賊アーヴィン
アーヴィンside
港町ペルケタートから少し離れた所にある無人島。そこに俺らの船が停泊している。漆黒に身を固めているこの船は船員百人が乗れる大型船だ。積み込んでいる武器も長距離砲台をはじめ、バリスタや属性魔法を放つ魔印がある。さらに大量の魔具で強化されており、そこらの亜人共に見つかっても簡単に返り討ちに出来る武装魔具船だ。
頑丈であり、俺がどんなに八つ当たりをしても壁は少し凹むだけで壊れはしない。おまけに時間が経てば自動修復という化物船だぜ。
だから俺は怒り任せに暴れていられる。
くそがくそがクソガキがっ!! 俺に一体何をしやがったあのガキ! ウグッ、頭がいてぇ割れそうだ!おまけに指も痺れてやがる。こんなんじゃマトモな拳も握れないじゃねぇか!!
視界もぶれたりぼやけたりと、逃走時に走りきった自分を褒めてやりたいぐらいだ。くぞがぁ!!
「アーヴィン、これを飲め」
「ハァ、ハァ。お、お頭? こいつは何だ?」
「前に攻め落とした城にあった解呪薬だ」
「解呪薬!? あのガキは呪法を使ったっていうんですかいお頭!」
お頭は答えることなく、さっさと飲めと顎で指示する。
この世の苦をかき集めたような酷い味がするが、激しい頭痛は次第に治まってきた。手の痺れはまだあるが拳は作れる。
それよりも、あのガキは本当に呪法使ったというのか。
「マジで治ってきやがった。・・・あいつは魔族なのか?」
「さぁな。ただ、俺は似たものを最近見たな」
似たもの? よくわからんが、お頭が詳しく話さないのなら、俺が知る必要のない事だ。
「とにかく感謝するぜお頭!」
「ならさっさと奴隷魔法を済ませてこい。今回は大金が必要なんだ」
「へい、了解だぜ!」
気分が良くなってきた俺は、足を速めて奴隷部屋へと進める。だが怒りがまだおさまったわけじゃねぇ。ついでだから息抜きもしてくるか。
「まさかあのガキ・・・なのか?」
部屋を出るときにお頭が何かを呟いた。それが何かは聞き取れなかったが、珍しく笑っているようなに見えたが気のせいだろう。
「調子はどうだ?」
「アーヴィンの兄貴、もう体は大丈夫なんすか? あ、これが終わったリストっす」
船の一室に設けられた奴隷魔法の術部屋。床に大型の魔印があり、特定の者を強く拘束する効果がある。そこで作業をしていた、一人の子分がリストの書かれた紙を投げ渡してきた。俺はリストを見ながら大よその売り上げを勘定する。
「ちと足りねぇな。お前ら、この作業が終わったらもう一働きにいくぞ」
子分達は頷き、捉えた亜人共に次々と魔印を施す作業を急ぐ。亜人の中には泣き喚いたり抵抗する者がいるが、そいつらは気絶するまで鞭をいれ部屋の隅に投げ置く。
「おい、商品なんだから可愛がる程度にしとけ」
「わかっていやすよ、アーヴィンの兄貴」
魔印に拘束されている亜人が俺を睨むが、そんな目じゃ虫も殺せない。やるなら相手に死を押し付けるように・・・って、やっちまった。泡吹いて気絶しちまったぜ
「アーヴィンの兄貴、例の娘は部屋に運んでおきやしたんで、うぇへっへっへ、終わったら教えてくだせい」
「わかってから涎を拭え」
俺は奴隷部屋を後にして自室に向かい、扉を少し強引に開ける。そこには全裸の女亜人が鎖に繋がれ、口には縄が巻かれている状態で倒れていた。
女は俺の姿を見ると、喋れない口から呻き声をあげ、泣きながら芋虫のように床を這う。
俺は女の髪を掴み上げて、吊るされた魚のように品定めをする。
「まぁまぁだな。ちと胸が足りねぇが顔は悪くねぇぜ」
「んん! んぅぅぅん!!」
「何だよ、喋りたいのか?」
縄を千切ってやると、案の定、女は喚き叫びだした。
うるせぇな、そんなに助けを呼んだってくるわけねぇだろ! 大人しくしやがれ!
イラついて殴り飛ばすと、ボールのように壁を跳ねて床に激突した。肺の空気を全て出されたのか、大きく咳き込みながら体を痙攣させている。
「イ・・・ィヤ・・・ァ、ぁ」
グッタリと倒れている女の首を絞め持ち上げ、胸を鷲掴みする。まだ微かに抵抗する意思があったため、今度は腹を蹴り飛ばす。
汚物を宙にブチまけながら床を転がると、指一つ動かさずに失神した。
「加減はしたし、中古品として売り出してやるから安心しな」
俺は気絶している女を大の字に寝かし、欲望のままに喰らい付いた。
「おい、俺は満足したから後は好きにしな」
先ほどの奴隷部屋に女を投げ捨てると、子分達は飢えた餓鬼のように群がる。もはや抵抗の意志すら見せない女は、成されるがままに喰われていった。
その様子を他の奴隷共に教訓として見せると、顔を青くして嫌だ嫌だと呪詛のように呟きはじめる。
「ん、お前なかなか好みの顔をしているな」
怯える亜人共の一人を掴み上げ、顔を近づける。中々に柔らかい肌だ。俺の指がどんどん食い込んでいく。
「いや・・・ぃたぃ。やめ・・・て。誰か、誰か助けて・・・!」
「無駄な抵抗はやめろよ? どうせ助けなんか来ないし返り討ちだ。御伽噺の勇者様なら、飛んで助けに来てくれるかもな、ガハハハハハハッ!」
「ククク、勇者じゃなくて悪かったな」
突然、船内に聞きなれない声が響く。俺は女を投げ捨てキョロキョロと発声もとを探す。あいてが見当たらず、より一層警戒を強めた時だった。バランスを崩すほど大きな衝撃が魔具船を激震させた。
メディ「複数の泣く声が聞こえる」
エージ「え、あんな遠くの船の音が聞こえるの?」
メディ「もちろん魔法を使っているわよ。ここは海風が良いからね、音を拾いやすいのよ」
エージ「へー、俺にはただの風の音だな」
メディ「ちなみに風に私の声を送らせることもできるのよ」




