第71話 『鉄血の獅子』
4人は地図を頼りに火山へと向かう。
山道へと続く道は残されており、迷わずに進めた。
近づくに連れ、段々と熱気が強くなっていく。
もちろん、途中でモンスターにも遭遇する。
甲羅に小さな火山を背負う、マグマタートルの群れが噴火攻撃を繰り出す。
「甲羅を斜めにして照準を合わせてくる、器用な構造だな」
マキナはデスサイズから放たれる冷気を操り、巨大な氷の壁を形成して攻撃を防ぐ。
「硬い甲羅を持つなら、私のストームブリンガーが有効打となるな」
「おっと、アタシのリンドヴルムだって負けてないわよ!」
ベローネとステラがそれぞれの武器で斬り込んでいく。
ストームブリンガーの超重量の一撃、リンドヴルムの竜の如き一撃――マグマタートルの硬い甲羅をもろともしない。
普通の武器なら、防御力の高いマグマタートルを一撃で倒すことはまず不可能だ。
強力な武器を持つことは、冒険者にとってアドバンテージとなる。
「すごい、3人ともカッコいい!!」
アリアは褒め称える。
オルトロスのような軽量武器は、硬い身体を持つモンスター相手には分が悪い。
マキナの武器である以上、威力と耐久値は高いが、場面によって有効な武器を使っていくことを忘れてはいけない。
「ありがと! でもやっぱ動くと暑いわね〜」
「火口が近いからな、ここから更に暑くなりそうだ」
「こんな環境で過ごせるモンスターがすごいわ……マキナがデスサイズを使ってなかったらもっと暑いのよね」
「ステラ、君の服装はだいぶ涼しそうに見えるが」
「アタシ暑がりなのよ、クフラルの冬が恋しいわ」
手をパタパタして扇ぐステラ。
改めて見ると、ヘソ出しのショートパンツ、太腿は完全に露出している。
言ってしまえば、ほぼ裸のような物だ。
パーティーの誰よりも肌色面積が多い。
「いっそデスサイズを装備したいくらいよ、あ〜やっぱマキナの近くは涼しいわ」
「何なら使ってみるか?」
「え、いいの!?」
マキナはステラにデスサイズを渡す。
氷のような刃の、ひんやりした冷気がステラを包む。
「この火山にもっとも適した魔導武器よ、このデスサイズは!」
すると、近くの岩陰からモンスターが現れる。
ボルケーノタイガー、炎を帯びた体毛を持つ虎のモンスターがステラに飛びかかる。
「わ、やば!?」
ステラはデスサイズを構えるが、急なことでもたついてしまう。
「そっか、リンドヴルムとは射程と重さも全然違うんだ……!?」
ボルケーノタイガーの牙が迫る。
その時、一瞬突風が吹いた。
グラァ……!?
鳴き声を上げ、力なく倒れるボルケーノタイガー。
アリアがオルトロスによる、目にも止まらぬ攻撃をしていたのだ。
「やっぱり使い慣れた武器が1番だよ、ステラちゃん!」
オルトロスを鞘に仕舞いながらアリアは言った。
「ありがとアリア、そうね……確かに今みたいな時に対処出来ないもんね」
ステラはリンドヴルムに装備を戻す。
1つでも学ぶことが出来たのは大きい。
「そう考えると全ての魔導武器を使いこなせる君は本当にすごいな」
「使いこなせてるかは分からないけどな、最低限なレベルはな」
「それで私と剣術で打ち合えるとは、恐ろしいな……ん?」
すると、近くから呻き声が聞こえてくる。
離れた岩陰からだ。
マキナ達は警戒しながら近付くと、そこには数人の冒険者がいた。
「ううう……」
「痛い、痛いよぉ」
どうやら怪我をしているらしい。
「ひぃ、やめて、やめてくれ……!」
冒険者はマキナを見るなり怯えだした。
「落ち着け、俺は何もしない」
「あ、アンタらは?」
「俺はマキナ、『虹の蝶』の冒険者だ。とりあえずこれでも飲んどけ」
マキナは薬草と水を渡した。
この蒸し暑い環境だ、脱水症状の危険もある。
「ぷはぁ……ありがとう、お陰で助かったよ!」
「アンタら命の恩人だよ!」
「一体何があったのよ?」
ステラが問うと、冒険者は答える。
「俺たち、このヨロイ島のヒヒイロカネを手に入れるために来たんだ。多分君らもそうなんだろ?」
「ああ、その通りだ」
「なら気を付けた方がいい、ヒヒイロカネは火山の神殿の中にある。だけど……あるギルドが神殿の周りを彷徨いてるんだ」
「ギルドが?」
「俺たちを見るなりすぐ攻撃してきたんだ……!」
「俺は見た、あの胸の獅子のマーク……!」
獅子……何かどっかで見たことあるような気がする。
話を聞く限り野蛮な連中だ、戦闘は避けられないとみた。
「情報ありがとう、神殿はもう近いよな?」
「ええ!? 危ないからやめた方が良いよ!」
「そういうわけには行かん」
「私たち、どうしてもヒヒイロカネが欲しいんだ!」
「ヒヒイロカネのついでに、アンタらの仇は討っといて上げるわ」
「――仇、つまりは我々を討つと言うわけですか、君たちは!」
すると、ブロンドの髪を靡かせた美形の男が、配下を引き連れてやって来た。
全員の胸には、鉄製の獅子のブローチが光り輝く。
「我らは『鉄血の獅子』、ギルドリーダーの命を受け、ヒヒイロカネを手に入れるべくヨロイ島へやって来たのだ!」
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