第百三十二話 様子見登山
ヨセ山の登山道は隣国につながっているためか、しっかりと整備されたものだった。
スノードラゴンが山を守っているらしいが、整備したということは許可が出たということだろうか?
「まだ結構明るいし、小一時間くらい山を見て回るか」
俺は登山口を塞がないように、ハイエースを一度アイテムボックスにしまった。
登山道は結構道幅がある。馬車が通ったりもするのだろうか? それなら車で登山できて助かるのだが。
まあ進めるだけ進んで、通れなくなったらアイテムボックスにしまえばいいか。ほんと便利だ。
「おさんぽなの。おなかをすかせるの」
「いっぱい動いて美味しく夕飯を食べよう!」
君たち肩車かダイフクに乗ってるだけじゃん・・
魔物が出たときも魔法を撃って終わりだし。
「・・ちなみにこの山には魔物はいないわよ。スノードラゴンのテリトリーに近づくなんて愚かな行為だもの」
そうなると本当にただの登山になりそうだな。
人にも友好的なドラゴンで良かった。
「それじゃあ行きますか」
俺がそう言うと問答無用で肩車のポジション争いが始まった。
お腹すかせるんじゃなかったの?
「じゃあ魔物も出ないことだし、残りの二人は抱っこするよ」
「みーちゃんだっこがいいの!」
「僕も!」
「・・もちろん私もよ」
肩車ポジで争ってたくせに・・
みーちゃん曰く『だっこのほうがちゃんとだきつけるの!』だそうだ。
結局ジャンケンして負けたみーちゃんが肩車になったが。
俺は左右の前腕にふーちゃんとちーちゃんを座らせるように抱っこして山道を登り始めた。みんな羽根のように軽いので余裕で抱えてられる。
「僕は抱っこのほうがいいけど、車で進めばよかったんじゃ?」
「運転疲れだ。少しは体を動かしたい」
ほとんど景色が変わらない道をひたすら走ってたので、眠気もそうだが疲れてしまった。
高速道路を走るときだってサービスエリアなんかで適度に休むものだ。人間そんなに集中力は続かないさ。
ちみっ子三人を装備したフルアーマーユタカはのんびりと登山道を歩いていく。
「この前は湖でのキャンプをしたけど、今度は渓流のキャンプ場に行ってみるか」
山でのキャンプも良いものだ。これから紅葉のシーズンだし、とてもいいタイミングだ。
「・・紅葉が終わるまでに一連のゴタゴタが片付いていればいいわね」
「ソウデスネ・・」
そうだった。この旅が長期戦になったら紅葉なんて終わってしまう可能性があるんだ。
冬キャンもいいものだが、出来れば山が色づく秋にも行きたい。
「しかし魔物も出ないし、道は整備されてるしで高尾山でも登ってるみたいだな。こんなところに精霊結晶が出来る場所があるのか?」
「・・洞窟なんかを通って山の内部に進めば、魔力が濃い場所があったりするわ」
「大きなものには大きな力が宿るものだよ。山なんて大きなものならなおの事、精霊結晶が発生しやすいよ」
「ならいろんな山を虱潰しに探すほうがいいのか?」
各山にそんな場所があるのなら、山だけを狙ったほうがいい気がする。
「・・確かに山は大きな力を持っているけど、その力の強い場所までの道がない場合は自力で掘っていくことになるのよ」
「あ、それは厳しいです」
そんな時間もなければ労力もかけられない。
ここみたいにすでに魔力溜まりまで繋がってる山だけでお願いします。
「それに魔力の強い場所は山に限らずに龍脈上であれば発生する可能性があるよ」
龍脈か。風水なんかで聞いたりするが、詳しい事はわからない。
まあ魔力や力が強く流れている場所的に思っておけばいいだろう。
「結局地道に情報収集するのが一番なのか・・」
「いそがばまわれなの!」
遠回りってあんまり好きではないんだがな・・
やはり男ならまっすぐ最短距離を突っ走るべきだろう。
・・脳筋と言うなかれ。
「しかしもっと岩山みたいなところかと思ったが、しっかりとした山林だな」
「・・確かにこれだと村長さんの言ってた洞窟が見つけにくいわね」
周りを見ると沢山の木々に覆われていて10m先も確認できない。
これでは洞窟があっても見逃してしまうかもしれないな。
「ゆーちゃん、あそこでおじいちゃんがねてるの」
「は?」
木々の奥を見てた視線をみーちゃんが指差す道の先に移すと、100mほど離れた場所に白髪の老人が寝て・・いや、倒れてるのでは?
とりあえず急いで駆け寄ってみると、やはり道の脇で仰向けに倒れているじいさんがいた。
「じいさん、大丈夫か!」
俺は肩をゆすり、大きめの声で意識があるか確認をする。
するとゆっくりと老人の目が開きこちらを見た。目の焦点は合っているようだ。
「・・おお、すまんな。もしかして倒れてると思ったか? ちょっと眠っておっただけなんじゃよ」
「もうそのまま永眠しちまえ」
みーちゃんが言ってたように本当に寝ていただけらしい。
紛らわしいにもほどがある。
「まあ腹が減ってるんで、半分は倒れてるようなものだがな」
「つまり腹が減って動けないから寝ていたと?」
やれやれだ。
仕方ないのでじいさんに食べさせる食事を用意することにした。




