第百二十六話 ドライフルーツ
「いやいやスノードラゴンって! そんなヤバそうなのがいたら、おちおち山登りなんか出来ないじゃん!」
ドラゴンなんて地球のダンジョンじゃ未だに出てきてませんが!?
そりゃ戦ったことないからわからないけどそれでもドラゴンよ? 勝てる気しないぞ。
「大丈夫ですよ、山を荒らしたりしなければ襲ってきたりしませんから。それに精霊様が一緒なら霊獣が襲ってくることはまずありえないでしょう」
そうなの?
俺はちみっ子達の方をチラリと見てみると、三人ともに頷いてきた。
「せいれいとれいじゅうはなかよしなの」
「・・霊獣はその場所の守護者のような存在よ。こちらから攻撃したり、その場所を荒らしたりしなければ何もしてこないわ」
「精霊は霊獣に頼まれてその場所の魔力のコントロールを手伝ったりするから、仲がいいんだよ」
なるほど。俺が下手に手出ししなければいいわけか。
それならば平和に調査できそうだ。
「わかりました。色々お話を聞かせていただいてありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ精霊様にお会い出来たことは僥倖でした」
俺たちは席を立ち玄関へ向かう。村長夫妻も一緒に立ち上がり後ろについてくる。お見送りをしてくれるようだ。
・・ちなみに、ちみっ子達はしっかりとお茶もドライフルーツも食べきりました。
「いつでもいらしてください。皆さんなら大歓迎ですよ。何ならこのまま村に定住していただいても」
「ありがとうござます。定住に関しては気が向いたらという事で・・」
お礼を言いつつ、やんわりと定住することを拒否する。
その間に夫人がちみっこ達にお土産に沢山のドライフルーツを渡していた。
ちみっ子達が食べた分と合わせて、この家にあったドライフルーツを全部くれたのでは・・?
まあお礼を言って受け取るちみっ子達を見て、夫人の顔がゆるゆるになっているので気にしない事にした。
俺たちは村長夫妻に別れを告げて、そのまま冒険者ギルドに向かう。
「たくさんお土産もらったな」
「・・自然な甘さが美味しいわ」
「てんかぶつがはいってないの」
確かに地球の売り物のドライフルーツは添加物が入っている。
自分の家で作ったりしなければ添加物なしの物は手に入らないだろう。
「みーちゃん、一つもらえるか?」
「どうぞなの」
せっかくなので味見してみたくなった。
みーちゃんが差し出してくれた巾着から一つ取り出す。これはミカンだろうか?
天日干しにしたであろうミカンは干された分甘みが凝縮されている。
しかし程よく水分が残っていて、ミカン本来のジューシーさも感じられた。
「美味しいな。確かにミカンの味がしっかりして、それ以外の味はしないな」
「・・地球の食べ物は美味しいけど、逆にこういう自然なものがあまりないわよね」
それを今の地球に求めるのは酷かもしれない。
増えすぎた人口を養うためには、大量生産・長期保存が必要になる。
野菜や果物には農薬が使われ、肉や養殖の魚には抗生物質が投与される。
さらには料理をする際に使う調味料には添加物が入っているのだ。
もちろんこれが悪いわけではない。
国は長年かけて人体への影響が少ないように研究を続けているし、食品メーカーは美味しくなるように努力しているんだ。
それを否定するなら全て自給自足でやっていくしかないし、それをしない者が否定をしてはいけない。
俺達がするべきは生産者さん達や食品メーカーさん達に感謝して、美味しくご飯を頂くことだ。
「今度うちでもドライフルーツを作ってみるかな。そんな難しいものでもないだろうし」
「みーちゃん、いちごがいいの!」
「・・柿が食べたいわね」
「僕はパイナップルがいい!」
そうだね、いろいろ試して・・柿のドライフルーツって干し柿になるんじゃ?
あと僕レーズンは苦手です。ぶどうは好きなんだけどね‥
ぐだぐだ話しているうちに俺達は冒険者ギルドの前に着いた。
「さすがにこの前の連中はいないよな」
「この前? 僕に合う前の事?」
そう、確か『虚空』とかいうパーティーだったか。
前回は王都に向かっている最中とか言ってたから、また別の場所に移動しているだろう。
「まあいたらいたで情報を聞きやすい連中だから助かるがな」
さあ今回は誰かいるかちょっとワクワクしながら両開きの扉を開けた。
さっと中を見回すとカウンター内のギルド職員以外には、何やらギターのような弦楽器を持った若い男が一人だけだった。
これはあれか、吟遊詩人って奴だろうか?
神様だったり、パーティーに入れたら中々抜けないあいつか?
「よお兄ちゃん、久しぶりだな」
「ん? 俺の事を憶えてるのか?」
「まあ兄ちゃんというよりはそっちの精霊様だが・・おい、増えてねぇか!?」
カウンターの中から声をかけてきたのは、眼帯の大男のギルマス、カイエンだったか。
あとそのくだりは門番のおっさんとやってきたよ。
「あの後いろいろあったのさ。とりあえず魔物の買取りを頼むよ」
「今日も大量か?」
「多分十五匹ほど持ってると思う」
「『ドリー、大口だ出てこい!』兄ちゃんしばらく時間もらうがいいか? さすがにうちみたいな弱小ギルドには俺とドリーの二人しか解体できる奴がいないからな」
それは仕方ないことだ。
前回同様、俺は一匹ずつ台の上に出してギルマスとドリーの二人で奥へと運んで行った。
お仕事頑張ってくれ。




