第百二十九話 紹介状
「じゃあ改めてこいつが買い取り代金な」
カイエンがトレーに買取金を乗せて出してきた。
金貨四枚・銀貨が三枚。それと前回見なかった硬貨がある。
「素材、肉の買い取りから解体費用を引いて金貨四枚、小金貨五枚、銀貨三枚だ」
確か金貨が十万円、銀貨は千円の価値があった。つまりこの小金貨は一万円になると思うが・・
前回は銀貨で十二枚出してきた。何故小金貨を出さなかったのだろう?
「そういや前回小金貨じゃなく銀貨で十二枚出してきたけど、あれは何でだ?」
するとカイエンは頭をポリポリ掻きながら気まずそうに話しだした。
「いやな、ここのギルドはあんまり依頼や買い取りとか金の動く仕事がないんだよ。あっても銀貨程度が動くだけでな。あの時はちょうど小金貨を切らしてて、でも両替の手数料ももったいないから銀貨で払ってたんだ」
どんだけ暇なギルドだよ・・
まあとりあえずこれで約四十五万円分の資金が出来た。
物価が日本とは違うだろうが、当面の資金としては充分だろう。
俺は買取り金をアイテムボックスにしまい、そのまま情報収集を始めた。
「なあ、精霊結晶について何か情報はないか?」
「何でそんなもんを――いやお前さん達ならおかしくもないか」
カイエンは疑問に思ったみたいだが、ちみっ子達を見て納得したようだ。
まあ確かに触れることも出来ない精霊結晶の情報を求める奴なんて普通いないものな。
「俺は精霊結晶については何も聞いたことはないな。ただ最近、お前さんと同じく精霊結晶を探してる奴がいるとギルドの連絡で回ってきている」
「他にも探してるやつが?」
何のためにだ? 精霊以外には必要ないものだろうに。
まさか精霊自身が必要になって情報を求めてるとかか?
「基本的に精霊に関する情報はどこのギルドでも流すことはない。だから聞きに来た奴には情報は流れてない。エルフたちほどの信仰心はないが、それでも敬うべき存在ではあるからな」
「ん? じゃあ何で俺には話したんだ?」
「精霊様を三人も連れているんだ。どう考えてもお前さんではなく精霊様のために情報を集めてるんだろ?」
確かに精霊様のためなのは間違ってはいない。ただしこの三人ではないが。
しかしもしこの世界の精霊も精霊結晶を探しているとしたら、ちょっと困ったことになるかもだな。
かち合った場合は、出来れば穏便に譲ってもらいたいものだが・・
「もしほかのせいれいがいたら、せんそうなの!」
「・・弱肉強食ね」
「幻の左をお見舞いするよ!」
なぜ誰一人話し合いという言葉が出てこない?
精霊の世界は殺伐としてらっしゃる・・
「ああそうだ、ちょっと待ってな」
カイエンはそう言うと別のカウンターに移動し、椅子に座って何か作業を始めた。
暇だったのでちみっ子達と昼に何を食べるか話してると、
五分ほどしてカイエンがこちらに戻ってきた。
「こいつを持っていきな。俺の紹介状だ」
「紹介状?」
「他のギルドじゃお嬢ちゃん達が精霊様だってわからないだろうからな。こいつを見せればそこのギルマスが精霊結晶の情報を持っていたら教えてくれるさ」
なるほど。これはありがたい。
こいつがなければギルドでの情報収集が難航しただろう。
「ありがとう。助かるよ」
「久しぶりにギルマスらしい仕事をしたよ」
「いつもカウンターで暇そうにしてるだけですもんね」
職員のお姉さんにそう言われ、カイエンはケラケラ笑った。
本当に平和なギルドだな・・
ギルドを後にして俺達は村の広場へと向かった。
とりあえずこの後の動きについて相談するためだ。
「まずはおひるごはんなの!」
「ああ、うん、そうだね」
間違いではないが、そうじゃないんだ。
「基本的には二択。ヨセ山の精霊結晶を確認しに行くか、紹介状をもらったし他の街のギルドに行くかだな」
「・・情報が集まりそうなギルドだと王都になるわね」
「ヨセ山が北で、王都は東になるね」
はっきり言ってヨセ山は可能性が薄い。三十年前の情報ではもう無くなっていると思う。
が、確率はゼロではない。少なくとも三十年前には間違いなくあったわけだ。今でもまだ残っているかもしれない。
一方で王都に行けばここよりもたくさんの情報が手に入る可能性がある。
あと単純に王都を見てみたい。
「ワンチャンに賭けてヨセ山かなぁ。無かったとしても候補地を一つ潰せるしな」
今後どれだけの情報が手に入るかわからないが、少なくともヨセ山は除外できる。
何より後回しにして実はヨセ山にありましたなんてパターンは回避したい。
「じゃあはいきんぐにいくの!」
そんなほのぼのとした行程ならいいんだけどね。
危険な登山にならなければいいが・・
とりあえずまずは・・お昼ご飯だな。
広場でちょうどいいしここで食べていくとしよう。




