第百四十四話 王都のギルマス
勧められたソファーに座ると、ソフィアさんはお茶の用意を始めた。
「あまりお構いなく」
「気にしないで。重要なお話みたいだし、お茶くらいあったほうがいいわ」
どこかルンルンな様子で準備を進めるソフィアさん。
ウェーブのかかったゆるふわなセミロングの金髪がご機嫌に揺れている。
年齢は二十代後半かな? そしてなかなかの巨乳だ。眼福。
どこかの裕福な家のお嬢様と言われても違和感がない見た目をしている。
「おまたせ。お口に合えばいいけど」
ソフィアさんが出してくれたのは紅茶だった。本人のイメージにピッタリな物を出してきたな。
「ありがとうございます。ではいただきます」
俺は紅茶には詳しくないが、砂糖を入れてないのに仄かな甘味を感じる美味しいお茶だ。
ティーパックの紅茶よりは確実に美味いと思う。(貧乏舌)
「それで、この紹介状を持ってきたということはカイエンさんに会ったのよね?」
「ええ、エルフの村のギルドでもらいました」
「彼は元気だった? お仕事は忙しそうでした? どんな事を話しました? どんな服を着てましたか? 相変わらず素敵な眼帯でした? 交友関係はご存知? まさか周囲に女の影なんてありませんでしたよね?」
・・あ~。
これはそういう事ですか。
このちょっとヤバそうなお姉さんはあのおっさんに惚れてると。
あれこれ聞きたくてお茶まで入れてゆっくりさせたかったのか・・
とりあえず彼女の気が済むまで答え続けるしか無いな。こっちの話はそれからじゃないと聞いてくれなさそうだ・・
三十分後。
「そういえば紹介状には精霊結晶の情報を求めているとか。精霊様も一緒にいらっしゃると書かれていますが」
よ、ようやく話が本題に入った・・
カイエンとの事はどうやらソフィアさんの片思いのようで、根掘り葉掘り質問された挙げ句あのおっさんの素敵な点をいやというほど聞かされた。
おっさん相手におっさんの美点なんて聞かせるんじゃないよ。ちみっ子達を抱っこして癒やされたい・・
「精霊達は退屈だろうから、下で会った知り合いの冒険者達に預けて昼飯を食べてますよ」
「あらそうなのね。後で会ってみたいわ。可愛らしい女の子達だって書かれててるから。まさかカイエンさんはロリコ――」
「別にそういう意味で書いたわけじゃないだろうから大丈夫だよ。どちらかと言うと俺と同じく父親目線で――」
「父親!? その子達はカイエンさんの子供だと言うの!? 相手は誰よ! ぶっ殺してやるわ!」
わー怖い。
美人なお嬢様の顔が、リアル般若に変貌している。
女って想像力・・いや妄想力豊かだよね。
「そんな事実はないし、あの子達はうちの子だ。誰にもやらん」
「あら、そうでしたのね。これは失礼を」
俺の説明で瞬時にお嬢様へと戻った。
カイエン、何でこんな奴をギルマスに推薦したんだ・・
いや待てよ。もしかしたらほっとくと自分に付きまとってくるから、ここのギルマスにして簡単に接近できないようにしたのか?
『都会に疲れた』の中にはこの人も含まれてるんじゃ・・
「で、精霊結晶の情報はあるんですか?」
「ありますよ」
・・え、マジ!?
こんなに簡単に情報が見つかるとは!
「言っておきますが、この情報は超極秘なものです。この紹介状がなければ絶対に公開はできないものです」
「それは精霊への畏敬の念とか?」
「もちろんそれもありますが、もっと別の理由があります」
それ以外の理由? だって精霊以外には関係のないものなんだし、一般の人間が知ったところで特に問題ないはずだが。
「情報を話す前に、まずは精霊様が本物なのかを確認しなければなりません。偽物でしたなんてことがあれば私も困ったことになりますし」
「じゃあとりあえず下の酒場に行きますか。ちなみに確認できる人はいるんですか?」
エルフでもいるのだろうか?
彼らがあまり村から出るイメージはないが・・
「教会の司祭様であればわかります。ご足労ですが一緒に行ってもらえますか?」
「わかりました」
なるほど。そういう人達ならちゃんと分かるのか。
魔法を見せたり浮かんで見せても、この世界じゃ魔法もスキルもあるから証明にならないので助かる。
その点地球だと簡単だったな。
まあ向こうじゃ精霊ってより、可愛らしい女の子扱いだが。
・・ん? それは俺も同じか。
それはともかく、俺達は部屋を出てちみっ子達の待つ酒場へと向かった。
昼食時という事もあり冒険者や一般の人などでそこそこ混んではいたが、トーマス達は入り口近くの席を確保していてすぐに見つけることが出来た。
「ゆーちゃんがおんなをつれてもどってきたの!」
「僕たちを置いてなにをしてたのさ!」
「・・ゆーちゃん、浮気は許さないわよ」
・・うん。ギルマスが女性な時点でこんな反応になるとは思ってた。
とりあえず手に持ってるフォークを置いて口の周りを拭きなさい。
「あらあら、本当に可愛らしい子達だわ!」
ソフィアさんはちみっ子達を見るなりシェリルのように抱きつきに行ったが、三人はさっと椅子から降りて俺の後ろに回った。
「ゆーちゃんをたぶらかすてきなの!」
「・・ゆーちゃんは渡さないわよ」
「あっちいけー!」
どうやらシェリルと違い彼女を敵認定したようだ。
ちみっ子達に嫌われてずーんと落ち込むソフィアさん。
さすがに可哀想なのでちゃんと説明しとくか。
「三人とも、この人はここのギルマスのソフィアさんだ。この人はエルフの村のギルマスのストーカーみたいな人だから大丈夫だよ」
「それならもんだいないの」
バッチリなフォローでちみっ子達は警戒を解いてくれた。
「誰がストーカーよ! 乙女の純愛じゃない!」
そういう事は年と言動を考えて言うのだな。




