誘拐の後始末
ユリアンネ、カミラ、ヨルク、ゾフィは特に“蒼海の眼”の捕物騒動が終わるまではできるだけ家に籠ることになった。どうしても外出する用事がある時には複数人で行動している。
「そろそろ落ち着いて来た感じかな」
久しぶりの衛兵業務の休暇を貰い状況説明に来たシミリートにユリアンネとジーモントは確認する。カミラたちは家も遠いのとまだ出歩きの危険をおかさないための人選である。
「あぁ、かなり逮捕することが出来た。“蒼海の眼”クランでも8割ほどを捕まえたと思う。ただ、本当の下っ端で何も知らない作業人以外にも逃げている奴が残っている。繋がりのあった悪徳商人たちも少しずつ捕まえているから、そこに匿われていた奴らも一緒に捕まえている。時間の問題だろう」
「いや、それでも逃げる奴はいるだろう?それに悪い貴族は捕まっていないとの噂だぞ」
「あぁ、貴族の悪事を暴くのがここまで大変とは思わなかった。上同士のやり取りになるし、トカゲの尻尾きりが何段階もされて。貴族本人にたどり着けないかもしれない……」
「まぁそれでも手足を減らしたり、ヒヤッという思いをさせたりすれば少しはマシになるのかな」
「そうだな」
だんだんと騒動もおさまり街も次の噂のネタを見つけて静かになった頃、カミラ達がユリアンネにガラクタ市に行こうと誘って来た。
「もう自宅待機もつまらなくて。家の手伝いばかりしていると気が滅入るのよ」
「ま、後継のカミラは仕方ないでしょ?私は単なる皮革屋から方向性を変えて服飾関係に行きたいからなおさらよ」
「お袋の飯ばかり続くと流石に……それを言うと機嫌が悪くなって……いや、別に不味いどころか美味いとは思うのだが……頼む、屋台で買い食いさせてくれ!」
「ヨルクの話は置いておいて、気分転換はユリアンネにも必要でしょう?」
確かに写本、本の修繕など書店員の仕事もしつつ、家に残っている素材での調剤、そしてこの前は突貫で製作したスクロールの追加検証など、やることは色々とあったが、素材調達すらもせずに家にこもっていたので、たまには屋外に出た方が健康のためにも良いだろう。




