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【第87話:座ってて】

****************************

「あとがき」に大事なお知らせが三つほどあります!

どうか最後までお読み頂けますようお願い致します<(_ _)>

****************************

 作戦本部となっている大きな天幕に戻った私の前には、商業ギルドから派遣されてきた女性職員や商業ギルド会員の商会の女性店員など、十人ほどの女の人が席について待機していました。


 その前には魔道無線が二つずつ置かれている事からわかるように、彼女たちの役割は羊偵察隊から入る報告を纏め、私に報告することです。


 その女性たちに向かい合う席に私は座り、そして私の前には番号の付いた駒と大きな地図が広げられていました。


「それでは現在地点に駒を並べていきます!」


 私の羊飼いとしての基本的な能力。


 一つ、羊たちに好かれる能力。


 じゃなかったわ……こっち。


 一つ、羊の居場所を把握する能力。


 それと……。


 一つ、羊を私が思う場所に移動させる能力。


 この二つの能力を駆使して、リアルタイムでビッグホーンたちの居場所を把握し、もし予定から進路がずれた場合には、すぐさま魔道無線で確認をし、状況を細かく把握していくのです。


 そう! 情報を制する者が戦いを制するのよ!


 と、前世の昔の人が言ってた気がするわ。


 羊の場所を確認しては駒を今いる場所へと並べていると、作戦本部にいた衛兵隊長の一人が、感心したように呟くのが聞こえてきました。


「まさか、羊飼いの基本能力にこのような活用方法があったとは……」


 ちょっと待って。

 世の牧羊犬にだけでなく、このままだと羊飼いからも苦情が来てしまうわ。


 だって、普通は牧場+αぐらいの距離が把握できるのがやっとなので、私のせいで世の羊飼いさんに迷惑がかからないように一言いっておかないといけないわね。


 私も世の羊飼いの一人ではあるのだけれど……。


「あぁ、勘違いしないでください。おそらくですけど、私の場合はスキルランクがかなりアップしているからこのような使い方が出来るんです。普通はこんな広範囲はカバーできないと思いますから」


「お、おぅ。そうなのか。それは失礼した」


 この世界は、元いた世界の中世ヨーロッパのような世界観なのに、スキルのお陰でかなり文明や技術が発展しています。


 しかし、作戦会議の中で色々確認をして確信したのですが、この世界では戦争などがあまり起こった事がないためか、アニメや映画、小説などでのなんちゃっての知識しかない私の方が、職業軍人である騎士や衛兵の人たちよりも知識が豊富であるということがわかりました。


 だから、私がアレン様たちと取り纏めた作戦を聞いて、大層驚いたそうです。

 情報や地理を把握することの重要さ。

 そういう事すらあまり意識をされてませんでしたから……。


「キュッテさん。三番からの連絡で、今のところビッグホーンの群れは確認できないとの事です」


「わかりました! ありがとうございます!」


 私は羊偵察隊の駒を、一定時間ごとに最新の位置に移動させながら、まずはビッグホーンの群れの位置を把握するために、発見の報告を待っていました。


 すると、ようやく……。


「キュッテさん! 八番が魔物の群れを確認したそうです!」


 待っていた情報が入ってきました!


「うん……大丈夫、予想通りのコースを進んでいるようです! 八番にはそのまま街の方に引き返しながら、監視を続けて貰ってください! あと、もし見つかってしまった場合は、絶対に無理せずに逃げるように、もう一度伝えておいてください!」


 さて……これで次はようやく羊戦車隊の出動ですね。


「では、私どももそろそろ配置に就くと致しましょう!」


 大きなズレがない事がわかったので、待機していた羊戦車も動き始めました。

 羊戦車隊にはビッグホーンの群れと時には戦いながら、強引にあるポイントへと導いて貰う大事な役目があります。


「はい。一番危険な役目だと思いますが、命を大切に頑張って下さい!」


 ガンガン行こうぜ。でも、命は大切に! です。

 ゲームのような能力が存在する世界ですが、ここはリアルな世界ですからね。

 そもそも出来るだけ命を懸けないといけないようなシーンは避けていかないと!


