資格試験と焦がれる……
筆記試験は……テンションのわりに微妙だった。
基本は問題なかったのだが少し踏み込んだ後の方の問題が幾つか……
「いや、やめだ」
後悔しても何も生まれない。次は実技試験だ。
実技試験は簡単な調剤。対称の薬は五種類の中から毎年ランダムに選ばれる。
分量もその時に公開されるため、調剤自体は難しくはないのだが……問題は素材だ。
用意される素材は本来使う物のほかに幾つかフェイクが混じっている。
「実技試験、開始してください」
試験官は変わらずキリーさん。誰も雑談を交わすことなく静かに試験が始まった。
被せられていた布を取る。調剤に必要な機器と十種類の薬草が並んでいる。
この中で使うのは三種類。コカナシによる思い出すのも嫌なスパルタ訓練のおかげでどの薬草を使うかは簡単にわかる。
「始めるか……」
小さく呟いて錬金石を……違う。今回は普通の調剤なのだ。
気を取り直して薬草を手に取る……が。
「違う」
どう見ても使う薬草なのに何かが違う。どこが違うのかも何が違うのかもわからない、それでもこの薬草は今使ってはいけない。そんな気がする。
深呼吸をしてその薬草を一旦置くと隣の薬草が目に入った。
「……………………」
同じ薬草だ。なぜかこの薬草には違和感を感じない。
「じゃあ……これを使うか」
すこしだけもやっとした何かを抱えながら俺は調剤を始めた。
*
「お疲れ様です」
部屋に戻るとコカナシが紅茶を淹れてくれていた。
「ローラさんから貰ったいいモノですよ。よくわかりませんが」
「わからないのかよ……」
「で、試験の方はどうでした?」
「まあまあ……かな。そういえば……」
紅茶の湯気を吹き飛ばして一口飲んだ後、実技試験で感じた違和感を話した。
「そういえば今年から推薦実技試験が見直されるって噂がありましたね」
どうやら去年準薬剤師が質の悪くなった薬草を使ってしまうという事件があったらしい。
「恐らく質の悪い薬草がフェイクとして紛れ込んでいたのでしょうね。よくわかりましたね」
「いや、特に違いはわからなかったんだが……」
「そうですか」
コカナシは興味をなくしたように言って話題を変える
「タカはローラさんとヴァルクールさんについてどう思いますか?」
突然の質問に少し戸惑いつつも俺は思ったままの事を口にする。
「いい人じゃないか?」
「そういうことではなくて」
「…………?」
「二人の様子。特にローラさんの婚約者がかかわっている時の様子に何か感じませんでしたか?」
ローラさんは婚約者と会う時にヴァルクールさんを連れて行かなかったな。ヴァルクールさんは……なんだか歯切れの悪い感じだったな。
「確かに様子は変だったけど……それがどうしたんだ?」
コカナシはあきれたようにため息をついてハッキリとそれを口にした。
「私はあの二人……相思相愛だと思うのです」
「……え?」




