第83話 全面戦争、『虹の蝶』対『鉄血の獅子』!③
※本日も2回更新予定です!
◇
「――でええええええい!!!!」
ステラは咆哮と共にリンドヴルムで攻撃。
最後の四銃士が打ち上げられ、雷の剣が砕かれる。
「そ、そんな、雷魔剣ナルカミがぁ!?」
階段に落下し、バタリと気を失う。
「我ら『鉄血の四銃士』が、手も足も出ないだと!?」
「何て性能の魔導武器だ……!?」
既にチャクラムとレイピアを破壊された四銃士が狼狽する。
「ここまでだな」
「私たちを甘く見ないでよね!」
「……はは、ははは」
雷剣使いの四銃士が仰向けのまま笑い出す。
「何よ倒された癖に、気持ち悪いわね」
「お前たちの遠くない未来を想像したら笑わずにはおれんよ。ここまでの騒ぎだ、ヤツが動き出すだろう」
「ヤツ、貴様らのギルドリーダーのことか?」
「どうだかな、ただこれだけは教えてやろう。『虹の蝶』は、我ら『鉄血の獅子』の神器に裁かれるだろう」
「……何だと!?」
「ギルドリーダーの危機とあればヤツの神器が牙を剥く。あの白髪は間違いなく死んだぞ!」
「マキナがやられるわけないでしょ!」
「ぐはっ!?」
ステラが四銃士を踏みつけにする。
「――アリアとステラは皆の援護を頼む!」
ベローネはギルド奥へ駆け出す。
「ベローネさん!?」
「ちょっと、どこ行くのよ!」
「私とマキナで……ギルドリーダーを確実に抑える!」
『鉄血の獅子』が神器を保有、ローズの得た情報通りだ。
マキナは強い。彼の武器も、彼自身も。
それはパーティーとして近くで見てきたから分かる。
だが相手が神器である以上、最悪の可能性を考えた方が良い。
マキナは今1番危険な役目を担っている。
その援護は、今ギルドを率いる自分の役目だとベローネは考えた。
「待ってろマキナ、すぐに向かう!」
◇
中庭に巨大な銅像が見えた時は流石に目を疑った。
その前に同じ格好の中年男がいるのを見て、彼がギルドリーダー無いしこの『鉄血の獅子』の位の高い人物だとマキナは断定。
ちなみに銅像は目が腐ると思いすぐさま砲撃、爆破させた。
「ひ、ひいい!?」
「おい待て、ワシを守れ!」
メンバーはグラハムを庇うことなく逃げていった。
「随分部下に慕われてるみたいだな」
「な、何のつもりじゃ貴様は、2000万Gもしたんじゃぞおお!」
「ノックしてもギルドリーダーの顔が見えなかったから、挨拶しに来たまでだ」
「ぐおおおおおおお、ギルドリーダーであるワシの銅像がああ……!?」
うなだれるグラハム。
「礼儀知らずもいいところじゃ、『虹の蝶』の教養の無さには呆れるわい」
「教養の無さはお互い様だろ」
マキナはイフリートに装備を変更し、歩き出す。
「仲間が世話になったんだ、落とし前は付けてもらう」
「は、はは、何かと思えば報復というわけか……下らん、弱き者は虐げられて当然じゃ。貴様らは、自然の摂理に逆らう愚か者集団だと名乗りにきたと見える」
この状況下でも、一切の反省の色が見えない。
力ある者は他人を傷付けてもいいという腐りきった思想。
こいつは組織のトップに立ってはならない人間だ。
このギルドリーダーにして、この『鉄血の獅子』ありと見える。
「まぁいいや……泣き喚くお前をギルドホールに連れて行けば、この戦いは終わる」
「貴様らのギルドリーダーを出せ! ワシと話をさせろ!」
「俺らのギルドリーダーの出る幕はないんだよ」
「――同意します」
それは中庭の屋根から聞こえた。
声の主は空中をくるりと一回転し、静かに中庭に着地する。
機動性を重視したプラチナの鎧。
腰の高さまで伸びた艶のある栗毛、仮面を装着し、顔立ちは見えない。
「ギルドリーダーの出る幕ではありません」
その女剣士は、グラハムを庇うように右手を横に伸ばす。
マキナは身構える。
この女剣士――間違いなく実力者だ。
細かい所作でそれが分かる。
「申し訳ございません、只今帰還しました」
「戻るのが遅いわ、さっさとヤツを始末しろ!」
「委細承知」
女剣士は腰に差した得物を抜き取る。
途端、空気が変わるのを感じた。
あの武器は、普通ではない。
その剣は――極端なほどに薄く、緩やかなカーブを描いている。
「あれは……刀か」
刀、主に東国で製造される武器。
切断、刺突に優れ、使いこなすには相当な鍛錬が必要となる。
「これが『鉄血の獅子』の誇る武力、その名も刀神器ムラサメ。今から300年前、東国の刀鍛冶――ヤスツナが作りし生涯の最高傑作じゃ!」
神器、実際に見るのはマキナも初。
女剣士は強く踏み込み、眼にも止まらぬスピードで駆ける。
カシャン。
一瞬でマキナを横切ると、ムラサメを鞘に納めた。
ズガアアアアアアン!
周りの樹々や石柱が両断され、中庭に土煙が舞う。
たった一振りでこの威力、正に神の如き性能。
この一閃は、マキナを確実に捉えている。
「はーはっはっはっ! 他愛もないのう!」
ズシャアアアン……!!
斬撃の余波により、辛うじて原型を留めていた銅像も両断された。
「――っておいいいいい!? お前も壊すんかいいい!?」
グラハムの悲痛な叫びが飛ぶ。
だが、これであの生意気な少年の顔を見なくて済む。
今は土煙で見えないが、地面にでも倒れているだろう。
「まぁよいわ……ギルドホールで暴れている害虫も全員始末しろ、5分でやれ」
「承知しました」
「――なるほど、これが神器か、確かに強い」
土煙が晴れる。
そこには、灼熱の炎剣を構えるマキナの姿。
刀神器ムラサメの一撃は、炎魔剣イフリートによって防がれていた。
「な、なんじゃとぉ!?」
「相手にとって不足はない」
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