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人魔戦争 〜聖都防衛戦〜(2)

 凄まじい轟音と共に全ての魔法障壁が稲妻を受けきると、全てが四散して消える。


「あの数を…ネェ」


 ガーミランは先程の笑いなど消え失せていた。


 大斧を持ち上げて歩き出すと足が地にめり込む。

 ガーミランとその武器にはそれ程の重量があるからだ。


「この先に行かせるか…聖騎士は……ガハッ!」


 巨躯から繰り出されるたった一つの蹴り。


 これだけでメリメリと音を立てコロミナ聖騎士長が吹き飛ばされた。


「違いヲ知れ。御前試合は終わっタ」



 《結界》は人族を相手に限定すれば、非常に強固で最高の盾となる。

 だが人外の膂力と並外れた魔力、そして強力な固有血技を前にしたらどうだろうか?


「この教皇ミーゼスも老いたか…よもや真龍やトージの他に破られるとは……」



 彼の呟きは風に流されるように誰の耳にも届かない。


 教皇が言う“破られた”とは文献上の話ではない。

 ミーゼスはダルメシア戦争に名を刻む、トージやナルシッサと刃を交えた英雄であった。



 彼は青年期から人一倍信心深く、偽善ではなく神を信じて迷える人々を心から救い続けていた。


 毎日行う礼拝、戦争などとは無縁の生活。


 そんな献身的な生活を送り、いつしか信者からの人望も熱くなり教皇という座につかせて頂いた。


 それが齢75を超えようかという時であった。


 教皇の職務に就いて暫くして、神のお告げを聞く事になり固有血技《結界》を授かった。


 あの日はステンドグラスから差し込む光が綺麗であった。


 片膝をつき、主が懺悔を聞いてくださっていた時にこう告げられた。


『負の時代が訪れる。人々を守り、若き力に芽吹きの水を与えよ』


 お告げの“負の時代”が何を指すのか、その時はサッパリ理解できなかった。


 だが直にダルメシア王国が帝国と開戦したと聞き、すぐに聖都サンクチュアリ全域に《結界》を生成して守りに入った。


 お告げにあった若き力。


 それは恐らく王都で義勇軍を祭り上げられたが、統制をとって導いた男。


 英傑トージだと直感した。


 上空を徘徊するホルアクティが日増しに増えていく中、《結界》が効果を発揮しているとは言え、国民の心労は募るばかりであった。


 そこで王都から聖都領に斥候を放ったと言う情報を受け、期に乗じて『水を与える』事にした。



 攻撃する気が失せるよう、捕縄してある程度で解放しようと考えていたが、反撃を受けるとは思いもよらず聖戦と称して王都まで出奔する事になってしまった。


 《結界》にはかなりの自信を持って挑んだが、トージには破壊され恐怖を味わう事となる。


 ナルシッサに至っては固有血技が実戦で急成長を遂げ、詠唱せずに上級魔法と炎剣を乱舞する物だから《結界》の再生速度を上回り…生きた心地がせんかった。


 終いには真龍による高高度からの息吹(ブレス)により塵も残さず分解された。



 こうした経験から命からがら逃げる事で、《結界》に変化が生じる。


 肉体の衰えを停止させる事ができるようになったのだ。

 だが代償として常に発動し続けないと老衰で死亡する。


 それはコンスタントに魔力を消費する事を意味し、必然的に《結界》の強度は全盛期の物よりも衰退してしまった。


 つまり全力を出せば死亡し、維持できる時間も分からない。


 ただ解除すれば一気に老ける事だけは分かっていた。


「じゃが、いつの時代も思いは同じ。聖都の国民は何があろうと護りきる」


「出せ。だせだせ!!魔導師を!俺と熱き血潮に塗れよ……」



 ぷしゅーーーーーー…



 ガーミランは噴き出す鮮血が自分の首筋から出ている事を理解するのに数秒の時間を要した。


 直感でバックステップを踏むと、先程首があった位置に斬撃閃が見えた。


(さと)いね。しかも硬いと来たもんだ」


 いつの間にか周囲は薄い霧に囲まれ、ガーミランは異変に気が付く。

 ガサツな様に見えて、戦闘においては人一倍感が鋭くこれまで魔大陸でも生き抜いてきた。


「…俺が気が付かなかっただと?固有血技か」

「行くよクーちゃん。クリミナルナイフの罪禍(ざいか)になれ」


 黒龍から魔力を貰い受け尋常ならざる殺気を放つと、一転して霧に紛れて魔力の痕跡と気配を消し去る。


「……何だァ?この俺がブルッちまった…イイねぇ、お前らサイッコォだ!!」


 何処にいるか分からない。

 だが接近しての攻撃に限定すれば答えは単純。


 全周囲を破壊せしめる攻撃でカバーすれば、カウンターアタックを狙える。


 《流転崩壊(るてんほうかい)


