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【第88話:激突】

 桃組の羊戦車隊がとうとう戦闘に突入しました。


 と言っても、羊戦車隊の一番の目的はビッグホーンの群れの誘導です。

 羊戦車はレミオロッコの作ってくれた自信作ですが、たった五台の羊戦車だけでは群れの殲滅は厳しいですからね。


「わかりました! では、作戦通り群れがバラけないように攻撃を開始してください!」


 羊戦車の前面には鉄で補強された突撃用のシールドがあり、ただ突進するだけでも進化した色付き羊たちの力をもってすれば、ある程度のダメージを与える事ができるはずです。


 でも、それは最後の話。

 まずは衛兵さんや冒険者さんの攻撃で出来る限りビッグホーンの数を削り、上手く誘導を試みます!


「冒険者の攻撃が開始されました! 動く戦車の上ですが……しーとべると? のお陰で無事に狙い通りに魔法を放つことが出来ているそうです!!」


 レミオロッコには、なるべく揺れを吸収するような簡易的な機構を組み込んで貰ったのですが、それでもここは異世界。それだけでは揺れを吸収しきれません。

 そもそも道路事情が良くないという話の前に、今ビッグホーンの群れは草原にいるので、揺れが物凄い事になっています。


 え? なぜわかるのかですって?


 つい先日まで私は、実際に牧場から羊に馬車を牽かせて街までやってきていたわけで……。

 その時、お尻は痛くなるわ、酔って気持ち悪くなるわ、本当に大変だったのよ。


 だからまず、今回は揺れを吸収するサスペンションのような仕組みを組み込んで貰いました。

 でも、それだけでは不十分なので、その上で攻撃をする際に安定して放てるように、シートベルトのようなものを導入してもらったの。


 まぁ立った状態で固定して使う形になるので、遠目に見ると(はりつけ)にされているみたいで、シートベルトっていうのもちょっと違うのだけれど……。


「まずは魔法攻撃が命中したようです!」


 そしてなんと、今回、羊戦車に乗って貰っている冒険者の半分は魔法使い!

 従業員(うち)にも、今も隠れて私を護衛してくれているはずのカワイイ魔法使いさんがいますが、羊戦車隊の魔法使いは、炎や風の魔法で普段から魔物とも戦っている正真正銘の魔法使い! まさにファンタジー! 異世界万歳!


「あ……でも、あまり効いていないようで……」


 そう……現実は甘くないのよ。

 冒険者の魔法使いが扱う魔法って、そこまで強力じゃないのよね。

 国のお抱えの魔法使いとかには凄い人もいるみたいなんだけど……。


 さっき見せて欲しいってお願いしたら、いきなり仲間の冒険者に向かって火の玉放ったからびっくりしたんだけど、


「あっちぃなっ!? なにしやがる!?」


 ですんでましたからね……。

 見た目は派手だったのに残念すぎる。


 風の魔法なんてもっとひどくて「風の刃!」と言ってカッコよく放った魔法。

 どうもこの切り裂く系統の風魔法は距離で減衰するみたいで、数メートル先の木の的に、目を凝らさないとわからないような傷をつけるのがやっとでした……。


 まぁでも、それは使い方を工夫すれば、ね。


「あぁ!? 凄いです! 油を染み込ませたフェルトボールで誘導に成功しているようです!」


「やった♪ うまくいったのね!」


 工夫と言っても大したことはしていません。

 やって貰ったのは、衛兵や魔法使い以外の冒険者が投げたフェルトボールを風の魔法で遠くまで運んで貰い、そこに火の玉をぶつけて燃やしただけ。


 魔法の火はすぐに消えちゃうんだけど、フェルトボールに燃え移った火は消えないので、向かわせたくない方向にバラ撒いて貰うことで誘導して貰っているのです。


 試しに火矢も使って貰ったんだけど、この世界の油が悪いのか、火が飛び散って危なかったので今回は不採用にしました。

 その点風の魔法で飛ばせば、私がいつもケルベロスモード(フィナンシェ)にして貰っているように、魔力の風で保護されて油が飛び散らないの。


 まぁ、火矢も工夫すれば使えるようにはなると思うので、今後は街の防衛などには活用できるようにしたいですね。

 アレン様たちにもお願いされたので、この件を乗り切ったらそちらも考えないと。


「あっ、はぐれたビッグホーン数体と激突するようです!! だ、大丈夫でしょうか!?」


 誘導も完璧というわけにはいきません。

 でも、はぐれるビッグホーンが出てくるのは想定内。


「あぁぁ……私の未来の旦那さま……」


 さ、さっき結婚するとか盛大に死亡フラグ立てて出てった冒険者と付き合ってるのね……。


 まぁでも、そんな死亡フラグは圧し折ってあげるわ!


「大丈夫です! 前面には突撃用のシールドを付けています!」


 いくら羊たちが凄い力を持っているからって、体重ではボロ負けですから正面からまともにぶつかれば危ないです。

 でも突撃用のシールドは、豪雪地帯で走る除雪をする列車、いわゆる『ラッセル車』のような形をしているので……。


「きゃぁ!? ……あ……す、凄い音が聞こえましたが大丈夫なようです!! 向かってきたビッグホーン五頭を弾き飛ばしたそうです!!」


「「「おぉぉ~!!」」」


 その報告に、作戦本部の中で歓声があがりました。


「凄いぞ! 同数のビッグホーンを!? しかし、信じられんな。これから羊を見かけた時は気を付けることにしよう」


「ひ、羊とは、かくも強き魔物だったのか……認識を改めねば……」


 うん、「弱き(・・)魔物」だと思うから、認識は改めないで……。


「私も羊って最弱の魔物だと思ってたんだけど、キュッテとあってから私の常識がどんどん崩れていく気がするわ……」


 失礼ね……でも、常識なんてやぶってこそ楽しいんじゃないかしら?


*********************************

更新、長らくお待たせいたしました。

詳しくは活動報告の方に書かせて頂きましたが、これからWebの更新も

再開する予定ですので、引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。


尚、羊飼い転生の書籍化については順調に進んでおりますので、

続報を楽しみにお待ちくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ビッグホーン!いすずのピックアップトラックですか? 流石にトラック相手では羊戦車でも厳しい戦いを迫られるだろう(違います) いすゞといえばエルフなんですがこの世界にもエルフはいるのだろうか…
感想一覧
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