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我が家の地下にレアダンジョンができたんですが・・  作者: エクスボーン


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第百五話 高倉さんからのお願い

 さて、そうと決まれば今のうちに料理をたくさん仕込んでおこう。

 『水神社』に長期間潜るかどうかはまだわからないが、うちには使いやすいキッチンがあるのだからジャンジャン作っておくにかぎる。


「てなわけで何を作るか考えよー!」

「まめだいふくもわすれずになの!」


 確かにそうだ。『うさぎや』のおかみさんに連絡して大量に作っておいてもらおう。

 何日行くかはわからないが、四人分だし100個くらいは必要だろうか?

 しばらく旅に(出張?旅行?)行くわけだし、一応挨拶もしておこう。


「さて何を作るかな? カレーばかりじゃ飽きるし、いろいろと作っておきたいが・・」

「じゃあ、はんばーぐなの!」

「・・グラタンも欲しいわ」

「えっとね・・僕はおいしいもの!」


 ふーちゃんはまだ他の二人ほど色々食べてはいないからなぁ。

 いろいろ作って食べさせてあげたい。


「ネットで何を作るか調べてみるか」


 『ガーデン』で手に入れた肉もたくさんあるし、バーベキュー以外の使い方も調べよう。

 今ある肉は(ミノ)(オーク)(コカ)(ブラックシープ)の四種類だ。

 ・・前三つはともかく羊料理なんてジンギスカンくらいしか思いつかないな。


「まず牛は牛丼・しぐれ煮・すき焼きなんかか。あ、ペッパーバターライスもいいな」


 鉄板の上でライスと薄切りの牛肉とコーンや万能ねぎを炒めて混ぜ合わせ、バターと焼き肉のたれで味付けをするやつ。

 高校時代にはたまに店で食べてたけど、そんなに難しくもないだろうし自作できるだろう。


「豚は角煮、とんかつ、ホイコーローもいいな。あとは蒸し豚も作るか。これは鳥でもやれるしな」

「しょうがやきがせいぎなの!」


 正義かどうかはともかく生姜焼きも大事だな。


「鳥は唐揚げと唐揚げと唐揚げと」

「・・ゆーちゃん、唐揚げしか言ってないわよ」


 おっと。唐揚げが好きすぎて暴走したあげ。


「油淋鶏にチキン南蛮にとり天・・」

「けっきょくあげものばっかりなの」


 おや? そんなつもりはなかったが、確かにみーちゃんの言うとおりだ。

 それ以外も提案しなければ・・


「それなら棒棒鶏、ハニーチキン、照り焼きに旨煮でどうだー!」


 ・・もちろんすべてを作るわけじゃないぞ? さすがに時間が足らなすぎる。

 それにサラダや汁物なんかも作らないと、肉ばかりではちみっこたちの栄養面がひどいことになってしまう。

 ちゃんとバランスのいい献立を考えなければな。


「問題はブラックシープだな」

「ただやくだけでもおいしかったの」

「・・思ったよりも癖もなくて食べやすかった」


 ジンギスカンはまだやってないが、試食がてら焼いて食べてみたら、ラムよりも癖がなくとても食べやすかった。それでいてしかっりとした肉の旨味もあった。

 しかし羊の料理って何があるのか?