「おうりゃぁぁぁ!!」


 大斧の凄まじい重量による遠心力。


 これだけでものすごい風圧となり、ルインの放った霧が霧散していく。

 そして見えた人影に対して、ガーミランは一回転して渾身の一撃を放った。


 感触…あり!


「残念だったな!」

「そうだね。ボクは残念だよ」


 !?


 《ミスト分身》

 《アクアパラダイス》


 一度霧散した霧が再度集まり、周囲から圧縮放水が襲い来る。

 それを見たガーミランはニヤリと笑うと、魔力を一気に放出した。


「凄まじき猛攻!だが…咲き乱れろ!!」


 《(いかずち)の芽吹》


 ガーミランの全身から雷撃が放出され、周囲に枝分かれしてルインへと襲い掛かる。


 水と雷。


 二つの相性を考えればルインへと雷撃が導かれるのは必然であった。


「ガッ!ふぐぅ!!」


 轟音と共にルインは雷撃に撃たれて、その場に身を焦がして沈黙した。


 ガーミランは首筋に滴る血を拭き取る事はしない。

 それが彼の流儀である。


「忍びの強者よ、合間見えることあれば三度目を期待する」


 ルインはあの猛攻の最中にカウンターの一撃を入れた。

 それはあと数ミリもあれば大事な線を切れたかもしれない。



 遠く離れたアリサには、ルインの霧によって何が起きているのかよく理解できなかった。


 そんな彼女に教皇は教えてくれる。


「ルイン殿は善戦しておる。それにあの魔力…黒龍かの?」

「分かるのですか?」

「わしは直接攻撃を浴びたからのぉ。じゃが、手助けは必然」


「当然!ですっ」


 アリサは左手で障壁を展開し、右手でクラスターボムを広範囲に設定した。


 ズガガガガン!!


 魔族も致命傷は受けないものの、足を止めるには十分であった。

 続いて左手で上級風魔法、右手で上級火魔法の魔力を練り上げていく。


(想像するんだ…!あの時見た、魔導師のやり方を!!)


 アリサに師はいない。


 ユウキに魔力の流れを感覚で教えてもらい、独学で無詠唱の研究を進めた。

 この世界で無詠唱は不可能とされ、研究した者はいても実用化出来ず投げ出された結果しか残されていない。


 つまり彼女は魔力研究の第一人者であると同時に、最高の魔導師でもある。


 そして一年旅を続けて各地を巡り、さまざまな人達と出会い、経験を積んでステップアップしている。


 その旅の中で、もう一人無詠唱を使える人がいた。


 彼から見せてもらった発動魔法が教本。先ずは制御してそれを真似(まね)る!



 やがて霧が晴れてガーミランが負傷しながらもこちらへと向かってくるのが見えた。


(ルイン?ルインはどこ!?)


 まさかあの倒れた…そんな!!


「ルイン!!返事をして!」


 だが一向にいつもの『へへっ、ここだよぉー』と言う軽口は帰ってこない。


 涙が溢れ出る。

 だけど、まだ死んだと分かったわけじゃない!


 まずはこの状況を……!!


 アリサは左手を突き出し突風を発生させる。


 《タービュランス》


 続けて右手で火炎流を目一杯、できる限り強大な威力で発生させる。


 《アルババースト》


「ルインから離れて!!」



超級魔法《火災旋風(かさいせんぷう)



 戦場全体を火炎流が襲い狂い、上空へと竜巻となって燃え上がる。


 それは地獄の業火と言える様な代物であり、上級魔法の範疇を有に超えていた。



「こんな少女がナルシッサの……超級魔法を…」


 それを見ていた教皇は《結界》によりルインと聖騎士が被害を受けぬ様に強固にしていく。


 そしてかつて聞いた報告を思い返していた。



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