【第92話:愛の力】
長い間、休載という形になってしまい申し訳ありませんでした。
Web活動を再開いたしますので、また宜しくお願いします!
また、あとがきにて書籍版に関する詳しい情報などを記載しております。
最後までお読み頂き、あとがきにも目を通して頂けると嬉しいです!
◆ レミオロッコ視点
キュッテと別れ、フィナンシェちゃんの背に乗って一〇分ほどかしら?
予備に配置されていた羊偵察隊の何人かが合流してきました。
護衛や先行偵察のために駆け付けてくれたみたい。
これもきっとキュッテの能力による指示なんでしょうね。
ただ……もっこもこのカワイイ羊に跨る屈強な冒険者や衛兵さん。
そこはかとなく哀愁を感じるのは私だけかしら……。
「羊偵察隊……な、なにかこう、緊張感が削り取られるわね」
そんな事を呟きながら暫く走っていると、ようやくビッグホーンの魔物の群れを迎え撃つ場所が見えてきました。
そこは、横に長く広がった林のような場所。
草原の中に数百本ほどの木が立ち並んでいるだけの場所なんだけど、これはキュッテの牧場の厩舎などにも使われている魔物除けの効果があるとされている凄く頑丈な木。
そこに更に太いロープなどを張り巡らせて、即興の防護壁のような役割を持たせているみたい。
ここに追い込み役の羊戦車隊がビッグホーンの群れを追い込んでくることになっているのだけれど、まだ準備ができていないようね。
「そっち側、全然ロープが張れてねぇじゃねぇか!」
「こっちもまだ一本しかない! こんなの簡単に引きちぎられるぞ!」
みんなよくやっているとは思うけれど、何もかも時間が足りてないわね。
それに、たしか作戦本部で聞いた話では、ロープを張る以外に出来れば穴を掘っておきたいとか言っていたけれど、それはまだ予定の半分も出来てない。
でも……ビッグホーンの群れは、もうすぐそこまで迫っている! できる範囲でやるしかないわ!
私がフィナンシェちゃんに乗って近づいていくと、みんな一瞬作業の手を止めて驚いたのだけれど、意外にもすぐにまた手を動かし、作業を再開しました。
これもきっと、キュッテの指示で先に連絡が入っていたから。
「本当にあの子は……」
普段は本当にふざけてばかりの変な……楽しい子なのに、そのアイデアや、いざって時の行動力はとても私より年下の女の子には思えません。
「だけど、キュッテだって平気なわけじゃない……」
一緒に過ごすようになって、それなりに経つからだいぶんわかってきたけど、あの子は不安とか緊張とか重圧とか、そんなの全部心の中に飲みこんで、それで頑張ってるの!
だから、私も頑張らないと!!
「フィナンシェちゃん! 配置につくわよ! あっちにある防護柵の後ろに回り込んで!」
フィナンシェちゃんと配置についたのは、丸太で作られた防護柵。
急いで作ったにしてはよく出来ている方かしら?
でも……これだけでは、とてもビッグホーンの群れを受け止める事なんで出来ない。
「だから、フィナンシェちゃん。あなたのブレスにかかってるわ。よろしくね」
私がそう言って耳の後ろを思い切り掻いてあげると、嬉しそうに喉を鳴らしてから、
「がう!!」
と力強くこたえてくれた。
「ありがと」
あとは、ビッグホーンの群れがやってくるのを待つばかり! ……と思っていたところで、下から声をかけられていることに気付きました。
「……ッコ! れ、レミオロッコ! さん……」
話しかけてきたのは、知らないおじさんでした。
ん? 知らない……おじ、さん?
あれ? どこかで見た覚えがある顔な気がするんだけど……。
「れ、レミオロッコ……さん、すまなかった!」
そう言って頭を下げてきたところで、ようやく気付きました。
「あ……私を首にしたおじさん……」
「ぐふっ!? た、たしかに首にしたのは私ですが、その呼び方は……」
完全に思い出した。
叔父さんの頼みで無理やり一週間ほど働かせて貰った工房の……誰だっけ?
