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【第55話:ぼっち?】

 えっと……イーゴスさん直々の紹介ってことかしら?


「キュッテさん。ギルダとギルナは、昔、私の立ち上げた商会で働いていたことがあるのですよ」


 なるほど。それなら問題なさそうですね。


 それで……スキルが『管理』だったわね。

 初めて聞くスキルだけど、いったいどういったスキルなのかしら?


「「その節はお世話になったわねぇ」」


「いいえ。こちらこそ二人には随分助けてもらいましたから。二人とも『管理』というスキルを持っているのですが、お金や財産、資材、商品、人と、あらゆるものの管理をそつなくこなす事が出来ますので、工房と牧場の管理をそれぞれ任せてみてはいかがかと思いまして」


 えぇぇ!? とんでもない能力じゃないですか!?

 なんですか? そのスーパー管理職?


「そ、そんな凄い二人を、うちみたいなところで雇っても良いのでしょうか?」


 それこそアレン商会で欲しい人材なんじゃないかと思って、そう尋ねてみたのですが……。


「「あたしらは子供が大好きでねぇ。聞けばまだ幼い一〇歳のオーナーさんが、これから頑張って工房を立ち上げるというじゃないかい。しかも、工房長もまだ一二歳な上に、二人とも将来有望だと。これから大変になるだろうから支えてやってくれって言われちゃぁねぇ。断る理由がないさね」」


 凄い嬉しいのに、この長文のハモりが凄すぎて、頭に入ってきずらいわよ!?


「あ、ちなみにキュッテさん。この二人は、イーゴス商会からの誘いも、アレン商会からの誘いも、即答で断っていますので、私どもには気を遣う必要はありませんよ」


「あ、そうなのですね。うちとしては物凄いありがたいお話なので、それなら是非よろしくお願いします!」


「「はい。よろしくねぇ」」


 やったわ! 一番懸念していた管理(・・)職をゲットよ!

 なんか思ってた管理職とだいぶん違う気がするけど!


 そもそも管理(・・)の範囲がとんでもなさ過ぎるのよ。

 細かい能力を聞いたわけじゃないので、過度な期待はしちゃダメかもしれないけれど、イーゴスさんの説明を否定も謙遜もせずに流していたし、実際に出来るんでしょうね。あらゆる管理が。


「とりあえず、これで自己紹介は終わりましたね。それでは、これからの予定を詰めていきましょう」


 いつからここが使えるのか、皆はいつから働き始められるのか、皆の住む場所は?

 うちの仕事をするにあたっての待遇面の話。

 それぞれにあった仕事は何なのか?

 あと、この中で牧場で働きたいって人はいるのかも聞いておきたいわね。


 結構いろいろあって大変だけど、最初だし頑張らないとね!


 などと考えていたのですが……。


「キュッテさん、以前キュッテさんから伺った話を元に、ゴメスが資料を作って既に配って説明してありますので、まずは食事でもしながらお話されてみてはいかがですか?」


「後で配った資料をキュッテさんたちにもお見せするので、間違いが無いかだけ確認お願いします。食事は、うちの者がそろそろ届けに来ることに……って、おっ、ちょうど来たみたいですよ!」


 アレン様の周りの人たちって、本当に凄い人ばかりですね。

 前世でこんな同僚や上司、部下がいたら……うぅん。やめましょう。悲しくなるだけだわ。


「イーゴスさん、何から何まで本当にありがとうございます! ゴメスさんもありがとうございます!」


 その後、私たちは届いた食事を楽しみながら、いろいろと話をし、交流を深めたのでした。


 ◆


 結局、皆の話を聞いてみたところ、女の子三人組と、意外にもヨセミテが住み込みを希望しました。


 その中でもリイネは、驚くこと無かれ、牧場を希望してくれたのです!


 いや~、これは嬉しい誤算ですね~♪

 工房での働き手を募集して貰っていたので、牧場の方でも人を探しているという話は今初めて聞いたらしく、それならばと手を上げてくれたそうです。


 街から離れていることなども説明したのですが、それでもかまわないと言うので、リイネは予定を変更し、要望通り牧場で働いて貰う事にしました。

 レミオロッコには当面は街で暮らして貰い、皆の指導に頑張って貰う事になっていたので、凄くありがたい申し出です。


 という事で、ちょっと整理すると……。


 牧場にはリイネが住み込みで、工房にはアンジュとセイナとヨセミテが住み込みで働き、ギルダさんとギルナさん、トルテが通いで働くという事になりました。


 ギルダさんとギルナさんは、交代で牧場にも行って良いと言ってくれましたが、まずは月一ぐらいのペースで牧場に来て貰う事で落ち着きました。

 やはり街で暮らしていた人たちは、牧場で暮らすとなると色々大変でしょうしね。

 だから、リイネももし無理だと思ったなら、遠慮せずに言ってくれたら工房勤務に変更するからねと伝えてあります。


 私、気配りの出来る女ですから!


 でも……問題な子が一人います……。


「……レミオロッコ? 大丈夫? さっきから落ち着きがないけど?」


 食事もそのあとのちょっとしたお茶会も終わり、お開きの時間が近づいて来ると、急にそわそわしだしたのよね。


「だ、だって……今日からだなんて思ってなかったんだもん……」


「だもんって……」


 実は今日は一緒に戻る予定だったのですが、住み込みを希望するメンバーが、出来れば今日からでも泊まらせて欲しいという事だったので、それならレミオロッコも残ってあげなさいと……まぁこういう話の流れになったわけです。


「きゅ、キュッテは寂しくないの……?」


 いや……私だって本当はちょっと寂しいとは思ってたけど……。

 誰ですか? 元ぼっちOLだろって言っているのは? あぁん?


「そりゃ、私だって寂しいけど、別にこれでずっと離れ離れになるわけじゃないんだから」


「そ、それはわかってるんだけど……」


「そもそも、明日は私もまたこっちに来るんだか……」


「え!? そうなの!? 一週間後じゃなくて?」


 ぉ、おぉ? えらい喰いつきね……。


「うん。ゴメスさんとも早急に詰めないといけない話があるし、ギルダさんとギルナさんにも、色々と相談したり説明したりしたい事もあるからね」


「もぅ! それなら、そうと早く言ってよ~!」


 私もレミオロコは大事な友達だと思ってるから嬉しいんだけど、ここまでストレートに寂しがってくれると、ちょっと恥ずかしいじゃない……。


 まぁでも、ようやく工房も動き出したし、レミオロッコ……これからも一緒に頑張っていきましょうね!


 と、口に出すのは恥ずかしいので、心の中でだけ言っておきました。


 誰ですか? さすが元ぼっちOLって言っているのは? あぁん?


*****************************************

ようやく第二章もお話が動き出してきました~♪(´▽`)


一応、書籍をイメージして一章10万字前後にし、章全体で緩急をつけて書いているので、

どうしてもWebの一日一話更新だと、章序盤のお話がのんびりしてしまいます(´Д⊂ヽ

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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁん? [一言] ずっと側にいてくれた人から急に離れると寂しいよなー
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