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錬金薬学のすすめ  作者: ナガカタサンゴウ
勝利の大味は大犬も喰わぬ
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錬金術の神様

「ここがイスカンデレイア、ワタシの故郷だ」

 隣町から山の中を歩いてイスカンデレイアにたどり着いた。

 当初の予定から大幅に遅れてしまった。

「まずはボル様とケイタ様に顔を出しに行く」

「あたしは依頼者のところに行くわ、じゃあ後で」

 フィジーさんと別れ、イスカの中を歩く。

 すれ違う人ほぼ全てと言葉を交わしながら進む先生についていくと少し様子の違う建物が見えた。

 他の建物が洋風なのに対してこの建物だけは和風……昔ながらの日本の家って感じだ。

「ボル様とケイタ様はいるか?」

「おお! キミアじゃないか! 報告してくる」

 門番らしい人が一度奥に入った後許可を出してくれる。

「いくぞ」

 二人について建物に入る。いくつかの廊下と部屋を抜けて襖の前で先生は立ち止まった。

「ボル様、ケイタ様。キミア・G・プローションです」

「よろしい、入れ」

 威厳のありそうな声が聞こえた。やはり長老みたいな人なのだろうか?

「失礼します」

 部屋の中にいたのは一人の少年。小学校低学年くらいに見える。

 この子がさっきの声の主……?

「あ、キミアじゃないか」

 どうやら違うようだ。この子は普通に年相応の声だ。

「久しぶりです、ケイタ様」

 彼がケイタ様ならさっきの声はボル様なのだろう。

 見渡したが畳の部屋にいるのはケイタ様しかいない。強いて言うのなら人間のような座り方をした黒猫くらいだ。

 綺麗な黒猫だ。昔絵本で見た黒猫とどこか似ている。

「久しぶりだな。キミア、コカナシ……それから……?」

「ほら、挨拶しろ」

 先生に背中を叩かれて一歩前に出る。

 いや、確かに挨拶しなきゃいけないんだけど……

「今、猫が喋った……」

 呟くと目の前にいる黒猫が胸を張る。

「その通りだ。今のは儂が発した言葉だ」

「……え?」


 *


「えっと、タカヤ・オナイです」

「タカヤだな。うむ、頭を上げよ」

 言われた通りに上げて黒猫を見る。

 この黒猫がボル様らしい。どんな原理かはわからないが異世界転移の影響で人間の言葉を話せるらしい。

 このボル様とケイタ様が先生たちの言う錬金術の神様、つまり……俺と同じ世界から来た異世界転移者なのだ。

「キミアが生徒を取るとはな……で、そいつが儂と同じ世界の者というわけか」

「は、はい。そのようです」

 コカナシはともかく先生までかしこまっているからなんだか緊張してしまう。

「ついたばかりで長話も疲れるだろう。また来るといい、今日帰るというわけではないのだろう?」

「はい、一週間ほどは居ようかと」

「うむ、下がってよいぞ」

「失礼しました」

 先生とコカナシについて帰ろうとするとさっきまで話さず本を読んでいたケイタ様に腕を掴まれた。

「えっと……」

 ボル様の方を見る。ボル様は頷いて手招きをした。

「タカヤ、お前は少し残るのだ」


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