タカトビ
「よく帰ったな、イスカに行くぞ!」
長旅の末にアルカロイドの家に帰ると先生が開口一番にそう言った。
「キミア、そうじゃないだろ」
アデルに突っ込まれて先生は咳ばらいをして言い直す。
「よくやったな。これでお前も金を稼げ……公式的に薬が作れるようになったな」
「……最初に出たのが本音ですね?」
「さあ、私なりにご馳走を用意してあるぞ。さっさと入れ!」
ごまかしやがった。あきらめて家に入ると同時にアデルに抱きしめられる。
「よくやった友よ! これで目標に一歩近づいたな!」
「うん、気持ちはうれしいけど暑苦しい」
「男同士の抱擁ってどうなんですかねー」
気持ち悪いと言いたげなコカナシは俺たちの横を通り過ぎてテーブルの料理を眺めた。
「これをキミア様が」
「キミアは全く手伝ってないわよ……コカナシちゃーん!」
椅子に座ろうとしたコカナシをセルロースさんが抱きしめる
「女同士の抱擁も良くはないかと……」
抵抗する気力すら失ったらしいコカナシは虚ろな目でため息をついた。
*
シャーリィさんが追加の料理を運んだりアデルが芸をしたり、皆での楽しい食事が終わった頃に先生がさっきの話を切り出した。
「少ししたら出かけるぞ」
「どこに行くんですか?」
「イスカだ」
「…………」
さっぱりわからん。
「イスカンデレイア、錬金術発祥の地でキミア様の故郷です」
「電車ですか?」
「途中までは電車を使うが最終的には歩くことになるだろうな」
うわ、行きたくない。
「何しにいくんですか、そんな山奥」
「生徒を取った報告にな、最近顔を出していなかったし」
「報告……ですか」
「ああ、ボル様とケイタ様にな」
「王か何かですか?」
「錬金術の神様ですね」
「……は?」
パスタを口いっぱいに含んでいたコカナシはソレを飲み込んでからもう一度言い直す
「はい、神様です」
先生の方を見ると頷かれた。
コカナシはともかく先生は神様とかそういうのを信じないひとだと思っていたけれど……
「ホントにいるんだぞ?」
真剣な顔で言う先生……本当に?
「信じていない顔だな……まあ神様と言っても元々は人間だ、お前が思っているほど遠い存在ではない」
「要は力を持つ人間が信仰対象になっているというだけですか?」
「若干違うが……それは向こうに着いたら説明しよう」
俺は今までの話を頭の中で整理して結論を吐き出す
「つまりその神様は錬金術に関する何かの力を持っているって事ですね」
「そうだ。ボル様とケイタ様は錬金史で最高の才能を持つ……異世界から来た者だ」
「…………え?」
異世界から来た人。その言葉に俺の頭は真っ白になった。