「そそ、その節はご迷惑を……あぁん?」
「ひぃ!? すす、すまなかった! レミオロッコが自分で考えた新しい物を作らせて欲しいと言われた時に一笑に付してしまった!」
あぁ、そう言えば失敗した時に思わずダメ元で言った気がするけど……。
どうしてそんなことをこのタイミングで?
しかも、なぜ謝って? フィナンシェちゃんのせいかしら?
「まさか、この短時間であの羊戦車というのか? あんな凄まじいものを作ってしまうとは……。しかも、街で噂の工房の長がレミオロッコと聞いて、私はなんて見る目がなかったのだと反省しているのです。あの時、レミオロッコに何か作らせてあげていればと……」
あぁ、そう言う事なのね。
でも……それはちょっと私を買い被りすぎね。
「あ、あ、謝る必要なんてないわ。わわ、私が色々と力を発揮できるようになったのは、全てキュッテのお陰だから! シ……」
危ない……昔のやらかしてた時の知り合いにあって、久しぶりに思わず恫喝するところだったわ。
「キュッテというのは、確かこの作戦の責任者の……」
キュッテの事を責任者だと思っているそのおじさんの発言に、割り込んでくる人がいました。
「いいえ。責任者は私です。キュッテはあくまでも作戦のアイデアをくれた子であって、責任は全て私にあります」
そう。それはキュッテの勝手な思い込みアレン様!!
相変わらず顔だけでなく、行動までイケメンね!
「アレン様!? し、失礼いたしました!」
「皆も聞いて欲しい! この作戦の骨子を考えてくれたのはキュッテという少女ですが、あくまでその作戦にのったのは私を含めた領主の一族の意向です! つまり! 責任は全てこの街の領主であるクーヘン家にあります! そこを勘違いしないように!」
これぞまさしく勝手な思い込みね!
************
あとがき
************
皆様、大変長らく、本当に本当に長い間お待たせいたしました。
本当にお待たせしてすみませんでした……。<(_ _")>
いろいろ事情があり、WEB活動全般をお休みさせて頂いており
ましたが……更新再開でございます!
更新ペースは毎日とはいきませんが、少なくとも第二章の終わりまでは
数日に1回の頻度では更新していけるかと思います。
そして……『羊飼いキュッテ』の書籍版の情報が公開されました!
2022/2/4にKADOKAWAドラゴンノベルス様より発売されます。
これでようやく色々な情報を皆様にお伝えする事ができます!嬉しい(*ノωノ)
まず、お気づきの方も多いかと思いますが、書籍版発売に伴いタイトルが
『羊飼いキュッテは異世界でもカワイイを広めたい
~転生少女とドワーフ娘のもふもふ×モノづくりライフ~』
へと変更となりました。
そして驚くべきことに……。
本作のイラストをNHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」のOPアニメを
手がけたことでも有名な、アニメーター兼イラストレーターの 刈谷仁美 様に
ご担当頂けるという望外の幸運に恵まれました!
皆様には書籍版を買って頂いて、是非その目でキュッテやレミオロッコ、
そして、刈谷様によって描かれた世界観をご堪能ください!
もちろん内容の方も書籍版になってパワーアップしております。
全ての文に手を入れて読みやすくした上で、3万字ほど加筆もして
おりますので、WEB版をお読み頂いた方にも、十分楽しんで頂ける
内容に仕上がったのではないかと思います!
当初の予定より、かなり遅くなってしまいましたが、なんとかここまで
辿り着くことができました。
これもこの作品をお読み頂いている皆様のお陰です。
本当にありがとうございます!
詳しい情報は活動報告の方でも引き続き発信していきたいと
思いますので、できれば作者フォローもして頂けると嬉しいです。
それでは、これからも『羊飼いキュッテ』を宜しくお願いいたします!
===こげ丸===










