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久々の休暇(2)

「らっしゃい。冒険者見習いか?」


 魔力は抑えているし、丸腰でしかも私服のアリサを連れているため勘違いされてしまったようだ。


「いえ、大斧を見せてもらっていいですか?」


「んー?んん?」


 店主はジッとユウキを見つめてきた。


「なるほど、駆け出しがただ強そうな武器を選んだわけじゃ無いな」


 みただけで何かを看破されたようだ。

 そう言えばギルド長オーギスも一目見ただけで、基礎鍛錬を見抜かれた。


「ここにある大斧が全てだ。特注も受けるが金と時間が要るな」


 ザッとみると装飾が豪華な物から、両刃や片刃の物など様々だ。

 その中で一つ気になる大斧を手に取り、軽く流してみた。


 ヒュンヒュン!


「ほう、良い筋肉だ」



 柄の部分が鋼製で、一般的な木製のものより圧倒的な重量を誇るがその分耐力はある。


 だがよく見ると刃の部分にキラキラしたものが付着していることに気が付いた。


「刃先に何かしてありますね?」


「分かるか?」


「水晶・・・いや鉱石か?」


 店主はその答えを聞いて、ユウキをジッと観察した。


「重量石だ。つまり君が振り回したソイツは普通じゃ持つことすら敵わない」



 店主について来るように促されると、天幕の奥へと誘われていく。

 途中で魔法陣の描かれた扉を通過したが、何かが封印されているのか。


「こいつを持てるか?」


「え?これは!」


 そこには先ほどと同じ鋼製で、槍と大斧を合わせたような斧、ハルバートが壁にかけられていた。


 先ほどと圧倒的に違うのは、武器本体から魔力が感じられ凄まじい威圧を感じる。


 だがユウキには覚えがあった。


 そう、金獅子のナックルである。あれには風の潜在魔力が込められていた。



 ハルバートに近づくと、威圧を感じながらもソッとそれに触れた。


 するとザワッとした感触が全身を駆け巡り、とてもじゃないが持てたものではなかった。


 バッと手を離すと、店主は落胆したようにため息を吐いた。


「はぁ、君でもダメか。普通の武器を買うと良い」



 ユウキは武器の魔力が、自分を試していると直感していた。


 故に応えよう。


「いえ、分かりました」


 ユウキは魔力を解放すると真紅の魔力を両手に纏わせ、ハルバートの柄を思いっきり握りしめた。


「そうだ・・・暴れるなよ?」


 溢れ出す魔力が真紅の魔力をと合わさりながら、ハルバートへと巻きついて行く。


 そしてユウキはハルバートを壁から思いっきり引き抜いた。


 ガコンッ!



