第百四十三話 トーマスたちの情報
「・・そうじゃないでしょ」
「せいれいけっしょうのことをきくの!」
「何でそんな事を聞くかなぁ・・」
ちみっ子達から盛大に突っ込まれた。
ちなみに虚空の四人は俺の質問にポカンとなっている。
そんなにおかしなことを聞いたか?
「いや、絡むわけ無いよね?」
「そうだな。そんな奴はせいぜい酔っ払いくらいだろうよ。そもそもここには一般人が食事にもくるし、依頼人が来たりもする。万一そんな人達に絡んだりしたらギルドを追放されるかもしれんぞ」
つまり俺は一般の子連れだと思われたと。
確かにこんな子連れ冒険者はいないか・・
「あれ、何だろう。急にヤスに会いたくなってきた・・」
「ゆーちゃん、それはきのせいなの」
ホームシックにでもなってるのかな?
水神社はホームじゃないけど・・
「で、精霊様が言う他の聞きたいことって?」
「精霊結晶とか言ってたわよね」
「ああ。どこかで見たとか、どこにあると聞いたとか情報がほしいんだ」
彼らの冒険者のランクは知らないが、割と旅をしているようなのでワンチャンに期待したいところだ。
「昔、この前のエルフの村の北の山にあるって聞いた覚えが――」
「すまん、そこはハズレだった」
「ああ、もう行ってきたのか」
かぶせ気味の答えに苦笑いをするトーマス。
正確にはあったんだけどね・・
あれはもう仕方なしと諦めるしか無い。
「皆は何か知ってるか?」
トーマスはメンバーに尋ねるが誰も知らないようだ。
ヨセ山の事を知っていただけでもマシな方だったのだろう。
「もしかしてその情報を集めるためにここに来たのか?」
「ああ。エルフの村のギルマスに紹介状をもらったから、ここのギルマスに会いに来たんだ」
「なるほど。カイエンさんの紹介状があるなら精霊関連の話も聞けるだろうね」
カイエンさんの? あの人すごい人なのか?
眼帯をつけた大男で迫力はあったが・・
「知らないのか? カイエンさんは本来はここのギルマスになる予定だったんだ。元Aランクの冒険者でギルマスとしても有能な人だったんだ」
「それがどうしてあんな小さなギルドに?」
「本人曰く『都会に疲れたので自然豊かな場所で働きたい』って言ってエルフの村のギルドに行ったらしいよ」
現代人かよ!
戦い疲れた企業戦士みたいなことを言いやがって・・
「ここのギルマスはカイエンさんが推薦した後輩だから、紹介状があれば喜んで協力してくれるだろうさ。もちろん他のギルドでも余裕で通用すると思う」
「あの人がねぇ。そんなオーラは感じなかったが」
「よっぽどあの村での暮らしに馴染んでるんだろ。ギルマスなのに自分で受付をやったりするくらいだからな」
そういやそうだ。人手不足だとしてもギルマスは受付なんかやらないよな。
高倉さんが受付やってる姿なんか想像つかないし。
それだけあそこでの生活を満喫してるのだろう。
「邪魔して悪かったな。俺達はそっちで飯食ってくるよ」
「ああ、情報ありがとな」
そう言って別れようとすると、再びシェリルが光速でちみっ子達に抱きついた。
「もっとこの子達と一緒にいたい!」
「気持ちはわからんでもないが、迷惑だろ」
「い〜や〜よ〜!」
思いっきり駄々をこねてちみっ子達を離さないシェリル。
ちょっと桜木亭の女性職員を思い出す。
「じゃあそろそろ昼だし、シェリルが三人に昼食でも奢ってくれよ。その間に俺はギルマスのところに行ってくるから」
「よろこんでご馳走するわ!」
情報収集とはいえ、おっさんとの話し合いなんてちみっ子達には退屈だろう。
三人もそれでいいようで、シェリルと共に酒場の方へ向かった。
「重ね重ね済まない・・」
「いいさ。ちみっ子達の飯代も浮いたし」
「酒場で待ってるから話が終わったら来てくれ。ユタカの飯代は俺が出させてもらうよ」
「それは楽しみだ。じゃあ行ってくる」
やった! 昼飯代が完全に浮いたぜ!
屋台で食べた覚えはあるが、まともな飯は始めてなので楽しみだ。
俺はトーマス達と分かれて受付に向かった。
さすが王都のギルド。幅の広いカウンターで窓口が十個くらいある。
今は暇な時間だからか三つの窓口にしか受付嬢がいない。
とりあえず真正面の窓口に向かった。
「こんにちわ。ご要件をどうぞ」
「ギルマスへの面会をお願いします。ここに紹介状もあります」
「ではお預かりしますね。しばらくお待ち下さい」
俺から紹介状を預かり、受付嬢は席を立って奥の階段を登っていった。
そして数分後。
「お待たせしました。ギルマスがお会いになるそうなのでこちらへどうぞ」
そう言って受付嬢がカウンター内へ通してくれて、そのまま二階へと先導してくれる。
二階に上がって一番奥の部屋まで案内された。ドアには文字の書かれたプレートが掛かっているが、もちろん読めない。
ただプレートはリスや猫などが彫られた可愛らしいものだった。
「お客様をお連れしました」
「どうぞ〜」
受付嬢が扉をノックしてそう言うと、すぐに返事が来た――女の声で。
「ようこそ。私がギルドマスターのソフィアよ。ささ、そちらにおかけになって」
開いた扉の先にいたのは所謂パツキン美女だった。
俺が部屋に入るなり執務席から立ち上がり、ソファーを勧めてくれる。
勝手にギルマスはおっさんだと思ってた俺は、心の中でソフィアさんに謝ったのだった。




