誘拐の後始末2
シミリートは衛兵の仕事が溜まっているようなので、ジーモントを含めた5人だけでガラクタ市に出かける。
「本当にその身長の体にたくさん入るわね」
「うるさいな!久しぶりの買い食いなんだから大目に見てくれよ」
ドワーフらしい低身長の割に食いしん坊であるヨルクは、屋台で見かけたものを次々と買っては食べている。きっと年の割に出て来たお腹以上に食べていると皆は思っている。
「今日はユリが分けてくれた犯罪奴隷の半金貨って軍資金があるからね。まさにアイツらのお陰での鬱憤ばらしに使わせて貰うわね」
「確かに。使い切ってやるぞ!」
前世の感覚で言うと50万円分も食べ切ることは出来ないでしょ、とヨルクの大言には苦笑いしつつ、魔導書の写本やポーションの売上があるユリアンネ自身も金銭感覚が随分と変わってしまったと振り返る。
「ゾフィ!そんな急いで行かなくても」
ゾフィが先行して、近道と思われる角を曲がったところで悲鳴があがる。慌てて追いかけた4人が角を曲がると、ゾフィの首元に短剣を押し当てた女が立っていた。
「あんた!私をさらった時の!」
「そうよ、あんた達が私の仲間達を!」
「どっちが先に!逆恨みでしょ!」
「うるさい!そこの薬師のせいよ!カミラとか言うあんたがその薬師に斬りつけなさい!」
「ふざけないで!」
女がカミラを見ている間にユリアンネは魔法を発動させる。そして、
「ワ!!!」
と叫んだ声が女の耳元に送り込まれたことで、女が驚いた隙に、事前に聞いていたゾフィが逃げ出したところへジーモントが駆け込んで女を取り押さえる。
色々と騒ぐ女を無視し取り押さえて衛兵の詰所に連れて行く5人。
「ユリのその風魔法、本当に便利ね」
と言うゾフィの言葉に頷きつつ、
「またしても気分転換の邪魔をされたわね。まだ出歩くのは危険なのね……」
と現実に戻される5人であった。




