性はやっとこちらに意識を向けたようで、文句を言うみーちゃんに近づく。
さすがにこの子がみーちゃんって名前だとは思ってないのだろう。
「ミーちゃんってのはその猫の事か? この子もみーちゃんって言うんだよ」
俺はそう言ってみーちゃんを抱え上げた。
みーちゃんはぷんすこ怒って女性を見ている。
「そうなの!? ごめんなさい。同じ名前だなんて思わなくて・・え、みーちゃん? あだ名かしら?」
「みーちゃんはみーちゃんなの!」
「この子は精霊なんだよ。水の精霊のみーちゃんだ」
さすがにみーちゃんが人の名前だとは思わないよな。
さらにみーちゃんを怒らせてしまった女性に精霊であることを説明してあげた。
「精霊様!? こんな可愛い子がですか!?」
「みーちゃん、ちょっと浮いてみて」
手っ取り早く納得してもらうために、抱えている両手を前に出してみーちゃんに浮いてもらう。
俺が手を放すと頼んだ通りみーちゃんはぷかぷかと宙に浮いてくれた。
「浮いてる・・まさか精霊様に会えるなんて・・」
ちゃんと理解した女性に満足したのか、みーちゃんは再び俺の腕の中に戻ってきた。いや、下に降りていいんだよ?
「で、その猫もミーちゃんって名前なんだな?」
「は、はい。飼い猫のミーちゃんです。急に腕から飛び出したのでここまで追いかけてきました」
「だそうだ。みーちゃんに注意してたわけじゃないみたいだから許してあげよう?」
「わかったの。じゃあみーちゃんにもみーちゃんをだっこさせてほしいの」
うん、ややこしい。みーちゃんがインフレしとる。
俺がみーちゃんを下に降ろすと、女性はミーちゃんをみーちゃんに渡してくれた。
みーちゃんの腕の中に移ったミーちゃんは、ちーちゃんとふーちゃんが撫でても大人しくしている。
「俺は冒険者のユタカだ。この子達と旅をしてる」
「私はラミィといいます。魔導具工房で働いてます」
なるほど。だから変わったエプロンを着けてるんだな。
ん? ってことは・・
「働いてるってのは、店員じゃなく職人ってことか?」
「はい。あっちにあるリドリー工房で見習い職人をやってます」
おふぅ。ご都合主義万歳だ。




