第百三十六話 スーさん来るってよ
「そのお主の世界に通じる遺跡はわしも入れるのか?」
質問攻めにあった挙げ句、スーさんは最後にそう聞いてきた。
あんた地球に興味持ち過ぎだろう・・
「わからないな。他の人達にあの場所がどう見えてるかとか、中に入れるのかとか試してないからな」
そうは言ったものの恐らくは入れないようになってるか、見えないようになってるだろう。
そうでなきゃこっちの世界の人達が地球に迷い込んでしまう。
さらにはうちの普通じゃないダンジョンを突破されれば、たどり着くのは我が家だ。マジ困ります。
「ではこうしよう。ここに精霊結晶が無かった場合、その後もお主らに協力して精霊結晶を探そう。代わりにお主らが『チキュウ』に帰る時にわしも一緒に行けるか試させてくれ」
「・・もし通れた場合はどうするんだ?」
地球でドラゴン無双でもする気か?
自衛隊VSスノードラゴンとか見たくないぞ。
「心配しなさんな、ちょっと観光させてくれればいい。常にお主の目の届くところにいるし、龍の姿にもならんよ」
とはいえ滞在費用や観光費は俺持ちだろ?
まあ今はじいさん一人うちに住まわせても特に問題はないが・・
「そもそもこの山を離れてもいいのか? スーさんはこの山の霊獣なんだろ?」
「大丈夫じゃよ。別にこの山にいなければならんルールは無い。気まぐれに旅に出ることもあるぞ」
本当にただここに住んでるだけなのか・・
霊山だの霊獣だの崇められてても、結局それは人の都合であってスーさんには関係ないようだ。
「まあいいか。その条件で行こう。まあ何にせよまずはここの精霊結晶があるかどうかだ」
「うむ。ではその『くるま』に乗ろうぞ」
スーさんはそう言ってスキップでもしそうな勢いでハイエースに近寄った。
地球のものに興味津々なようだ。
せっかくなので助手席がいいだろうと思いドアを開けてやった。
「結構狭いのう。だが馬車よりは快適そうじゃ」
「広いほうがいいなら後ろでもいいぞ。ベッドに座ってもらうことになるが」
「いや、ここの方が前がよく見えていい」
文句を言う割に助手席が気に入ったようだ。
それを聞いてたちみっ子達はがっかりしていたが。
スーさんをシートに座らせてドアを閉めてから、俺達も車に乗り込んだ。
「おお、すごい! 動いておる!」
ゆっくりと車を動かしただけでこの騒ぎだ。カーブを曲がったりブレーキを踏んだりするたびにいちいち大はしゃぎをする。
遊園地に来た子供のような反応だ。
「しばらくは走り続けていいのか?」
「うむ。洞窟の場所は山の反対側の方にある。この道に沿って進むとこの速さなら大体三時間ほどかの」
さすがに時間がかかるな。
それでも馬車よりはよっぽど早く着くとスーさんは言う。
まあ馬車が通れるような勾配で道が作られているとはいえ、馬には負担になるだろうから休み休み進む必要があるものな。
その点この車は馬車より早く、休憩もなく進めるチート様だ。
ただしその分酔いやすくなるが・・
「それじゃ音楽でも聞きながら行きますか」
そして再生されて車から流れ始めた音楽に再び驚くスーさんだった。
「このあたりで止めてくれ」
「あいよ」
あれからのんびり山道を進み、昼前にはこの場所に着いた。
みんなで車を降り、スーさんは山林の奥を指さした。
「あの奥、ここからなら見えるじゃろ。あの洞窟がそうじゃ」
スーさんが指さした先、およそ20m先か。確かに洞窟がある。
あそこならここを通った冒険者がたまたま見つけて、あの洞窟に入ったとしてもおかしくない。
昔の冒険者があそこで精霊結晶を見つけたのもそんな流れだったのではないだろうか。
とはいえ、俺達ではスーさんがいなければ簡単には見つけられなかっただろう。下手すれば期限いっぱい使っていたかもしれない。スーさんに出会えたのはラッキーだったのだ。
「ここで見つかればとても助かるんだがな・・」
「どうじゃろうな。どちらであってもおかしくはないしな」
とにかく中に入って確認しよう。
一旦車を収納して、俺達は洞窟に向かって木々の間を縫って歩く。
道があるわけでもないので草もぼうぼうに生えている。
ちみっ子達には歩きにくいかと肩車と抱っこで進もうかとも思ったが、俺にとっても足元が不安定なので宙を浮かんでついてきてもらっている。
とはいえ、たかだか20m程度。強引に突っ切っていけばすぐに着いた。
ちなみにスーさんはちゃっかり俺の後ろを歩いていた・・
「なんか体にいろいろ付いて・・」
強引に歩いた代償に、下半身を中心に植物や虫なんかが付いてきた。
異世界産だからか見たことない虫がいて結構気持ち悪い・・
「僕が風で吹き飛ばしてあげるね! それっ!」
そんな俺の姿を見たふーちゃんが、俺に向かって風を起こしてくれるそうだが・・
嫌な予感がしたので、とっさに腰を落として前傾姿勢をとる。
ひゅごぉぉぉぉっ!
前触れもなく強烈な風が俺自身を吹き飛ばしに来た。
確かに体に付いていたものは飛んで行くだろうが、俺自身もとばばばばばば――
「ふーちゃん、ゆーちゃんのおかおがひどいことになってるの!」
「・・風が強すぎよ。バラエティー番組の巨大扇風機じゃないんだから」
「そ、そうだね。もう充分かな」
どうやら威力をミスったようで、やっちまった顔をしているふーちゃん。
ちなみにスーさんは腹を抱えて大爆笑をしている。
ふーちゃん・・覚えときなさい。




