第百四十二話 再会
さて当然俺は文字が読めないので、ちみっ子達にギルド方面に向かう停留所を探してもらう。
一応各停留所には文字が読めない人用に、簡単な地図に運行ルートが描かれてはいる。
「ここでまってればだいじょうぶなの」
「西門と東門を循環してる馬車みたいだね」
二人の言葉を聞いて地図を見てみると、王城・貴族街の南側にあるギルドを経由して東門へ。そのあとは貴族街の北側を通ってここに戻るようだ。
当然だが時刻表なんてものはない。馬車が来るのをひたすら待つだけだ。
広場の屋台からいい匂いがしてくるがまだ昼には早いし、いつ馬車が来るかわからないので大人しく待つ。
「・・来たみたいよ」
「思ったより早かったな」
こちらへと向かってくる幌なし馬車。乗客は十人ほどか。
荷台は人が乗降しやすいように低床になっていて、子供やお年寄りでも乗れるようになっている。
そしてやはり馬車はこの停留所に停まり、二人を残して他の乗客はみんな降りていった。
それを確認して俺達が乗り込む。
座席は対面式のロングシートで片側に十人くらい座れる。立ち乗りも入れれば三十人くらい乗れるのだろうか? そんなに乗ったら馬が引けないかな?
ここで乗り込むのは俺達を入れて十人ほどなので席に座っても問題ないだろう。
「他の人が乗ってきたときのために、僕はゆーちゃんのお膝の上に座るね」
そうもっともらしい理由を付けてふーちゃんが俺の膝の上に座った。
そして先を越された二人がそれを見て黙っているわけがなかった。
「じゃあみーちゃんはかたぐるまなの!」
「・・ダメよみーちゃん。そこは私が乗るの」
火花を散らす二人とは対照に、乗客たちは微笑ましい目で見ている。
さすがにちょっと恥ずかしいぞ・・
「ジャンケンでもして早く決めてくれ・・」
結局ジャンケンに勝ったちーちゃんが肩車となり、みーちゃんは俺の隣となった。
馬車は駆け足程度の速さで進んでいく。のんびりと街並みを見れるので観光に使ってもいいかもしれない。
まったりと街を眺めていると一時間ほどでギルドへと到着した。
俺達以外にも冒険者っぽい人達も数人降りた。
「王都観光には最適な乗り物だな。移動手段としてはさすがに自分で走ったほうが早いが」
「・・街の人達からすれば立派な移動手段よ。地球と比べるのは酷だわ」
もちろんそれは分かっているが、忙しない日本で生きている身としてはのんびりだと感じてしまうのだ。
この冒険者ギルドもターミナル的な場所なのか、建物の前は大きな広場になっていて各方面からの馬車が集まっている。
「じゃあ中に入るか」
冒険者ギルドは思ったよりも大きく、桜木亭と同じくらいの建物になっている。
中には酒場でも併設されているのか、こんな時間からでもご陽気な声が聞こえてきた。
「さすがにこっちのギルドだと絡んでくる奴はいるかな?」
「・・何で嬉しそうなのよ」
お約束というものは大事なんだよ。
竜宮館でのヤスなんてまだまだ甘い。
ここは本場の力を見せてもらおうではないか。
俺達(俺だけ?)は勢い込んでギルドのスイングドアを押して中に入った。
がやがやがや・・
ギルド内にいる冒険者はそこまで多くなかった。
今は昼前くらいなので、活動している連中は外に出ているのだろう。
カウンター側にいる冒険者よりも、酒場で飲んだくれている冒険者のほうが多いくらいだ。
「・・絡んでこないな」
皆一度はこちらを見るのだが、すぐに興味を無くすか、逆にちみっ子達に興味を持ってデレっとした顔で見てくるかだ。
後者はある意味絡んでくるやつよりも危ない。
「みーちゃんとちーちゃんだー!」
突然どこかで聞いたことがあるような無いような声が響き渡った。
同時にみーちゃんとちーちゃんに赤髪の女がガバッと抱きついた。
この女は確か・・
「あぁ〜、みーちゃんとちーちゃん可愛いよぉ。あ、もう一人いる! この子も可愛い!」
ついにはふーちゃんまでもが女に捕まってしまった。
ちみっ子達をぎゅっと抱きしめて頬ずりしている。
そうだ、エルフの村のギルドにいた・・確か・・
「シェリル! その辺にしとけ!」
シェリルと呼ばれた女の後から黒髪の男と更に二人の男たちが現れた。
そうだ『虚空』とかいうパーティーの連中だ。
エルフの村のギルドであった連中で、確か王都まで行くって言ってたな。
「久しぶりだなユタカ」
「トーマスだったよな、おひさ」
リーダーのトーマスがシェリルの首根っこを掴んでこちらに来た。
みーちゃんとちーちゃんはシェリルの事を覚えていたために問題なかったが、初対面のふーちゃんはいきなり抱きつかれて固まってしまっている。
「ふーちゃん、この人達はふーちゃんと出会う直前にエルフの村で会った『虚空』っていうパーティーだよ」
「僕びっくりしたよ! 思わず魔法を撃ちそうになったもん」
あぶなっ!
ふーちゃんが思いとどまってくれてよかった・・
「ユタカ達も王都に来てたんだな」
「今日到着したところだよ。初めての王都だからお上りさん状態だ」
「デカい街だもんな。それに自由に乗れる馬車とか変わったものも多いから色々目移りするだろうさ」
他にも何か面白いものがあるのだろうか? 興味深いがまずは彼らに聞いておきたい。
「なあちょっと聞きたいんだが・・」
俺の真剣な面持ちに虚空のメンバーがじっとこちらを見る。
「何でここの連中は誰も俺達に絡んでこないんだ?」




