第百三十八話 手に入れた別の物
「ちなみに君は他の精霊結晶の在り処は知らない?」
一応ワンチャンにかけて少年精霊に聞いてみる。
大精霊になる精霊なら他の精霊結晶も知っているかもしれない。
「ごめんなさい。僕が知ってるのはここだけなんです」
さすがにそんなに甘くなかったか。
何なら一番有力な情報源だったのだが・・
「仕方ない。となると俺達はエルフの村でもらった紹介状を頼りに、情報の集まりそうな王都のギルドに行ってみるか」
「・・そうね。今日から車で移動を始めれば、明日には到着できるかもしれないわ」
確かにギルマスのカイエンに描いてもらった地図を参考に、道無き道を突っ走ればそれも可能かもしれない。
どうかパンクしないでください・・
「わしは別行動で古い知り合いを当ってみよう。というわけでこれを渡しておく」
スーさんがポケットから摺りガラスのような半透明の板を取り出して俺に渡してきた。
手に取るとプラスチックのような感じがする。
「それはわしの鱗じゃよ。それを持っていればお前さんのいる場所を辿ることが出来る」
スーさん専用の発信機か。便利だな。
そうするとこれはアイテムボックスにしまわない方がいいだろう。スーさんと同じくズボンのポケットに突っ込んでおく。
「じゃあ出発――うわっ!」
この後の行動が決まったので出発しようとすると、突然洞窟内に光が溢れた。
目を焼くような閃光ではなく優しい光だ。
「しんかがおわったの。だいせいれいさまになるの」
みーちゃんの言葉と共に光は収まり、先ほど少年精霊がいた場所には金髪の優しそうな顔をしたイケメン男性が立っていた。
精霊は美男美女であるルールでもあるのか?
まあエルフにはがっかりだったからバランスはいい(?)のかもしれない。
「皆さんありがとうございました。無事に大精霊へと至ることが出来ました」
「お礼を言われてもな・・特に何もしてないし」
俺達はここの精霊結晶を使われたので、次の行動を決めていただけだ。
こう言っては何だが、君の事はほぼ蚊帳の外だったよ・・
「それでも僕から精霊結晶を奪うことをせずに、そちらの世界の精霊のために次の行動を考えていたのですよね」
まあ事実ではあるが随分好意的に考えてくれるものだ。
あと俺が精霊結晶を奪う極悪人にでも見えるのか? そんな奴は冥府にしか行けないぞ。
「そんなに気にしないでくれ。それよりも大精霊への進化おめでとう」
「ありがとうござます。ではさっそく大精霊としての最初の仕事をしたいと思います」
彼はそう言うと俺の方に歩み寄ってくる。
真正面まで来ると、やおら俺の胸に右手を添えた。
そんな趣味はないが、優しそうなイケメンにそんなことをされてはドキドキしてしまう。
「びーえるなの!」
「・・不潔よゆーちゃん」
「薄い本にしなくちゃ!」
ちみっ子共、勝手なことを言うんじゃない。
『あーっ!』な展開は許容出来ません。
「異世界の同胞のために旅をするあなたに祝福を」
彼のその言葉と同時に触れていた右手から何かが俺の中に流れ込んできた。
それは俺の頭にも入ってきて様々な情報を書き込んでいく。
この感覚は前にも・・もしかしてスキルか?
「きっとあなたにとって有用なスキルが生まれたはずです。どうか役立ててください」
しばらくして変調が収まると、俺の中に新たなスキルが存在するのを感じた。
「『強化』のスキルか。人だけでなく物にも効果があるみたいだから万能性はありそうだ」
俺は試しにアイテムボックスからマグカップを取り出して強化してみた。
それを洞窟の壁にめがけて全力で叩き付ける。
ガンッ!
到底マグカップがぶつかったものでは無い音がして、跳ね返ったカップはそのまま地面に転がった。
壁に当たった瞬間に岩の方が少し砕けたのさえ確認できた。
マグカップを拾ってみるがもちろん傷一つない。
さらには自分自身に強化を発動してみた。
そしてマグカップ同様に洞窟の壁を全力で殴った。
ガオォォン!
カイザーナックルを装備していないにもかかわらず、手が痛くなるどころか壁に中華鍋くらいのクレーターが出来てしまった。
いやいや、強化凄すぎじゃない?
「ゆーちゃん、かんつうもきいてるの」
「あ、そうか」
貫通ダメージのスキル。あれと重複したからこの威力になったのか。
これは良スキルだ。手が痛くならなかったことも考えれば、攻防に役立つのは間違いない。
ただし。
貫通ダメージ同様、強力ではあるが地味なスキルだ・・
何かこう、カッコいい必殺技的なスキルも欲しいところである。
「ありがとう。素晴らしいスキルだ」
「どうか精霊の事をお願いします」
精霊結晶探しに役立つかわからないが、もらった以上は使いこなして見せよう。
そう思っていたら、この後すぐに役立つ機会が来たのだった。