「あははは! こんな小さなお嬢ちゃんに心配されるとはな! 大丈夫だ! 俺は来月結婚する事が決まっているんだ。こんなところで死んでたまるか!」


「おぅ! 俺も再来月には初めての子供が誕生するんだ!」


 きゃ~っ!? お願いだから、このタイミングで盛大にフラグを立てて出動しないで!?


 その後も続々とフラグを立てて出ていく衛兵や冒険者の代表の方たちに、頬を引き攣らせながらもエールを送って見送ったのでした。


 ◆


 羊戦車隊が出動してからも、続々と寄せられる情報を地図に反映し、作戦通りに進んでいるか状況を逐一確認していきます。


「うん。今のところ順調だわ。お願いだから、このまま何とか進んで……」


 正直、表には出さないように気を付けてはいますが、心の中は不安で一杯です。

 今も本当は手が震えそうなのを必死に抑え込んでいるもの……。


 私の場合は前世の記憶があるわけだけど、人の命がかかっているようなこんな大役を任された事なんて勿論ありません。


 この状況に必死に一人で耐えながら、作戦を遂行していくしか……。


「キュッテ! 応援に来たわ……よ……ひ、ひぐぅ!? 思ったより人がいっぱい……」


「え? レミオロッコ? どうしたの?」


 天幕の中が予想以上に人で溢れかえっていたせいでビビってしまっていますが、それでも身体をガチガチにさせながら、私の所までやってきました。


「ど、どうしたの? 徹夜で羊戦車作り上げてくれたんだから、後はゆっくり休んでて良いのよ?」


「わ、私はちょっと寝たから良いのよ……あぁ! もう!! そ、その、アレン様からキュッテが重圧に苦しんでいるから支えてやってくれって言われたのよ!」


 来て早々ネタ晴らしするレミオロッコもレミオロッコだけれど、アレン様……イケメン過ぎませんか。

 そう言えば、アレン様にはこういう感情の起伏は隠せないんだったわね。


 余計なことを……なんて言わないわ。

 本当に不安だったから、レミオロッコが来てくれてちょっと精神的に助かったかも。


「そうなのね。まぁ、その……来てくれてありがと」


「で、でも、私、何も出来ないからね!」


「ふふふ。そこに座っててくれるだけで良いわよ」


「お、起きてるわ!」


 スキルの能力で羊偵察隊や出動した羊戦車の駒の位置を移動させながら、レミオロッコと他愛もない話をしているうちに、何だか不安がいつの間にか消えていました。


「大丈夫……絶対うまくやってみせるわ!」


 そして、とうとう……。


「キュッテさん! 桃組の羊戦車がビッグホーンの群れと遭遇! これより誘導のための戦闘に入るようです!」


 さぁ、ここからが本当の勝負よ!!


*****************************************

さっそくですが、三つほど告知させて下さい<(_ _")>


・まず一つ目

この度【羊飼いに転生した私は酪農系スキル『牧羊』で最強もふもふ生活】の書籍化が決定いたしました!!

まだレーベルなどはお伝え出来ないのですが、是非楽しみに続報をお待ちください!


・続いて二つ目

佐々川いこ先生による【呪いの魔剣で高負荷トレーニング!?】のコミック第二巻の発売が、来月6/23(水)に決定いたしました!

こちらは既に主要サイトで予約も始まっておりますので、宜しくお願いいたします<(_ _)>


・そして三つ目

今日5/25で、こげ丸がラノベ作家になって一周年です! めでたい♪

活動報告を久しぶりに書いたので、良かったら読んで下さいませ!

そして作者フォローもお待ちしております!


という訳で以上三つのご報告でした!

*****************************************

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