アンダロフでの店舗準備3
「風花の中つ国で仕入れた鼈甲などの高級品を販売するような場所でもないし……」
特にカミラが出品するものに悩んでいるようである。
工芸品は高級品を扱うこともできるが、そもそも戦争で疲弊しているこのドラゴレシエ国でそのようなものを買う人はあまり居ないと思われる。
それにこれからは隣国イスクラディヤ国からの戦争避難民が増えることも踏まえると、余計に贅沢品は考えられない。
「挨拶にも使ったような、魔物の爪や牙を使った低価格帯の装飾品が良いんじゃない?」
「そうね。ゾフィも高級品ではなく、低価格帯の衣服などを狙うのよね?」
「そうなるわね、この国だと。皮革職人としてレザーアーマーなどを作るのもあるけれど、目の前の防具屋さんに嫌われたくないし」
「ゾフィは、ユリに対するスクロールの素材提供という安定商品もあるわよね」
「そうね。写本のための羊皮紙はないけれど。そういう意味では、カミラもトリアンのときと違ってポーションのガラス瓶の納品ができなくて残念ね」
「本当。あの工夫したポーション瓶に対応してくれるガラス職人を探すのも大変だしね」
特にヨルクのかまどの工事など、最低限の改装が決まると、その委託業者に店舗の鍵を預けることになる。
「しばらくは外出しても大丈夫ね」
「そうよね、今のうちにこのアンダロフのどこにどんな店があるか、仕入れの意味でも、競合調査の意味でも確認した方が良いわね」
目立たないようにするため、戦馬には乗らず徒歩で散策をする仲間たち。
「やっぱり露店市場はあるのね」
「でも冒険者が少ないからガラクタ市場みたいなのはなくて、王都の中心部の役所近くの広場っていうのも、このアンダロフらしいところかしら」
「確かに、食べ歩きの屋台以外では、一般人が家で余ったものを売りに来ているのが多いわね」




