表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/100

【第91話:親友】

 ケルベロスモード(巨大化)した二匹のフィナンシェの姿は圧巻でした。


 見た目は頭が一つになっちゃってるし、もう大きな狼のような姿なんだけど、その纏っている魔力がなんだかいつもより凄まじい気がします。


 でも、それもそうよね。

 普段は私を保護するために魔力の膜を張っているだけで、魔力はかなり抑えてくれているみたいだし、前に副ギルド長を追い詰めた時などは今と同じように凄い魔力を感じたもの。


 だけど、それよりも……。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「ひ、ひぃいい!?」


 周りをなんとかしなきゃだわ……。


「みなさん! 落ち着いてください!! フィナンシェが真の姿、本当の大きさに戻っただけです! 私の牧羊犬なのは変わりありませんから安心してください!!」


 って、言ったのだけれど……。


「「「こんな牧羊犬いるかぁぁ~!!」」」


 凄い勢いで否定されてしまいました。


 うん。その気持ちはわかるわよ?

 私だって「これがうちの牧羊犬よ」って紹介されたら、全力でツッコむもの。


 だけど、本当にうちの牧羊犬なんだから仕方ないじゃない!


 あらかじめコーギーモード(フィナンシェ)を紹介する時に、ケルベロスでうちの牧羊犬ですとは言っておいたんだけど、元の姿は初めて目にする人がほとんどだから、驚くのも無理はないわね……。


 でも、どうやって落ち着かそうかと思っていると、またもやアレン様がイケメンを発揮してくれました。


「みんな落ち着いて下さい!! あらかじめ説明していたはずです! ケルベロスが牧羊犬なんて確かに非常識で信じられないことですが、」


 ぅぅ……たしかに非常識なのは認めるけど、アレン様の口から改めて言われるとちょっとショックね……。

 まぁ本当に非常識だから否定できないんですけど!


「ですが、こう考えて下さい! 敵に回すとこれほど恐ろしい存在はいませんが……味方に付いてくれた時に、これほど頼もしい存在もいません!! この街の命運は、フィナンシェに……フィナンシェたちにかかっているのです!」


 アレン様はそう言いきると、驚く事にそのままスタスタとフィナンシェたちの元まで歩いていき、その巨大で強靭な足をそっと撫ではじめたのです。


「あ、アレン様!?」


「き、危険です!! お離れ下さい!!」


 周りで見守っていた人たちが口々に叫びますが、アレン様は今度はにっこりと笑みを浮かべ、


「何が危険なものですか。これほど可愛くて頼もしい子をつかまえて」


 と微笑んだのでした。


 ◆


 アレン様のお陰で皆が落ち着きを取り戻し、その後、さっそくすぐに二手に分かれて現地に向かうことになりました。


 そう。なったのですが……。


「だ~か~ら! 私が追い込む作戦の場所に向かうから、キュッテ、あなたはアレン様のお兄様のところに向かいなさいって!!」


「だ~か~ら! レミオロッコにそんな危険なことをさせられないって言ってるじゃない!!」


 急にレミオロッコも協力をすると言い出したのです。

 普段引っ込み思案の人見知りなのに、急にどうしたっていうのよ?


「危険って言うけど、それを言うなら状況も整っていない中、シグナ様たちを助けに向かうキュッテの方が危険じゃない!」


「ぅ、で、でも、私は本当にいざとなったらフィナンシェと一緒に送還で逃げる事ができるから!」


「だけど、あなたの性格からして絶対に一人で逃げないでしょ!」


 た、確かに目の前の人たちを見捨てて逃げれるかと言うと自信はないけど……。


「ぅぅ、そ、そんなことは……」


「そもそも。フィナンシェちゃんはすっごく頭が良いけど、作戦の細かい所まではわからないわ。ここでキュッテ以外に、その辺りの指示をだせる人がいる?」


「ぅぅ、そ、それは……」


「それに、私の向かう方は周りにも沢山の衛兵さんや冒険者さんたちがいるし、安全も確保しているはずよね? だって、キュッテ、あなたが色々考えてくれたんじゃない?」


 それはもう安全対策はかなり気を使って考えたけど……。


「ぅぅ……」


 レミオロッコと言い合いをして、ここまでやりこめられたのは初めてです……。


「キュッテ、あなたは凄い人よ。でも、何でも自分がなんとかしないといけない、なんて思わないで。私はあなたの一番の友達でしょ? じゃぁ、その友達をもっと信じてよ」


「ぅぅ……レミオロッコのぐせに……」


 レミオロッコのばか……みんなの前で泣いちゃったじゃない……。

 私だって、前世の記憶があるってだけでこんな大きな作戦、こんな怖い事初めてだもの……そりゃぁ怖いわよ。


 でも、それでも私は役に立つ前世の記憶が、知識が、知恵があるし、私が頑張る事で助かる多くの命があるのなら、助けたいじゃない。


 だから、怖くてたまらない自分の気持ちは一旦無視して、忘れて、忘却の彼方に蹴飛ばして、それで何とかしようと頑張ってたのに……。


「私は何度もキュッテに救われたわ。でも、私だってあなたと出会ってから随分成長したのよ? 親友を信じなさいよ」


「ぅぅぅぅ……うるさ~い! 従業員の癖に生意気よ! わわわ、わかったわ! 今回だけはあなたの事を信用して任せてあげる! 作戦の方は頼んだわよ!!」


「そうそう。キュッテはそのぐらい元気じゃなくちゃ。そもそも私の雇い主なら、もっとシャンとしてよね!」


 こうして、作戦はレミオロッコが、シグナ様たちの救出は、私が助けに向かうことに決まったのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作品の評価は、上の『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』から★★★★★と表示されている所をクリックする事で簡単に出来ます!
応援にもなりますので、この作品を読んで妥当と思われる★を選び、評価頂けると嬉しいです!

また、面白いと思って頂けましたら、ぜひブックマークもお願いします!


新連載!
『オレだけクォータービューで戦場を支配する
~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~』


異世界にふりかかる理不尽をチートで蹴散らす本格バトルファンタジー! 今ここに始動する!


ドラゴンノベルス様より、書籍版 第一巻 2/4(金)発売!
322110000539.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第一巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第二巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第一巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第二巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

『呪いの魔剣で高負荷トレーニング!? ~知られちゃいけない仮面の冒険者~』
8o9b581i4b7hm42ph5wph6qohlqu_xql_tg_15o_
※画像クリックでなろう内の目次ページが開きます
『突然、カバディカバディと言いながら近づいてくる彼女が、いつも僕の平穏な高校生活を脅かしてくる』
平穏を求める高校生と、とある事情を持つ美少女クラスメイトの恋物語(ラブコメ)

『槍使いのドラゴンテイマー シリーズ』
少年漫画のようなバトルファンタジー!



ツギクルバナー  cont_access.php?citi_cont_id=427461852&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