 先程までの暴れるような魔力はなく、ユウキに同調するように武器の周囲を渦巻いていた。


 店主は信じられないものを見る目で、ハルバートとユウキを交互に見ていた。


「恐怖の象徴・・・?」


 誰に言うでも無く、自然と言葉が漏れていた。


 アリサから何が?と問われたが、武器が問いかけてきたとしか思えなかった。


 そこで店主が安心したな柔らかい表情になり、ユウキに告げた。


「持っていくと良い。他には持つ事さえ叶わない」


「この武器は何なのです?」


「先代からはイビルウェポンと呼ばれていた。名をシュレッケン。

 武器自体が強力な魔力を持つ反面、普通は触れるだけで気が狂う」



 店主よ、なぜ勧めたし。


「でも俺武闘家ですよ?」


「察している。だが武闘家なら凡ゆる武器に精通した方が戦いやすい」


 確かにもっともな意見であり、店主に対して素直に礼を述べた。


 この後店内へと戻ると、店主は謝罪をしてきた。


「すまなかった。

 それは戦時中からある物で、かつて振るった者はそう居ないと聞く」


 話によると製作者は不明で、ダルメシア戦争からこの武器屋に封印されていた。


 そして腕に覚えのある者に試していたそうだ。



 そこでユウキはひとまず目的の大斧を手に入れたので、良しとして店から出ようとした。


「また武器で困ったら来るといい、助けになろう」


「それなら冒険者のジャックと言う男が来たら、見合う大斧を作ってください」


 そう言って店主に金貨50枚を渡した。


「承知した」


 2人は店を後にして、誰も居ないところでシュレッケンをポーチへとしまった。




 再び街中を散策していると、またジャック達と出会った。


「また会ったね、カーミラちょっといいかな?」


「わたし?」


 ユウキはカーミラの方に近づくと、手を伸ばした。



「あっ、少し胸を触ってもいいですか?」


 カーミラは顔を真っ赤にしてバッと胸を隠した。


「ちょちょちょ!アリサ!?」


「あわわわ違うの!少しユウキに見てもらってくれないかしら?やましい事じゃないの」


 それを聞いて疑心暗鬼にユウキを見た。

 その真剣な眼差しに、何かを察したようであった。


「少しだけよ・・・」


 礼を述べてカーミラの胸にソッと手を触れ、瞳を閉じた。


 魔力は安定しており、それなりの量を感じる。特段大魔力の行使にも問題なさそうだ。

 だけどどこか落ち着きがないと言うか、そう言ったものを感じる。


「ありがとうございます。大丈夫だよ」


「そう、良かったわ。何か原因があるの?」


 ジャック達には今のユウキの行動や、2人の会話を聞いてもサッパリと言った状況である。



「カーミラは以前魔力暴走をした事が?」


 その質問にビクッと震えた。


「な、無いわ!・・・いえ、あるわ」


 ユウキが気が付いたことにジャック達が驚いた。


 なんでも昔から3人は一緒で、駆け出しだった頃に採取任務中ビッグベアに会敵したそうだ。


 熟練シルバー3人以上が推奨されている魔物相手に、ブロンズ3人でどうにかなる相手ではなかった。


 ナタリーの治癒術と大斧を構えたジャックでどうにか後退する事はできた。

 だが逃げるには少々場が悪かった。



 カーミラは必死になり本で覚えた上級魔法で隙を作ろうとした。


 だが潜在能力の高さが逆に仇となり、今まで行使したこともない程の多量の魔力を使って上級魔法が()()()()()()()()


「発動したんですね?」


「ええ、風魔法の《ガストスラッシュ》よ。敵味方問わず辺り一面にカマイタチの暴風が吹き荒れたわ。

 制御しようとしても魔力は底無しにー」


「吸い取られたのね」


 当時を思い返したのか、涙を流して言葉を詰まらせたカーミラに代わりアリサが引き取った。


「あれは恐怖以外何も無いわ。私も上級を初めて使った時に暴走したから」


 それに皆が驚いた。


 チームワーク、信頼、個々の技量、戦闘経験、鍛錬方法。


 ユウキ達は出会った時から既に完璧であった。

 王都学園の生徒であったことも聞いていたので、良き先生に指導されたのだと思っていた。


「私達も失敗ばかりだわ。

 ユウキは剣が苦手だからって、剣を担いでウサギ飛びとか色々試していたわね」


 言って思い出したのか、アリサはプッと吹き出してしまった。


「黒歴史だな・・・」


「そうだったのね。わたしにまた出来るかしら?」


「私は出来ると思うわ。だって私が出来ることをカーミラが出来ないと思って?」


 そこでジャックはギルド長にユウキが言った言葉を思い出した。


「自分の才ではなく、相手の努力の才」


 ジャックの呟きにカーミラが反応した。


「良いこと言うわね」


「いや、ユウキが言った言葉だ」


 まだ大人と子供の間の年頃2人が揃って、20代前半冒険者を諭していた。


 でもとても悪い気はしないし、全然相手を見下していない。

 逆に心地よさを覚える不思議な感覚であった。


「明日からまたお願いね。それと・・・ごめんね。

 私達のために自分達の大切な時間を使わせてしまって」


 2人は全然気にしていたかった。

 むしろ一歩前に進んだ気がしてどこかスッキリしていた。


「ううん、ジャックも早く決めちゃいなさい」


「おれかぁ?あいやー2人とも友人みたいな物だし」


 急にふられて頭を掻きながら困ったような表情をして、カーミラとナタリーに見られていた。


「大丈夫だよ。アリサとルインは2人とも俺の彼女だから」


「はぁー?おいおい参ったな」


 そこでナタリーに急かされてお開きとなった。


 彼女達は彼女達でこれから沢山の物語を築くだろうと思う。


 だがそれはまた別の話である。



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