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【第28話:価値】

 もふもふなピンクの羊……前世のアニメやゆるいキャラクターとしてなら存在していたと思います。

 と言うか、部屋にいくつもピンクの羊のぬいぐるみが……。


 しかし、今私の目の前にいるのは、紛れもない本物のピンクの羊です!!


「あにょ……いいきゃげん、ほほをはにゃして……」


「あぁ、ごめんなさい。つい」


 今回は本当に……げふん、今回()本当に興奮して、つまんだ頬を放すのをわすれていたわ。


 それより今は、ピンクの羊(この子たち)です。二回目。


「あいたたた……。それじゃぁ、この子たちはもう地毛がピンクになったってことよね?」


「そうね。そうだと思うんだけど……ちょっと状況を整理しましょう」


 私も状況的に、おそらくこれが羊の進化によるものではないかと思っただけで、まだ理解が追い付いていません。

 だから、レミオロッコが少し赤くなった頬をさすりながら尋ねてきたので、あらためて状況を整理する事にしました。


「まず、この五匹の羊は進化したと仮定して、毛の色が違う羊って、レミオロッコは聞いた事あるかしら?」


「本当の話かどうかはわからないけど、黒い羊がいるっていうのは聞いた事があるよ」


「へぇ~、黒い羊は普通にいるのね」


「いいえ。普通じゃないわよ? かなり珍しいみたいで、凄い高値で取引されたって話だったと思うわ」


「それは……あまり嬉しくない情報ね」


 黒い羊だと、とれるのは当然黒い羊毛。

 でも、黒い羊毛が欲しいなら、染料に黒色が存在するので、少しお金をかければ普通に手に入れる事ができます。


 だけど、うちの子たちはピンクの羊です。

 つまり、とれる羊毛も当然の如くピンクになるわけで、染料にピンクが存在していないことから、きっとその希少価値はかなりのものになるでしょう。


「どうしてよ? 嬉しい情報じゃないの?」


「あのね、レミオロッコ……考えてみてよ。この牧場、一〇歳と一二歳の美少女(・・・)二人で管理しているのよ?」


「よく自分で自分のこと、美少女とか胸張って言えるわね。確かにあなた美少女だとは思うけど」


 なに恥ずかしがっているのよ。

 街を歩いてわかったけど、私たち、将来に期待大だわ!


 でも、恥ずかしいなら仕方ないわね。


「この牧場、一〇歳の美少女と一二歳の普通の平凡などこにでもいる女の子の二人で管理しているのよ?」


「言い直さなくていいし! そして、言い直し方!! シメるぞ!」


 はい、「シメるぞ」頂きました~♪

 でも、面倒な子ね。要望通り、美少女枠から外してあげたのに。


「まぁとにかく、女の子二人だけで管理している牧場なのよ。しかも、ここは街道からも遠いから、何かあったとしても、なかなか誰にも気付いて貰えない」


 どれぐらいの価値があるのかにもよるけど、ちょっと真剣に対策を考えないといけないわ。


「た、たしかに……あれ? でも、うちはそこまで心配しなくて良いんじゃない?」


「何を言っているの? 大人の男の人とか来たら、私たちじゃ太刀打ちできないわよ?」


「キュッテこそ、何を言っているの? うちには頼もしい牧羊犬がいるじゃない!」


 あ……そうだったわ。

 うちには牧羊犬と呼んだら、普通の牧羊犬が苦情を言ってきそうな優秀な牧羊犬がいるじゃない!


「そっか……確かにそうね。フィナンシェの感知能力を掻い潜るのなんて至難の技だし、それこそフィナンシェに勝てる人なんてまずいないでしょう。……あ、いないわよね? フィナンシェに勝てるような人?」


 前世のアニメやゲーム、漫画などにおける異世界モノでは、ドラゴンさえ倒す人間が存在していました。

 この世界にもそんな人が存在していないとも限りません。


「まぁ、いるかいないかで言えば、英雄って呼ばれる人たちがいるんだけど……」


 や、やっぱり! そんなとんでもない人が存在するのね!?


「でもたぶん、世界に数人とかいうレベルよ? その上、そういう人たちは、だいたいが国が好待遇で囲っているから、盗みの手伝いをするような人は存在しないはず」


「なるほど。それなら、そこまで心配しなくても良さそうね」


「あ、ちょっと待って。でもそうなると、街に出かける時とかが問題じゃない? フィナンシェちゃんに送って貰う間、誰かがここを守らないと」


「ぶぇぇぇ~!」


「うん。オハギ、気持ちだけ受け取っておくわね。……しかし、困ったわね」


 レミオロッコの言う通り、私たちの移動はフィナンシェに頼っています。

 今まではこんな辺鄙な所へ羊を泥棒しにくるような人はいないだろうし、羊も一応魔物なので、野生動物程度なら問題ないかと放牧して街に向かっていたのですが、もしうちの羊に価値があるとなると、ちょっと不用心すぎますね。


「ちょっとすぐには解決策は思いつかないわね。まぁまだピンクの羊の存在を知られたわけではないし、まずはこの子たちのピンクの羊毛を刈り取って調べてみましょうか」


「そうね! 私もこんな綺麗なピンクの羊毛は初めて見たし、いろいろ何ができるか試してみたいわ!」


 こうして私たちは、二人で手分けして、あっという間に五匹のピンクの羊を丸裸にしていったのでした。


「顔だけピンクって、なんか……」


 レミオロッコの呟きは、全力で聞かなかったことにしました。


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また明日の更新をお楽しみに☆

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