 俺はスマホを操作して料理を検索してみた。


「ああ、ラムチョップがあったか。いや、ドロップした肉には骨がついてないけどラムチョップになるのか?」


 まあ味付けの参考になればいいか。

 後は香草パン粉焼きなどもあるが、基本的には他の肉の代わりに羊肉を使ってみればいいようだ。

 これだけ癖が少なければ、たいていの料理には使えるだろう。


「さて、ここからつくる物を絞っていかないとな」

「え? ぜんぶつくればいいの」


 そんな殺生なことを言ってくる青髪のちみっこ。

 消費者(たべるひと)はもうちょっと生産者(つくるひと)の事を考えてくださいな。


「・・煮込むものならその間に作業が出来ていいんじゃないかしら?」

「いっぱい作るなら簡単な物のほうがいいと思うよ」

「確かにそうだな。手間のかかる料理はここで食べるときに作ればいいか」


 揚げ物なら工程がまとめられて楽だな。あとはちーちゃんの言った煮物と、簡単に作れる炒め物かな。

 よし、そうと決まれば買い出しだ。


「それじゃ買い物に行くぞ。今日は一日料理デーだ」

「ゆーちゃん、僕お菓子も欲しいの」

「そうだな。豆大福以外にもいろいろ買っておこうか」


 お菓子OKが出て喜ぶちみっこたち。

 気を付けないと買い物かご一杯にお菓子を詰め込みそうだな・・



 車で買い物に出かけた俺たちだが、ついでなので桜木亭に寄って高倉さんに『水神社』に行くことを伝えようと思った。

 そして桜木亭に入ったところであの男につかまった。


「ユタカさん、おはようございます!」

「・・おはよう。今日も元気だなアレン」


 いつも通り何一つ変わらない格好のアレンが電子掲示板の前にいた。

 どうやらそこで流れているあのPVを見ていたらしい。


「ちょうどよかったです。ふーちゃんの衣装も完成しましたよ」

「それはほんとにタイミングが良かった。もうすぐ旅に出るところだったからな」

「行き先は決まったのですか?」


 アレンは手にしていたキャリーバックを開けながらそう聞いてきた。

 何故だろう、ちらっと中を見た限りではダンジョンで使う物が一切見えず、アニメグッズばかりが目に映った・・


「宮城県の『水神社』に行ってくるよ」

「杜の都ですね。風光明媚なところです」

「お前は本当にアメリカ人か?」


 実際に行く場所は仙台ではないが、それでもそんな言葉を知ってるコスプレ野郎に驚きだ。

 おそらくはアニメに出てきたので覚えたのだろうが・・


「お待たせしました。こちらがふーちゃんの衣装です!」

「わぁー! 可愛い!」


 アレンがふーちゃんに衣装を見せると、ふーちゃんは大喜びして衣装を手にした。

 デザインはみーちゃん達のものと同じだが、配色はふーちゃんに合わせて緑になっている。


「ゆーちゃん、着てみてもいい?」

「いいぞ。ちょっと怖いけどあそこにいるお姉さんたちに手伝ってもらうといい」


 俺が指さした先には、血走った目で鼻息の荒いギルド職員のお姉さんたちがいた。

 かなり不安だが、みーちゃん達の時も任せたし大丈夫だろう。


「俺は今のうちに高倉さんに挨拶してくるから、みーちゃん達を見ててもらえるか?」

「わかりました。では二人には特別に秘蔵のアニメグッズをお見せしましょう」


 そう言って再びキャリーバッグを開け始めるアレン。

 やはりさっきのは見間違いではなかったようだ・・



「『水神社』にしたのかね?」

「ええ、うちのちみっこ達があの魔物の事を随分と気にしてるようなので」


 受付で許可をもらい高倉さんの部屋に行き、当人に行先が決まったことを告げた。

 すると高倉さんはしばし何かを考えて、俺に向かって頭を下げてきた。


「公私混同になってしまうが私からも頼む。あのダンジョンを何とかしてやってくれ」

「いや、あの、とにかく頭を上げてください。うちらの勝手で調査に行くだけなんですし」


 いきなり頭を下げるものだからテンパってしまった。

 しかしそうまでして『水神社』の問題を何とかしたい理由があるのか?


「そこのギルマスは私の後輩なんだ。優秀な奴で本来なら私の後任としてここに配属になるはずだったのだが、震災後に少しでも東北復興の力になりたいと向こうのギルドマスターに立候補したんだ」

「それはまた立派な方ですね」


 こう言っては何だが、世界初のダンジョンである『ファースト』のギルマスはまさに花形職だと聞いた事がある。

 高倉さんはただの中間管理職だと笑っているが、昔から世界中に注目されているダンジョンなのは間違いない。

 その立場を蹴ってまで『水神社』に行ったのだから、とても高潔な人なのだろう。


「彼は着任後早々に復興のために無資格の特例を出したり、ダンジョンから各地への物資の輸送のために上に掛け合ったりと、地元の方々と協力して復興に尽力してきた。そんな彼が私に知恵を貸してほしいと連絡してきたんだ」

「それで高倉さんは何とかしてあげたかったと?」

「ああ。だがうちのダンジョンでは巨大な魔物が出たなんて前例はないし、そもそもダンジョンの性質が違いすぎる。私には何もアドバイスできなかったんだ・・」


 そこに俺たちが調査に行くと言い出したと。

 もちろん高倉さんにはいつも世話になってるのだから是非もなく行くさ。


「ギルドマスターの宮本君には私から連絡しておくから、向こうに着いたら彼に会ってみてくれ」

「わかりました。出来る限りの事はしてみます」

「ありがとう。けど根は詰めずに、せっかくなのだから楽しんできなさい。向こうはおいしいものも沢山あるしね」


 そうだな。高倉さんにお土産をいろいろ買ってこよう。

 苦労人の高倉さんはちょっと頭が・・げふんげふん!

 三陸産のワカメとかいいかな? 他意はないよ?



 高倉さんと別れて一階に戻ると、女性陣の黄色い声が響いていた。

 どうやらふーちゃんの着替えは終わっているようだ。


「ユタカさん、こっちですよ」


 階段を下りた俺を、アレンが受付の奥に引っ張っていく。

 そこには女性職員に抱っこされたみーちゃんとちーちゃん、それと女性職員に囲まれて撮影会になっている魔法少女姿のふーちゃんがいた。

 うむ、とてもかわいらしい。


「あ、ゆーちゃん!」


 ふーちゃんは俺の姿を見るなり、ふわっと浮かんで抱き着いてきた。

 俺はそのままふーちゃんをキャッチして抱っこしてあげる。


「ゆーちゃん、僕どお? 似合ってるかな?」

「ああ、とってもかわいらしいぞ」

「やった!」


 そう喜ぶと、ふーちゃんは俺の体に頬をスリスリしてきた。子猫みたいだ。

 それを見た女性陣からの怨嗟の視線が恐ろしかったが・・


「アレン、ありがとな。前にも言ったが今回は代金を――」

「ストップです。この前あんなプレゼントをもらったのにお金なんてもらえません。ふーちゃんの衣装も受け取ってください」


 ぬぅ・・

 そう言われては受け取るしかないか。あまりお金を押し付けてもアレンのメンツを壊してしまうしな。


「それよりも気を付けて行ってきてくださいね。今のところ被害はないとはいえ、巨大な魔物がいるのですから」

「ああ、無理はしないよ。あくまで俺はここ(ファースト)の冒険者だしな」


 とりあえず俺たちは再び奪われたふーちゃんと、みーちゃんちーちゃんが解放されるまでお茶にすることにした。


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