第百八話 お昼寝
「おいしかったの!」
「確かにとてもいい香りのソバだったな」
昼食のソバを堪能した後、俺たちはSAを観光がてら散歩している。
みんなで自分の食べたソバの感想を話しながら売店を見て周る。
「・・もう少し後の季節の方が美味しいのよね? また食べに来たいわ」
「僕も! あのシャモっていうのがすごい美味しかったよ!」
ちみっこ達にはソバでは物足りないかとも思ったが、みんな満足してくれたようで何よりだ。
ここのSAは観光客が多いわけでもなく、平日なのもあってのんびりした空気が流れている。
夏の暑さが残る季節だがこの辺りは都心ほど暑くもなく、空気も気持ちいい。
そして食後なのもあり――
「何だか眠くなってきちゃった・・」
「みーちゃんもねむいの・・」
「・・お昼寝の誘惑に負けそうだわ・・」
ちみっこ達は陥落寸前である。
まあ俺も眠気に襲われてるので仮眠していこうとは思う。
てなわけで、みんなでお昼寝をするために車に戻ってきたが・・
「うわ、あっつ・・」
いくらこのあたりの気温が優しめとはいえまだ暑い季節。
車内はお昼寝出来るような状態ではない。
一応フロントガラスにはアルミシートを張って各窓はカーテンを閉めておいたが、それでも寝るには厳しい。
「仕方ない。エンジンかけて冷房を入れるか」
寝てる間中エアコンをかけっぱなしにするとバッテリーが怖いが、さすがにこのままではな・・
俺はエンジンをかけるべく運転席に乗り込もうとするが、そこでみーちゃんの声が響いた。
「ゆーちゃんまつの! ここはみーちゃんとふーちゃんにまかせるの!」
自信満々に腕を組んでふわふわ浮いているみーちゃん。しかしその隣には( ゜д゜)ポカーンな顔をしているふーちゃんがいる。この子は突然名前を呼ばれて訳が分からないようだが・・?
「みーちゃんのこおりまほうと、ふーちゃんのかぜまほうですずしくするの!」
「・・ああ、なるほど! そういうことなら僕たちに任せて!」
みーちゃんの説明にようやく合点がいったふーちゃん。
てか、そんなエアコン業界泣かせなことが出来るのか。
「まずは僕が弱めの風魔法を使って・・」
ふーちゃんが車内で風魔法を起こすと、それだけで熱い空気が外に押し出されていく。
車内の物が飛ばないように調整してくれてるので、風速は扇風機くらいか。
「そしてみーちゃんのこおりまほうなの!」
こんどはみーちゃんが車内にこぶし大の氷を数個浮かばせる。
すると途端に車内から涼しい風が吹いてきた。
「・・今のうちに乗り込んでドアを閉めましょう」
ちーちゃんの言葉に従い、俺たちは来た時と同じ席に乗り込んだ。
ドアを閉めた後はふーちゃんが風速を微風くらいにしてくれたのでとても快適な気温になっている。
「でもこれ、みんながお昼寝しちゃったら魔法が切れないか?」
「僕もみーちゃんもお昼寝してる間くらいは大丈夫。ずっと涼しいままを維持できるよ」
そう言うことであれば二人に感謝して仮眠をとらせてもらおう。
俺は自分の席とふーちゃんの座る助手席のシートを倒して寝やすいようにする。
後部座席は倒せないが、みーちゃんとちーちゃんが横になるくらいの長さはある。
「じゃあ二時間くらいしたら起きて出発しよう」
「・・わかったわ」
「おやすみなの」
「おやすみなさーい」
優雅なシエスタの始まりだ。
・・そして寝過ごしました。
「目覚ましかけとくんだった・・」
「いっぱいねたの!」
そうだね。仮眠てかマジ寝だったよ。
時刻は午後五時。夕焼け小焼けの放送で目が覚めました。
「まあ急ぐ旅でもないからいいけどさ」
「・・お昼を食べて、寝て、起きたら晩御飯がもうすぐ」
「アカン、それはダメ人間臭がする」
ちーちゃんの言葉にハッとして考えを正す。
のんびりした旅と堕落した生活はしっかり区切らなければ・・
「ここから『水神社』までは約四時間か・・急がないとな」
九時くらいに『水神社』に着いたとしても、向こうのギルマスが帰ってしまっている可能性は高い。
高倉さんがギルマスの宮本さんに連絡しておくとは言ってたが、到着日時までは伝えてないだろう。
場合によっては挨拶は明日に回すことにしよう。
「じゃあ出発するぞ」
「ごーごーなの!」
爆睡したおかげで目はがっつり覚めている。
夕飯も向こうに着くまでは我慢出来るだろう。
なのでここからは少しスピードアップして走らせることにした。
「ご飯は後回しになるけど喉が乾いたら言ってな。途中でどこかに寄るから」
「・・わかったわ。でもあまり気にしなくていいから、焦らず運転してね」
はい。ちみっこ達を乗せてるのだから無茶な運転はしません。
無論普段もそんな運転しないけどね。
「はやくおいしいおさかなをたべたいの」
「僕も貝や魚をバーベキューで食べてみたい!」
確かにホタテやサザエや牡蠣なんかを網焼きで食べるのはたまらん!
脂ののったサンマやサバなども酒が進むよな。
美味い魚介でビールや日本酒を飲む自分を想像しながら、俺は車を宮城に向けて走らせていった。




